神秘の火🔥不知火の里　宇城市歴史さんぽ④ 【明治日本の産業革命遺産　三角西港】

2023年7月2日 19:57

こんにちは。今回は宇城市散策の4回目です。今回ご紹介する史跡は、熊本県宇城市三角町にある三角西港です。三角西港は宮城県「野蒜港」、福井県「三国港」とともに明治三大築港と呼ばれ、オランダ人技師ムルドルの設計により明治20年に開港した湾岸都市です。九州有数の貿易港として栄え、特に三池炭鉱の石炭を輸出した港として「明治日本の産業革命遺産　製鉄・造船・石炭産業」の構成資産として平成27年7月に世界遺産に登録されました。瀬戸と山々とが形成する美しい自然と、明治の港湾都市の建造物が織りなす景観は、国重要文化的景観にも指定されています。そのため、当時も観光と保養の地としても多くの人々が訪れ近代文学の舞台にもなっていますし、現代でもドラマや映画の撮影でよく使われているんですよ。三角西港は、レトロな明治大正期の建物もたくさん残っていて、明治大正時代にタイムスリップした感覚に浸れる素敵な場所です✨

因みにここは2年前、記念すべきnoteの初投稿記事で既に取り上げているのですが、宇城市を代表する史跡ですので、今回もう少し詳しく取り上げたいと思います。今回はレトロ可愛い建物の写真多めでいきたいとおもいます。（文字も結局多め→4900字）

散策ルート紹介

今回の散策ルートを赤字で示しています。地図画像は宇城市作成の散策マップを拝借しています。

今回は散策マップの60分満喫コース：①浦島屋→②龍驤館→③排水路→⑩石積埠頭→④旧三角海運倉庫→⑤旧高田回漕店→⑥旧三角簡易裁判所→⑦旧弁護士等控室→⑨旧宇土郡役所庁舎の順で散策レポートしていきたいと思います。（番号は散策マップ上のもの）それでは早速行ってみましょう🏃‍♀️

三角西港のレトロ建造物群

浦島屋（復元）

浦島屋は開港同年に建てられたコロニアル様式のホテルで、三角西港のシンボル的な建物です。設計は大浦天主堂やグラバー邸を設計した小山秀之だと推測されています。現在の建物は復元されたもので、実物は明治38年に解体されて中国・大連に運ばれ、日本旅館として使用されたそうです。
明治26年には、旧制熊本五高（現在の熊本大学）の英語教師を務めていた小泉八雲（ラフカディオ・ハーン）が立ち寄り、「夏の日の夢」という紀行分を書いたことでも有名です。（後に一節をご紹介）

それではここで、小泉八雲が当時の浦島屋を描写した「夏の日の夢」の一節を、現地パネルから引用させていただきます。↓

夏の日の夢
（THE DREAM OF A SUMMER DAY）
小泉八雲（Lafcadio Hearn）・林田清明訳
青空文庫蔵

（抜粋）
その旅館は、楽園のように思えたし、女中（メイド）たちも天女のようだった。これは、条約による五開港の一つの長崎から逃げるように帰って来たばかりだからであった。というのも、当初、そこで「改良品」ですべて整えられたヨーロッパ式のホテルでの快適さを、私が敢えて求めようとしたからだった。それだけに、ここで浴衣を着てくつろぎ、ひんやりした座布団に座り、よろしき声の女中たちのもてなしを受けて、美しい調度品に囲まれているのは、一九世紀のあらゆる罪悪から救われた気分だった。朝食には筍と蓮根が出て、また宿泊の記念にと団扇（うちわ）が配られた。団扇には、海岸に打ち寄せる大波と青空から歓喜して獲物を狙う海鳥が描かれていて、眺めていると旅の難儀さを忘れるようであった。それには光の輝きと動きの一刹那、海風の勝利が、すべてこの一枚に描かれているのであった。これを見たとき、あっと叫びたいと思ったほどである。

