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Chapter 4 -新たな投資手段「トークン投資」- (全8章)

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それでは以下に4章を記します。



4-1 お金の流れに変化が生じている

 3章で取り上げた、大手コンサル会社のトークン化経済の成長予測、さらには資産運用大手ブラックロックおよびクレジット決済大手のマスターカードがトークン化経済に熱視線を向けています

 ビットコインをはじめとした暗号資産の登場により、社会のお金の動き・投資の動きに変化が生じています。ビットコイン登場以前の2008年頃までは、各国の法定通貨(米ドルやユーロ、日本円など)をもとに、株式・債券・不動産・現物などの売買が一般的でした。次第にビットコインの知名度とそれを支えているブロックチェーン技術が多産業でも活用されるようになり、2015年頃から多くの暗号資産が登場しました。

 そして、法定通貨を使い暗号資産を売買するという新たなお金の流れ、言い換えると新たな価値の流れができました。

 ここで伝えたいことは、ビットコインの価値や将来性についてではなく、「各国の法定通貨が暗号資産という国境なき価値に流れ始めている」ということです。「国境なき価値」の例としては、インターネットもそのひとつです。



4-2 たとえ話「株式会社インターネット」

 世界中で利用されているインターネットを「ひとつのネットワークサービス」または「株式会社インターネット」とイメージしてみてください。インターネットは世界中の無数のサーバーとそれらを接続しあう通信回線で構成されており、概念として国境はありません。

 インターネットは以下の3つで構成されており、インターネットの「通信手段」であるアクセス回線やプロバイダ設備(携帯キャリアや光回線の提供会社)にはお金を支払っていますが、インターネット上の「情報」には無料でアクセスできています。

1) アクセス回線
2) プロバイダの設備
→ 1と2については通信サービスを事業としている民間企業が運営する場合が多いので、利用料が発生します。

3) インターネットにデータを公開しているサーバー
→ 世界中で無数に存在するサーバーは、会社の宣伝のために運営していたり、公共的な目的のために政府関係機関や自治体が運営していたりとさまざまです。その目的が無料で情報を提供することにあるため、広く料金を徴収されることはありません。しかし、すべてのサーバーが無料ということではありません。中には営利目的のためにサーバーを運営し、利用料を徴収しているものもあります。たとえば楽曲や映像などの有料コンテンツがそれにあたります。


 このように、インターネット上には無数のデータや価値が存在しており、その価値にアクセスするための「通信手段」(上記1,2)に対して法定通貨で毎月利用料を支払っています


 もし仮に広い概念として「株式会社インターネット」というものがあり、インターネット上の「情報」を利用するには利用料が必要だとすると、株式会社インターネットは国境の垣根なしに世界中で莫大な収益をあげることができるでしょう。株式投資家であれば、株式会社インターネットの株式はぜひ保有したいものになるはずです。現実問題として株式会社インターネットが存在してしまうと、1社のみで全世界のインターネット事業を独占してしまうため、独占禁止法に該当するでしょう。よって「株式会社インターネット」であってはならず、「非営利ネットワーク組織 インターネット」という形で存在するかもしれません


 株式会社インターネットはたとえ話までですが、インターネットやデバイスの普及に伴い、「通信手段」にだけ利用料を支払うだけではなく、インターネット上の一部の有料サービスに対しても、私たちは利用料を支払うようになりました

例えば以下のようなものです;

・Amazon Music、Apple Music、Spotifyなどの楽曲配信サービスの利用料
・Netflixのような映像配信サービスの利用料
・オンラインサロンのような会員だけがアクセスできるチャットルームのアクセス利用料

 ここでお伝えしたいことは、インターネットを介して得ることができる、「楽曲を聴くことができる権利
「映像を見ることができる権利
「限定チャットルームにアクセスできる権利
法定通貨で買っているということです。

 いまとなってはこれら有料サービスへの課金は多くの人が経験したことがあり、疑問に思うことはないと思いますが、本書でお伝えするトークン投資にあたっては、この「価値や権利に対して法定通貨で支払う」という概念をおさえておいてください。



4-3 個人がトークンを保有する時代

 3章では、トークンとは「デジタル上のしるし」、図書券は「紙のトークン」ということをお伝えしました。

 前項で取り上げた下記の権利を思い出してください。

・「楽曲を聴くことができる権利」
・「映像を見ることができる権利」
・「限定チャットルームにアクセスできる権利」

 これらは、本書でいう「トークン化」は活用されておらず、AmazonやApple、Netflix、オンラインサロン主催側が、各ユーザのアカウント管理・課金状況の管理をしており、各ユーザに対して有料サービスの提供要否を判断しています。(これもいわゆる中央集権的なサービスのひとつです)

