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Chapter 3 -これからの社会経済のビッグトレンド- (全8章)

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それでは以下に第3章を記します。



3-1 人口の増減

3-1-1 日本人口の減少、高齢化

 日本の人口について、総務省統計局が2022年に発表したレポートによると、12年連続で人口が減少しています。さらにその年毎の減少幅は11年連続で拡大しています。
(出典; 総務省統計局人口推移)

 日本ではさらに、未曾有の高齢化も起こります。私たちが生きていくうえで、生産性が第一、資本が第一、というわけではありません。日本で起こる人口減少、高齢化が悪いのではなく、自然の摂理によって起こる現象ではないでしょうか。

 しかしながら日本で暮らしていくことを考えると、日本が直面するこの現象を把握しておかなければなりません。日本で暮らしているというだけで、日本円のポジションを多くとっていることになります。日本国内だけでなく、世界にも目を向け、世界のビッグトレンドをおさえる必要があります。


 人口の減少や高齢化の進行は、経済成長に対して3つの経路を通じて影響を与える可能性を、内閣府が示しています。
(出典; 内閣府 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題)

1) 労働投入の減少
→ 全体の人口も減り、また活発な消費をする若年層も少ないことで、さまざまな事業の売上が減少し、企業が事業に投入する労働力も保てなくなる。

2) 資本蓄積の減少
→ 高齢化が進むことで、将来に備えて貯蓄を行う若年層が減少し、過去の貯蓄を取り崩して生活する高齢者の割合が増えることで、社会全体でみた貯蓄が減少する。

3) 生産性の減少
→ 仮に人口規模が維持され、人口構成が若返れば、多くの知恵と新しいアイデアが活発に交換され、イノベーションの促進・生産性の向上が期待できる。この反対に人口減少、高齢化する日本では、生産性の向上が停滞する懸念がある。



3-1-2 アフリカ人口の増加

 今後の世界の人口増加を支えるのはアフリカです。アフリカ地域の総人口の推移予測は以下の通りです。

・2022年に14億820万人 (世界人口の17.7%)
・2030年には16億9,009万人 (世界人口の20%)
・2050年には24億6,312万人 (世界人口の25.4%)
(国連;世界人口予測2022年版より)


 人口増加の著しい国は以下の通りです;
・ナイジェリア
・コンゴ民主共和国
・エチオピア
・タンザニア
・エジプト

 このアフリカ地域の人口増加により、豊富な労働力を背景に個人消費が活発になり、グローバル経済においても頭角をあらわしていくことが見込まれています。ビジネスとしても投資戦略としてもアフリカを視野にいれる必要があります。


3-1-3 リープフロッグ現象

 アフリカ地域で起きていることは人口増加だけではありません。これまで最新技術と縁遠かったアフリカの人々が、インターネット環境のもと、スマホやタブレットをもつことで、モバイル間送金やデジタル教科書の活用、そしてドローン配達の恩恵を一足飛びに享受しています。

 このような途上国や新興国で、世界中の新しいデジタル技術が一気に普及・拡大する現象リープフロッグ(カエル跳びの意味)といいます。リープフロッグ現象はインドやアジアの国々でも起きています。



3-1-4 国民IDシステム

 リープフロッグ現象が起きているインドでは、国民IDシステム「Aadhaar(アドハー)」という国民識別番号制度の構築が2009年から開始され、全インド国民に12桁の数字を発行しています。

 この国民IDシステムを活用し、役所で行う手続きやビジネス上のさまざまなやりとりをスムーズに行い、さらに政府・民間企業・サービス開発者がデジタルデータを円滑に使えるようにするためのデジタル公共基盤が構築されています。

 アフリカ地域においても、国民IDシステムの展開が計画されています。「ID4Africa」(Identity for All in Africaの略) という推進活動が展開されています。(出典; ID4Africa)

 この国民IDシステム、そして日本で展開されているマイナンバー制度などは、広義にいうと「デジタルID」というものになります。世界同時進行でデジタルIDの普及と徹底に向けた動きがゆっくりと進んでいるのです。



3-1-5 人口増加地域への投資をするには

 人口減少が進み、将来の経済成長が不安視される日本にいながら、アフリカの経済成長に投資するには以下の方法があります;

1) アフリカの株式会社に投資
2) アフリカ市場でもシェアを確保可能な外国株式会社に投資
3) 全世界株式(オールカントリー)の投資信託

 そして上記の投資手段だけではなく、新たな投資の手段が出現しています。それが本書でお伝えするトークン投資です。一例をあげると、以下のようなものです;