二階のバルコニーの杉の円柱の間からは――黄色い小舟がもの憂げに停泊している――三角港が見え、その湾曲した海岸に沿って、綺麗な灰色の町並みが望める。そして、釣り鐘を伏したような緑の大きな岩山と岩山の間に港の開口部がありーーその向こうにある水平線にはきらきらした夏の輝きがあった。水平線の辺りには、古い記憶のように、山々の影がぼんやりと霞んでいる。灰色の町と黄色い舟と緑の崖の他は、みんな青色であった。

そのとき、風鈴の音を聴くようなすずやかな声で、「ご免くださいまし」という丁寧な言葉が聞こえると、私はうたた寝の白昼夢から覚めた。それは、旅館の女主人が茶代のお礼にやってきたもので、私も両手を付いてお辞儀をした。彼女はとても若くて、歌川国貞の「胡蝶の美女」や「青蛾の娘図」を思わせる、うっとりするような、とても愛想の良い人だった。だが、私は、その時、ふと死を連想した。というのは昔から美人薄命といわれることがあるからだった。

女主人は、お出かけなさいますなら、人力車をお呼びしましょうかと訊ねた。私はつぎのように返事した。
「熊本ヘ帰リマスデス。コノ、リョカンノ、名ハ、何トイイマスカ？　キット覚エテオクデス。」
「お部屋はたいしたものじゃございませんし、それに女中たちもよく躾けられてはおりませんが。浦島屋と申します。それでは、お車を呼ばせましょう。」

彼女の音楽を奏でるような声が過ぎ去ってしまうと、私にかけられた――霊的な網のようにスリリングな――魔法が解けるように感じた。旅館の名も、男に魔法を掛ける詩歌の物語と同じ名前だった。

「浦島屋」での体験を竜宮城と乙姫様にかけた、幻想的で美しい紀行文ですね。この続きは、記事の最後の青空文庫のリンクから読めますので、ご興味ある方は読んでみられて下さい。私的には、車屋さんの、今時は滅多に聞けなくなったネイティブ熊本弁と、雨乞い太鼓が実際に叩かれている描写が興味深かったです。（というのも、宇土・宇城には雨乞い太鼓関連の有形無形文化財が多いので。）

因みに、紀行文の最初に、西洋式の暮らしを批判したような記述があるのは、ハーンさんが日本の伝統的な、Plain, Good, Simpleな生活様式を大切に思い、贅沢な西洋文化を批判的に見ていたからだと思われます。（よろしければ同じく記事の最後にリンクを貼っている、ラフカディオ・ハーンの記事もご一読下さい♪）

例によっておしゃべりが長くなりました💦それでは、浦島屋さんを出て、次に行ってみましょう❣️

龍驤館（国登録有形文化財）

明治天皇の即位50年記念事業として、宇土郡教育会が大正7年（1918）に建設し、現在は歴史ガイダンス室として利用されている建物です。こちらもレトロ可愛い木造洋館ですね〜。（入場は有料だったので、内部の写真はありません。）

排水路（国重要文化財）

湾岸都市だった三角西港の中心を貫くように作られた排水路。山側まで続いています。満潮時に海水を引き込み、干潮時に排水するよう造られ、天然の下水道の役割を果たしています。現在も現役です💡それでは排水路を海まで下って、石積埠頭を見に行きましょう👟

石積埠頭（国重要文化財）

全長756mにおよぶ埠頭は、ムルドルの設計と日本人石工の技術が融合した当時最先端のもので、今でも当時の港の美しさを残しています。確かに美しいですねー✨石材の明るい色合いがまた美しいですが、地元で採れた石なのかな🤔それでは次は、埠頭沿いに建つ旧海運倉庫です↓

旧三角海運倉庫（国登録有形文化財）

明治20年に建てられ、荷上げ倉庫として使われていた土蔵造りの建物。現在はレストランとして営業中で、私も何度か利用したことがあるのですが、おススメは海の見えるテラス席です🐬↓

因みに正にこの場所、NHKドラマ『坂の上の雲』のロケに使われたんですよ！収録されたシーンは、明治 16 年9月に秋山真之と正岡子規が高橋是清の誘いで横浜港に行き、最新鋭軍艦「筑紫」の威容に圧倒されるという場面だそうです。（宇城市HPより）もっくんをはじめとする役者さんと大勢のエキストラがこの埠頭とレストランのテラスに立ち並ぶ姿は圧巻でした✨サラ・ブライトマンが歌うテーマ曲が脳内に流れます。ララララ〜、ルルルル〜♪（因みに私はドラマを最初から最後までちゃんとみてませんが、このシーンは西港だー❣️と感動して印象に残ってます。）

