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「新しい箇条書き」の本のつくり方

新刊『新・箇条書き思考』が発売されることになりました!発売日は今週末の2020年12月11日(金)。全国の書店・Amazonなどオンライン書店でも販売されます。

本の企画~発売までのちょうどこの一年間を振り返る形で、この記事では、「箇条書き」のテーマで本が出る背景、本の見どころ、今後の告知情報などを書きます。

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▼ なぜ箇条書きをテーマにしたのか?

「なぜリサーチャーが文章力テーマの本を書いているのか?」
―まずは一番の謎に答えるところからスタートしましょう。

3月の初め頃から担当編集者さんと打合せをしていた折、ビジネス書も現実のビジネス環境を反映して、現在のコロナの状況下においては、「書く力・伝える力」を引き上げる本のニーズがいっそう高まってくる、というヨミをお聴きしました。(実際その通りに)

本の副題的な位置づけである「速く、的確に、伝える力」は、この時点で既にキーワードに上がっており、こうした社会背景の中で必要とされる「文章力・情報発信術」が本の出発点に。後はそれをパッケージ化するユニークなテーマがあれば企画になるのですが…

その時点ではさすがに、「もよや文章術テーマとの縁はないだろうな」と思いつつ、試しに自分の「書くスキル」を棚卸ししてみると――どのアウトプットにも共通して使っているユニークな技法があったのです。それが本のテーマになっている「箇条書き」です。

私は本業で調査レポート(アンケート・インタビューの結果をまとめる報告書)を書く仕事を主務としており、年間1000ページくらい書いています。そしてこの1000ページは誰もそのままの状態では読まないので、調査結果の要点を箇条書きで整理しています。

レポートは個別の調査結果ごとに各ページで要点をまとめつつ、調査のサマリでは全体を要約し、事業活動についての企画・提言も行っています。つまり各ページ平均3点の箇条書きを使っているとすると、このレポート業務だけで年間3000点書いてます。

また、レポートは依頼を受けて急に書いているわけではなく、毎日、レポートの中身に相当する元情報を、SNS・ビジネスチャット・メール・議事録・ノート・noteなどに箇条書きでストックしておき、大型の資料作成へとつなげるよう仕組み化していました。

この仕組みはリモートワーク下でいっそう効果を発揮しており、仕事の評価における最終アウトプットの重要性が増すこと、また、その中でも日々のコミュニケーションで存在感を失わないこと、こうした新しい働き方への対応策として汎用性のある習慣になります。

版元の明日香出版社さんは、文章術で既に多くのベストセラーを手がけていらっしゃいますが、社会的にリモートワークが本格化していた5月には、このあたりの企画趣旨・ノウハウについて、直近で出すべきテーマであると評価してもらえて、実現に至りました。

箇条書き自体は普遍的な文章術の手法ですが、実は現在の時勢を強く受けた企画になっています。リサーチャーが伝えるまったく新しい箇条書きの作法ということで、タイトルも『新・箇条書き思考』に。(「シン・」ではなく笑) 出版の経緯はこんな感じです。

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▼ 通常の箇条書きとどう違うのか?


「箇条書き」の有用性については、多くの人が評価しています。それこそ文章術の本を開けば、目次のどこかには「箇条書きを使うべし」という小見出しが出てきます。

ただ、それだけ有用性が評価されている割に、箇条書きの技法を体系化している記事や書籍は極めて少なく、あくまで文章表現の一種という位置づけに留まっています。

多くのケースでは、「要約のために・整理のために使える」という紹介のみなので、下手すると、文頭に「・」(点)を打っただけの簡素なノウハウになりかねません。

「文章を細かく改行しているだけ」「まとめの内容が本編の焼き直し」「短文にすると情報量が落ちてしまう」―このような状況に、皆さんも陥っていないでしょうか!?

見やすくすること・読みやすくすること、これは箇条書きのメリットのほんの1つでしかありません。大事なのは、形式よりも「中身」と「文章の組合せ方」なのです。

本書では、中身を充実させる要素を「ファクト」と定義し、日々の情報収集+数字と言葉の使い方を工夫して、「実態を表す情報」を磨き上げる手法を紹介しています。

また、いくら中身が充実していても、正確なだけでは相手を動かすことができません。報告は問題無くできても提案ができない人は、長いキャリアの上で伸び悩みます。

でも大丈夫。相手を動かすには、箇条書きの文章を束ねて「共感を呼ぶ論拠」にすればよいのです。本書ではこれを「ロジック」と呼び、実例を豊富に収録しています。

ビジネス書1冊(=約240ページ・約10万字)を通じて、まるまる箇条書きを伝える試みはかなりクレイジーですが、次項で具体的にその魅力をサンプルで紹介しましょう。

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▼ 「箇条書き思考」を採り入れるとこんなに変わります!