4) ナイジェリアのCBDC(中央銀行デジタル通貨)や知的財産権のデジタル化を支えるブロックチェーンネットワークに投資


 「ブロックチェーンネットワークに投資」というのは、言い換えると、ブロックチェーンネットワークが発行している「ネイティブトークン」をデジタルウォレットで保有すること、になります。本書を読み進めていく中でこのトークン投資の概要を身につけることができます。




3-2 IoTデバイスの増加

3-2-1 あらゆるものがネット接続する

 さまざまなモノがネット接続されるIoT(Internet of Things)は数年前から話題となっております。川や田んぼの水位計測、洗濯機やエアコンなどの家電操作など、身の回りのセンサや家電がインターネットに接続されてきています。

 総務省のレポートによると、2016年時点で173億台であった世界のIoTデバイスは、2020年に253億台、そして2023年には340億台まで増える見込みとなっています。
(出典; 総務省 令和3年情報通信白書)


 身近な例でいうと、これから自動車1台あたり1つのeSIMを搭載することが計画されています。eSIMが搭載されると自動車が個体識別番号(ビークルID)をもち、まるで「走るスマートフォン」のようになります。

 運転者および搭乗者のデジタルIDと、自動車のもつビークルIDが紐づけられるようになります。以下のようなサービスが計画されています;

・シェアリングカーの走行距離や利用時間に応じたスムーズな請求
・ドライブスルーで運転手が行う決済操作の省略、短縮
・デジタルIDに紐づく免許証を確認したうえでの走行開始 など

 自動車やバス、電車などの移動手段をネットワークにつなぎ、より安心・便利で効率的な運用を目指し、インターネットを介してユーザー、車両、サービスをタイムラグなしに連携させることをコネクテッドモビリティといいます。



3-2-2 全世界のインターネットユーザ数の増加

 日本にいると気づきにくいですが、世界にはインターネットを利用できない人々が多くいます。インターネットにアクセスできる人口は、2018年時点では世界人口の約51%(39億人)、そして2023年には世界人口の約66%(53億人)がインターネットにアクセスできるようになる見込みです。途上国や新興国でインターネットにアクセスできる人口が増えれば、リープフロッグ現象も加速し、IoTデバイスの増加にもつながります。
(出典; Cisco Annual Internet Report (2018~2023年) White Paper)



3-2-3 データが膨大に増加

 グローバル目線で、IoTデバイスの増加、インターネットユーザの増加が起きると、データ量が爆発的に増加します。パソコンやスマートフォンで音楽や映像を無制限に楽しめるサービス、ビジネスではWeb会議も普及しました。これからコネクテッドモビリティや自動運転技術が普及すれば、モビリティ業界だけでもとてつもない量のデータが生み出されます。自動運転車両には多くのセンサやカメラが搭載され、データや映像が記録されていきます。さらにメタバースのような仮想空間でビジネスや新しいゲームが拡大していくと、無尽蔵にデータが生成されることになります。

 このように、世界全体でデータ爆増社会へと進んでいきます。データ爆増社会では、どのように莫大なデータを保管し、漏洩や消失を発生させないか、データ通信速度を向上させるかが大きな課題となります。



3-2-4 データ保存の場はクラウドへ

 従来、企業のデータは各社内にサーバー環境を構築し、保守運用していました。この体系をオンプレミスといいます。プライベートでも個人の写真や記録といったデータは、従来はモバイル端末やパソコン内部の記録装置、持ち運びのできるSDカードやUSBメモリにデータを保管していました。

 近年、クラウドサービスが増えたことにより、企業においても個人においても、データを自前で保管するよりもクラウドサービスを利用することが多くなりました。ネット経由でデータにアクセスする方が、コスト的にもデータのアクセス性的にもメリットがあり、クラウド利用が拡大しています。クラウドにデータを保管しておけば、オフィスや自宅からだけでなく、ネットアクセスさえあればどこからでもクラウド上のデータにアクセス可能です。



3-2-5 データの集中と富の集中

 クラウドサービスでは以下のメガクラウド3社だけで世界市場の6割以上を占めています;

・Amazon - Amazon Web Service (AWS)
・Microsoft - Microsoft Azure (Azure)
・Google - Google Cloud Platform (GCP)


 クラウドサービス以外で、有名なビッグテック企業は以下の自社サービスを通して、膨大なデータを得ています;

・Amazon - Online shopping, Kindle
・Google - Search, YouTube, Ad-Sense
・Microsoft - Windows OS, Office software
・Apple - Mac, iPhone, iOS App.