 上記の有料サービス例を「トークン化」に主眼を置いて言い換えると以下のようになります;

・「楽曲を聴くことができる権利をトークン化し課金者はそのトークンをもっている」
・「映像を見ることができる権利をトークン化し課金者はそのトークンをもっている
・「限定チャットルームにアクセスできる権利をトークン化し課金者はそのトークンをもっている


 トークン化経済の一面として、上記のように、課金しているというデジタルなしるしとして「トークン」を活用し、サービス提供要否を判断するということです。

 トークンをもっている・もっていないの判断は以下のようなステップで行われます;

1) ユーザは課金している「デジタルなしるし」としてトークンを保有する
2) そのトークンはユーザのデジタルウォレットに紐付けられる
3) 有料コンテンツ提供会社のWebサービスに対して、ユーザはデジタルウォレットを接続(Connect)する
4) コンテンツ提供会社は、その接続されたデジタルウォレットに特定のトークンが存在するか否かを判定し、コンテンツの提供を行う


 このような流れでサービス提供要否が判定され、その判断材料であるトークンの所在は、ユーザ側(デジタルウォレット)にあるといえます

 言い換えると「権利や価値をあらわすトークンをセルフカストディ(自己管理)している」ともいいます。これがいわゆる「非中央集権的なサービス」のひとつです。以上の説明をみると、「個人がトークンを保有する」ということがイメージしやすいと思います。



4-4 企業さえもトークンを保有する時代

 前項では個人がトークンを保有する姿をお伝えしました。次は、ビジネスをくりひろげる企業さえもがトークンを保有する時代についてお伝えします。

 さきほど「株式会社インターネット」という例え話をしましたが、このインターネットを利用するためには「インターネットを利用できることをあらわすトークンを保有してください」という仕組みになったとしたら個人も企業も該当のトークンを保有することになるでしょう

 現代社会をみてのとおり、個人も企業もインターネットを活用することで、プライベートもビジネスも便利に、効率化することができ、「欠かせないトークン」のひとつとなるでしょう。インターネットというのは、広く言えば「ネットワーク」です。ネットワークと聞くと、IT業界の言葉、専門的な言葉のようにとらえてしまいがちですが、以下のように言い換えることもできます。

・「情報やデータを閲覧できる場所
・「情報やデータを送ったり受け取ったりできる場所」
・「目標や課題を他の参加者と共同で解決できる場所」


 上記のネットワークのもつ特徴は、ビジネスで欠かせない要素となっています。仕事のデータをクラウド経由で閲覧したり、社内外の相手とメールで文字やファイルをやりとりしたり、遠方の社員や取引相手と共同で事業を遂行しています。この「ビジネスで活用されるネットワーク」の舞台は広い意味での「インターネット」が主たるものです。

 近年、業種や産業ごとに、より便利に・安全に・効率的に、ビジネスを展開できる「新たなネットワーク」がインターネット上に複数登場しています。それらネットワークは分散型台帳技術(ブロックチェーン等)を活用した、Web3に該当するネットワークです。

・「物流業界で役立つ、Aというネットワーク」
・「Web広告業界で役立つ、Bというネットワーク」
・「音楽配信業界で役立つ、Cというネットワーク」


 企業の発展・継続をするために、このようなネットワークを活用したい、活用しなければならない、というほどの価値がこれらネットワークにあるとすればネットワークの社会的価値、社会的需要は増していきます

 そしてこのネットワークを利用する権利をデジタルなしるしとしてトークンであらわし、トークンが発行されています。Aというネットワークを利用するには、Aネットワークが発行している「ネイティブトークン; A-Token」を保有している必要がある、ということです。




4-5 トークン単価は需要により変動

 なぜ「トークン投資」が注目されているかというと、さまざまな価値や権利を「デジタルなしるし」であらわすトークンにも、トークン発行をする供給側と、それを必要とする需要側が存在し、需給関係によって結果的にトークン価格が変動するのがポイントです。

 人気のあるミュージシャンのコンサートチケットには限りがあり、そのコンサートに行きたいという需要が高ければ、チケットは高値で売り出すことができます。

 このように「その場に参加できる権利」がチケットという媒体であらわされ、需給関係によってその権利の価格が変動しているといえます。また、「デジタルなしるし」であるトークンを使うことで、企業の配当金をトークン保有者に効率的に配布したり、配当金とは異なるリターンをトークン保有者に配布することが可能です。


 つまり、トークン投資においても、株式投資と同じように、キャピタルゲインとインカムゲインというリターン享受の機会があります。「キャピタルゲインが大きい」、「インカムゲインが大きい」ということになれば、そのリターンを得るために該当のトークンを保有したい、という需要が増し、トークン単価の上昇につながります。


以上
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5章へつづく

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