箇条書き思考を採り入れると、文章はどのように変わるのか!?
以下は本の「はじめに」にも登場する箇条書きのサンプルです。

●Before(通常の箇条書き)
<今期の戦略>
・①営業強化―前年比売上120%
・②利益改善―不採算事業の見直し・コスト管理の徹底
・③株主還元―5円増配
→自己変革による飛躍的な成長を

×指標は具体的だが、なぜこの数値かわからない (数字がファクトのすべてになっている)
×達成不可能かつ、他人事のような内容に見える (社員・チームメンバーは腹落ちしない)

●After(箇条書き思考)
<今期の戦略>
・①営業強化―前年比売上120%(初の全国展開、満額賞与基準)
・②利益改善―不採算事業の見直し・コスト管理の徹底(PRに向けた財源の確保)
・③株主還元―5円増配(創業地域への恩返し)
→自己変革による飛躍的な成長を

目標値だけでなく、それを達成する意義が伝わる (言葉を介して数字の持つ意味が情報になる)
会社の成長が自分事に感じられ、行動につながる (個々の項目が論拠となり結論が活きてくる)

このように同じ箇条書きでも「中身」で圧倒的に差がつきます。
本書では「数字と言葉の使い方」「説得力を出す編集技法」など、箇条書きの”中身”をつくる「ファクト」と「ロジック」を詳しく解説しています。

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▼ 本の内容はこんな感じ


本の「試し読み」を明日香出版社さんの公式noteからご覧いただくことができます!

詳細はリンク先で見ていただくとして、この記事では本の構成について記します。

1章では、そもそもの「箇条書きの特徴や効果」について説明しつつ、「伝わらない典型パターン」も注意点として紹介します。

2章・3章では、箇条書きの構成要素である「ファクト」について、「目的と対象の整理」「数字と言葉の使い方」「書くネタの情報収集法」に焦点を当てて説明します。

4章・5章では、箇条書きの発信作法となる「ロジック」について、「情報の論拠の整え方」「共感を集める編集技法」に焦点を当てて説明します。

6章では、私自身が日々実践している、SNSや資料作成を通じた箇条書きのトレーニング方法をまとめています。

まずは目次で気になったところをご覧になってみてください。ざっくり言うと、文章術・情報収集法→2章・3章、資料作成→4章・5章、SNS・note→6章です。前から順に見ていただくことで書けることを増やしていく構成にしていますが、仕事内容や自分の好みに合わせて、いずれかの章をきっかけに入っていただいても大丈夫です。

ちなみに、「はじめに」と「序章」は死ぬほど書き直したので、ぜひ最初に見てやってください(笑)。ハウツーのパートは私の専門性や経験値に任せてもらっていますが、読者との出逢いになるこの二編は、編集者さんが何度も指示・アドバイスを入れてくださり、本の導入でありつつ、まとめとしても読める流れになっています。

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▼ どんなことにチャレンジするのか?

この記事を「新刊のお知らせ」という触れ込みで書き出してみると、といかにもビジネス書作家っぽい感じがしますが、自分はまだまだその立場に達していません><

というのも、通常、文章力テーマの本の書き手は、やはりクリエイティブディレクターかコピーライターと相場が決まっています。リサーチャーではないのです笑。

ですので、新刊でありつつも、ほぼ一冊目同様のチャレンジをしています。

これまで私はnoteも活用して、「リサーチの技法」を通じて「リサーチの魅力」を伝えてきました。もちろん今後もそれは継続していくのですが、やはりリサーチの技法そのものは、読む人・知る人を選ぶ面があります。そこに少し限界も感じていました。

今回、文章力・情報発信テーマの本を書くことを通じて、リサーチ業務の神髄でもある「数字」「言葉」「ファクト」「ロジック」「情報収集」のナレッジを介して、より多くの人に日常的に使えるリサーチの魅力を知ってもらいたい!と願っています。

その思いを毎日使う文章のテクニックである「箇条書き」に結実させました。

ありがたいことに、前作の書籍とnoteの記事を通じて、この一年に各分野のプロフェッショナルの方と知り合うことができました。本作ではこうした皆さんの協力を書籍内に盛り込んだり、コラボレーションnoteで発信する場を拡張させてもらっています。

このように、私は「外にはみ出していくロール」を担っているのかな、と最近自覚しています。調査会社や研究機関に勤務しているわけでないので、学術的な調査の発展には貢献ができません。その代わり、ぜひ一般の人に調査のことを知ってもらいたい!

こんなことを思っていたら、誠文堂新光社さんが発売する『こども手に職図鑑』という本の中で、リサーチャーの仕事を取材回答する機会をいただきました!子ども向けの職業図鑑として厳選された100の職種にリサーチャーがあることに感激しています。

『新・箇条書き思考』も、多くの社会人の方に見てもらえますように!

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▼ 発売記念イベントのお知らせ


本の発売記念イベントを青山ブックセンター本店で行います!!