 ビッグテック企業は上記の各サービスを通して、購買データや動画サイト、SNS、Web広告などの閲覧履歴、スマートフォン等のデバイスから生成されるデータなどを分析しています。収集したデータを活用しさらなる収益拡大の材料とすることで事業を拡大しています。

 このことから、現代は「データを制する者が世界を制する」ともいわれております。IoTデバイスの増加やインターネットユーザのさらなる増加に伴い、企業や個人のデータが膨大に増え、生み出されるデータはビッグテック企業へとますます流れていくでしょう。



3-2-6 Web3が注目される理由

 大きな力をもつビッグテック企業がプラットフォーマーとして君臨し、個人のデータや権利を管理しているため、個人が自分の情報を所有し、自由に利活用できる権利が侵害されているという意見もあります。

 そのような背景から、中央集権的な組織・企業を介さずに、個人が自分の情報やデータを所有し誰でも安全に利活用できる「Web3」(Web3.0)という新しいインターネットの姿が提唱されはじめました。このWeb3の概念を実現する技術が「分散型台帳技術」(ブロックチェーン等)です。




3-3 トークン化経済

3-3-1 トークン化経済、トークンエコノミーとは

 トークン化経済、トークンエコノミーとは、トークンと呼ばれる「デジタル上のしるし」によって価値や権利をあらわし、トークンの利用・流通によって生まれる新たな経済圏のことです。トークン化経済が注目されている背景には、分散型台帳技術(ブロックチェーン等)やネットワークが進歩してきたことがあります。

ポイントは以下の2つです;
1) 耐改ざん性がある
2) 分散型ネットワークによるシステムの常時稼働が可能

 1)についてはブロックチェーンを例にすると、データやトークンのやりとり(トランザクション)をブロックと呼ばれるものでまとめて、そのブロックをチェーン(鎖)のように連結してデータを保管することで、データの改ざんを防ぐことができるのが特徴です。

 2)についてはわかりやすい例が証券市場での応用です。既存の証券市場の多くは一日のうちの限られた時間でのみ売買ができます。 (わかりやすいよう有名な国法証券取引所を例にあげます);

・ニューヨーク証券取引所(NYSE)
- 9:30-16:00 (アメリカ時間、昼休憩無し)

・東京証券取引所
- 午前の9:00-11:30の前場(ぜんば)
- 午後の12:30-15:00の後場(ごば)


近年、海外では24時間365日売買が可能な取引所が登場しています。例えばINX.oneというATS(代替取引所システム)です。INXは米国証券取引委員会(SEC)の認可を経て、セキュリティトークン(デジタル証券)の取引市場と暗号資産取引所を展開しています。

INX.one

トークン化経済の進展とともに、流通するトークンの種類とボリュームが増えていくと、国境をこえてトークンの売買も盛んになります。

 そうなると一国にあわせた売買可能時間ではトークン化経済では通用しません。分散型台帳技術を証券取引のシステム基盤に応用することで、24時間365日の売買が可能となっています。



3-3-2 トークンとは「デジタル上のしるし」

 分散型台帳技術の活用により、デジタル上でトークンというしるしが発行できるようになりました。トークン(Token)という言葉に聞き馴染みがない方が多いと思いますが、たとえば図書券は「紙のトークン」ということができます。図書券は英語でBook TokenやBook Couponといいます。1,000円分の図書券は書店で利用でき、1,000円分の書物と引き換えることができます。これは「1,000円分の書物と引き換えることができる権利」を紙でできた図書券としてあらわしているものです。


 株式投資においては、2004年に公布された株券電子化(株券ペーパーレス化)により、紙でできた株券ではなく、「株式を保有しているというデジタルなしるし」(インターネット上の記録) に移行されました。
(出典; 日本証券業協会 株券の電子化)


 現在、ネット経由で証券会社のアカウントにログインして、自分が投資している株式銘柄を確認できます。これは「株式を保有しているというデジタルなしるし」を証券会社が管理し、アカウント管理してくれている状態になります。

 このようにトークンという言葉には聞き馴染みがなくても、トークンのもつ役割はすでに身近なところに存在していることがわかります。



3-3-3 実体経済での価値の有無

 トークン化について説明する前に、「価値」について一度整理します。この社会には実体経済で価値あるものと価値があいまいなものが存在します。区分けに定義はありませんが以下のようなものです;