旧高田回漕店（市指定文化財）

明治20年代に建てられた回船問屋さんです。4隻の汽船を有して荷物や旅客を扱っていたそう。この建物は内部の見学自由なので、中に入ってみましょう💓

2階の素敵な角部屋。この部屋自分の書斎にしたいです〜😆（←本あまり読まないけど）因みに私は断然畳派です

建物北側から。明るい南側（海側）よりも北側の方が開放的な造りになってるのが面白い。海側が小窓なのは海風と強い日差しを防ぐためかな？？

さて、これまでは海側の歴史的建造物を見てきましたが、これから国道57号線を渡って、山側の建造物を見に行きたいと思います。個人的には、山側の建物はより重厚感があって、観光客も少なく、オススメの穴場スポットです❣️

そして石段の上の高台向かって左手の建物が、西港の中で私が一番好きな場所、旧簡易裁判所です。

旧三角簡易裁判所（国登録有形文化財）

どうですか、この明るくて洒落た佇まい✨三角簡易裁判所は明治23年に開庁し、大正9年に当地に移設され、なんと平成4年まで裁判所として使用されていたそうです。大正期の和風色の強い地方裁判所建築の好事例とのこと。この建物は、「るろうに剣心京都大火編／伝説の最期編」のロケ地でもあり、ヒロインの神谷薫が入院する病院のシーンが撮影されたそうですよ。（私は見てませんが）現在は法に関する資料が展示されている「法の館」として一般公開されていて、自由に内部を見学できます。早速中に入ってみましょう🏃‍♀️

趣のある廊下ですよね✨『ハイカラさんが通る』の紅緒さんよろしく、袴にブーツで闊歩したくなります笑　ハイハイハーイ、ハイカラさんが通る♪（←若い人知らない）

大きな窓があって、明るいですね〜。学生の時、裁判の傍聴に行ったことありますが、現在の法廷の、窓が無くて暗い雰囲気なのとは大違いです。

旧裁判所本館の横には、重厚な造りの記録倉庫があります。レンガ造りなのは、火災から裁判資料を守るためかな

弁護士等控室から本館を望む。中庭を囲むように建物と回廊が配置されている。なんだか中世の修道院みたい？

それでは、レンガ造りの門を出て裁判所を後にし、最後の目的地に向かいます🏃‍♀️

旧宇土郡役所庁舎（国登録有形文化財）

この建物は明治35年（1902）に宇土郡役所として建てられ、明治期の洋風建築の規範的な造形だそうです💡現在は九州海技学院（船員養成学校）として使用されていますが、内部の見学は可能ですので、早速中に入ってみましょう💓

お邪魔します🙏この日は週末でしたが、職員の方がいらっしゃって、こんにちはと挨拶して下さいました。

またまた素敵な廊下✨天井や壁は漆喰塗りだそうですよ！和の技術も生かされているんですね〜✨

廊下に設けられた談話スペース🌸全面ガラス張りがモダンですね〜！奥に見えているのが校舎（教室）だと思う

会議室もめちゃくちゃ素敵です😆天井の装飾も漆喰だそうですよ！職人さんの技術凄いですねー💫

あとがき

三角西港は石積埠頭と明治大正期の建物がたくさん残っていて、当時のハイカラで明るい雰囲気が感じられる場所です。建物は全てが映画やドラマのロケに使えそうなくらい素敵で、どこで写真を撮ってもインスタ映えすると思いますよ💡
皆さまも近くを通られた際はお立ち寄りになり、明治大正ロマンに浸ってみられたらいかがでしょうか。

最後までお読み頂き、ありがとうございました😊

小泉八雲「夏の日の夢」の続きはこちらから↓

小泉八雲の記事はこちらから↓

アクセス情報はこちらから↓

【参考HP】
・宇城市ホームページ
・宇城市教育委員会「宇城市の指定文化財」
・宇城市「三角西港散策マップ」

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