私から発売記念のご挨拶として本の内容と制作秘話をお話するほか、ビジネス系noteで人気のクリエイター、高林勇秀さん(ナイル株式会社勤務・ウェブ編集者)、佐藤政也さん(GCストーリー株式会社勤務・インハウスエディター)のおふたりをゲストに招き、出版・編集・取材・広報などのテーマでクロストークを行います。

基本は読者向けの内容ですが、年末に青山・お店に来訪予定があったり、話のテーマの方に関心がある方もご参加いただけます。読者の皆さんは事前に本の内容を読んでおくと、ゲストの話を通じてさらに実践的なヒントを得られます。当日忘れずにお持ちくださいね!(書店でも当日、他の文章術テーマの本と共に取り扱っています)

【『新・箇条書き思考』刊行記念】ビジネス書著者×ウェブ編集者×インハウスエディター座談会
菅原大介×高林勇秀×佐藤政也トークイベント

2020/12/21 (月) 19:00~20:30 @青山ブックセンター本店内・大教室
※オンライン配信の予定は今のところありません。

青山ブックセンター本店では、山下店長をはじめとするスタッフの皆さんが、新しい世界を知る・知見を広げるリアルの場として、本・専門家著者・読者がつながるイベントを開催しています。相互に感染症対策に気をつけながらではありますが、ぜひこの機会を通じて、私も読者の皆さんともつながる機会を楽しみたいと思っています。

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▼ 本のサポート隊員を募集します!!


さて、ここまで記事をご覧いただいた皆さんの中に、「何か協力してもいいよ!」という優しさに包まれた方はいらっしゃいませんか?

前述のように、本づくりにあたっては様々な工夫を凝らし、告知の取り組みも強化していくのですが、実はまだまだいろいろなところをカバーしきれていません。

具体的には、次の取り組みに協力してくださる本のサポート隊員を募集します!

①ブックレビュー

発売後、本を手に取っていただき、印象に残ったことを共有してくださる方は、ぜひTwitter・noteで感想をお知らせください。

もし箇条書き思考を早速実践してくださる方は、本の以下のページで書評の記録にも使えるフォーマットを紹介しているので、ぜひご覧ください。

Twitter→202ページ(箇条書きツイートの投稿方法)
note→232ページ(noteを使ったナレッジの記録方法)

ツイートは発売後に書く私のnoteの記事に収録させていただくことがあったり、noteの記事は読者マガジンにできるだけ収録させていただきます。

②書店のリサーチ

お近くの書店で本があるのを見つけたら、「○○書店の○○の棚に置いてあったよ!」と、Twitterでタレコミをしていただくサポートです。あくまでお出かけのついでで大丈夫ですし、もちろん購入の有無は問いません。

私も発売日以降、できるだけ書店を見て回ろうと思っているのですが、なかなか全国の状況を把握するまでには至りません。一人で動けるのも知れた範囲でしかないので、ぜひ皆さんにサポートいただきたいのです!

上記の①②いずれの取り組みにおいても、共通して使う本のハッシュタグは「#箇条書き思考」です。ハッシュタグをつけて投稿していただいたり、Twitterのリプライ等で呼びかけてください。皆さんのご協力に感謝します!

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私は本のあとがきを読者向けに書くことにしているので、この場を借りて発売まで支えてくださった皆さんに御礼申し上げます。

記事中で触れている通り、本書ではSNSでご活躍されていて、日頃菅原と意見交換をしてくださっている方々を中心に、お手本となる箇条書き投稿事例を掲載協力いただきました。箇条書きは多くのビジネスパーソンに使われている手法であり、工夫もまたそれぞれに行われていることを実感します。

サワディーさん @sawayakasawa_d

黒澤友貴さん @KurosawaTomoki

高林ゆうひでさん @takataka578

望月智之さん @mochizuki365

ジェイさん @junta_suzuki

よしだけいすけさん @ruiji_31

さとうさん @ux_market

みさきちさん @misakichi_gc

とみこさん @tomiko_tokyo

notePRチームさま @note_eventinfo

皆さんのおかげで、「今」そして「これから」必要とされる本の内容が出来上がりました。ありがとうございます!


また、本に関連するイベント・プロモーションでは、前作から今作にかけて、いろいろな専門分野の方々に支えられてきました。この場を借りて御礼申し上げます。

大澤さん @osawaga_osawagi

徳田祐希さん @yukimeru0305

川端康介さん @nanocolorkwbt

青山ブックセンターコミュニティー支店の皆さん


本の企画・制作・販売は、前作に続き明日香出版さんです。お世話になっている担当編集者さんをはじめ、出版社の皆さま、素敵な機会をいただき、ありがとうございます!

明日香出版社公式note


本の発売日は2020年12月11日(金)です。予約注文も始まっていますが、もしお時間が取れる方は、ぜひお近くの書店に足を運んでみてください。新刊が優先的に展開されるのは基本的に新刊の期間だけなので、リアルの場でその瞬間に立ち会っていただけたらとても嬉しいです。

ふだんオンラインで購入している皆さんには不案内な記事ですみません。実店舗は入庫が遅めの店もあるのですが、この機会に他の文章力・資料作成テーマの本とも読み比べていただけたらと思っています。発売日まで忘れられないよう、私も本の最新情報を日々発信していきますね。

https://twitter.com/diisuket

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いただいたサポートは執筆休憩時のお茶請けなどに大切に使わせていただきます★