[実体経済で価値あるもの
・通貨 Currency
・不動産 Real estate
・有価証券 Stocks and Bonds
・受益権 Beneficiary rights
・高級品 High-class item
・楽曲 Music
・チケット Ticket
・食料品 Food
・個人情報 Personal information
など


[価値があいまいなもの
(誰かにとっては価値あるもの) 
・所有物 Property
・中古品 Secondhand goods
・記念品 Souvenir
・アイデア Idea
・つながり、コミュニティ Community
など



 以上のような「価値」をやりとりして、社会・経済が回っています。この様々な価値を交換する中で問題となるのは、それが「本当に価値あるものなのか」ということです。3つの例をあげます;

1) 通貨 Currency
→ 通貨を使って買い物をする際、偽造紙幣や偽造通貨の恐れがある

2) 高級品 High-class item
→ ブランドのバッグや時計も偽物の恐れがある

3) 記念品 Souvenir
→ たとえば有名人のサイン色紙であれば、第三者がサインした偽物の恐れがある

 価値がないものをあたかも価値があるかのように見せて、利益を得ようとする商法ややりとりはいつの時代にもあります。



3-3-4 「価値」をあらわすデジタルなしるし

 さきほど、図書券や株式投資を例にとり、「広義のトークン」について説明し、この社会の「価値」にも触れました。それを踏まえ、これからのデジタル化社会で拡大していくトークン化について説明します。分散型台帳技術やネットワークの進展により、さまざまな「価値」を「デジタルなしるしであるトークン」としてあらわされるようになりました。


ポイントは以下の2つです;

改ざんができないデジタルなトークンで価値をあらわすこと
・デジタルなトークンによってその価値をあらわす、ということを、法律や特定の組織によって認めること


 わかりやすく例えるために、前項で取り上げた事例3つを再掲し、言い換えてみます;

1) 通貨 Currency
→ 通貨とすることを中央銀行が認め発行したデジタルなトークン(=CBDC)が登場する。デジタル通貨の普及と現金廃止となれば、通貨の偽造はできなくなる。

2) 高級品 High-class item
→ たとえば高級時計の場合、製造メーカが工場出荷前に時計ごとに個体番号を与え、それをデジタル上のNFT(ノンファンジブルトークン=非代替性トークン)と紐つけ発行する。時計購入者は実物の高級時計を手にするとともに、そのNFTをデジタル上で保有することになる。そのNFTを持っていることが「正規品を示すデジタルなしるし」となる。(すでに高級時計メーカで実用化されている)

3) 記念品 Souvenir
→ 有名人のイベントでもらうようなサイン色紙はデジタルなしるしとしてトークンであらわすのは不向き。例えば「デジタルな記念品」として、世界でひとりだけしかアクセスできないコンテンツ(映像や画像、音声)を生成し、「そのコンテンツにアクセスできる権利をあらわすデジタルなしるし」の利用が予想される。



3-3-5 価値や権利のトークン化

 前項のように、これから「価値のトークン化」はさまざまなところで応用されていきます。トークンの種類や呼称は複数あります。本書では投資としてキャピタルゲイン(値上がり益)やインカムゲイン(配当)につながるトークンに的をしぼって解説します。

大別すると2つあります;

・有価証券のトークン化
→「セキュリティトークン」への投資

・分散型ネットワーク利用権のトークン化
→「ネイティブトークン」への投資


 株式投資では、キャピタルゲイン狙いまたはインカムゲイン狙いで、投資先を選定するのが一般的です。それと同じように、トークン投資においてもキャピタルゲインを狙うのか、インカムゲインを狙うのか、またはキャピタルゲイン・インカムゲインの両方を狙えるのか、本書を参考にしていただき投資判断の材料としてください。

 世界中で発行されているトークンは数多く存在します。多くのトークンがある中でどのようなポイントをおさえるべきかも後述しているのでぜひ参照してください。



3-3-6 トークン化経済の成長予測

 トークン化経済の成長予測をいくつもの企業が発表しています。ここでは2つのレポートを紹介します。文章中にでてくる「STO」とは Security Token Offeringの略で、セキュリティトークン(デジタル証券)を発行して資金調達することを示します。

 2025年、2030年に向けて、セキュリティトークン(デジタル証券)の活用やトークン化される資産の拡大が予想されています。現在社会で証券化され流動化されている投資商品(株式や不動産など)がトークン化されていくものもあれば、これまで証券化されていなかったさまざまな価値が証券化され、流動性をもつことになります。

 セキュリティトークン(デジタル証券)の特徴については後半で取り上げております。


2019年; コンサル大手Deloitteと日本セキュリティトークン協会(JSTA)、セキュリタイズ社(Securitize)による日本の不動産STOの有用性レポート

→ このレポートの中で、韓国Chain Partners社による成長予測がされており、世界のSTO市場が 2030 年までに 2 兆米ドルに達し、年間平均成長率 (CAGR) は 59% と予測されています。ここでいわれているSTOの内訳としては、スタートアップ企業によるSTO活用と、資産裏付け型(Asset Backed Security Token)のSTO活用が含まれます。

https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20191212.html



2022年; コンサル大手Boston Consulting Groupと金融サービス企業ADDX社が共同で発表したトークン化に関するレポート

→トークン化可能な固定資産は、2030年までに世界全体で約16兆ドルに達し、世界のGDPの10%を占めると予測されています。ここでいわれているトークン化の対象としては、債券や投資ファンドなどさまざまなアセットが含まれています。

https://www.addx.co/files/bcg_ADDX_report_Asset_tokenization_trillion_opportunity_by_2030_de2aaa41a4.pdf



3-3-7 トークン化経済を推進する組織や企業

 2章で、グローバル大企業の株主構成について取り上げました。再掲しますと、グローバル大企業の株主構成をみると、ほぼすべてに、ブラックロック・ヴァンガード・ステートストリートの3社が君臨していることがわかります。株式投資においても、本書で紹介するトークン投資(セキュリティトークン、ネイティブトークン)においても、この3社の動向は要注目です。


 ここで、世界3大資産運用会社のひとつであるブラックロック社CEO(ラリー・フィンク氏)の2023年1月のインタビュー記事を紹介します。

Value Walk

「私たちは投資を民主化したいのです。これが、私が証券のブロックチェーンの全体像に焦点を当てている理由の 1 つです。株式と債券をトークン化して、誰が受益者であるかをすぐに特定できる日を楽しみにしています。これが、私たちがそれに取り組んでいる理由です。投資する能力、すべての投資を民主化する能力、そしてそれが私たちがこれを掴みたいと思っている場所であり、私たちはその努力をリードしています」

We want to democratize the vote. This is one of the reasons why I'm focused on the whole idea of blockchain for securities. I look forward to the day when we can tokenize stocks and bonds that every stock and every bond we can identify immediately who is the beneficial owner and this is why we're working on it and every beneficial owner from an individual to an institution have the ability to vote, to democratize every single vote, and that's where we want to take this and we're leading that effort.(Ref. Value Walk)

 このように巨大な資産運用会社さえもトークン化経済に期待しトークン化経済の到来に向け動いている様子が感じられます。



 続いて、世界3大クレジット決済会社のひとつであるマスターカード社CEO(マイケル・ミーバック氏)の2023年2月のインタビュー記事を紹介します。(3大クレジット決済会社; VISA, Unionpay, Mastercard )

Forbes

何でもトークン化できます』とミーバック氏は言います。『すべてがトークン化され、安全に流通する世界になると思います。』
 Mastercard は、Forbes の2023 年ブロックチェーン50リストに、分散型台帳技術を実際に使用している10億ドル規模の企業を選出した22の金融会社の1つです。Mastercardは世界中の何百万もの商人から信頼されています。Web3 のスキャンダル、詐欺が絶え間なく続く中、業界が必要としているのはまさに信頼です。ブラックロック、JPモルガン、フィデリティなどの優良金融大手は、チャンスの匂いを嗅ぎつけ、新技術の最大の支持者の一部となっています。

'Anything can be tokenized,' Miebach says. 'I think it's going to be a world where everything is tokenized and distributed securely."
 Mastercard is one of 22 financial companies on Forbes' 2023 Blockchain 50 list of billion-dollar companies actually using distributed ledger technology. mastercard is trusted by millions of merchants worldwide. the web3 scandal, With scams continuing unabated, trust is exactly what the industry needs. Blue chip financial giants such as BlackRock, JP Morgan, and Fidelity smell opportunity and are some of the biggest proponents of the new technology.

(Ref.; Forbes)


 1章で、国際決済銀行と各中央銀行がCBDC(中央銀行デジタル通貨)というデジタルなお金、デジタル化社会に向けた通貨のトークン化を推進していることを紹介しましたが、世界中で使用される大手クレジット決済会社までもがトークン化に注目していることがわかります。


以上
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4章へつづく

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