いいフィードバックが、いいクリエイティブを生む
いいものをつくるためには、いいフィードバックを受けることが大切です。制作の現場で、日々実感しています。
昨年ムーテレで放送された「ブレイキングデザイン」でも、挑戦者へのフィードバックの様子が丁寧に描かれていました。フィードバックする側からもされる側からも、「いいものをつくりたい」という誠実な思いが感じられ、「思いとは、こうして制作物に宿るのだ」と感銘を受けました。
自分以外の視点から意見をもらうことで、気づけることはたくさんあります。最初から100点を目指すのではなく、一旦自分のなかでつくった100点を他の人に見てもらうことで、100点の天井がどんどん上がる=クオリティが高くなっていきます。
今回は、私がこれまでに受けた印象的なフィードバックと、そこから学んだことをご紹介します。フィードバックをする側にとってもされる側にとっても、参考になれば嬉しいです。
印象的だったフィードバック
「自分以外の視点で、少しいじわるに添削するといいよ」
これは広報記事の原稿に対して、先輩デザイナーからいただいたフィードバックです。
自分では自然と使っていた表現が、他人から見ると不自然だったり、丁寧に書いたつもりが、逆に冗長な印象を与えていたりと、自分以外の視点から指摘を受けたことで気づくことがたくさんありました。
このフィードバックを受けて以来、自分のなかに「性格や状況の異なる、複数人の編集者を雇う」という感覚を持つようにしています。
三人の脳内編集者は、「それを伝えるのにその表現で、本当に合ってる?」「ぱっと見てわかりやすい?」「今疲れてるんだけど、それでもすっと頭に入ってくるもの?でなきゃ読まんよ」と、常に書き手の私に問いかけてきます。
このように「複数視点」で文章を読むことで、より客観的に、クオリティを判断できるようになった気がします。
とはいえ、脳内編集者はどこまでいっても自分。積極的に、いろいろな人の視点で読んでもらうことが、いい文章を書くうえで大切だなと感じます。
このことは、株式会社WORDS代表、竹村俊助さんの著書『書くのがしんどい』にも詳しく書かれています。
「これは一般的な意見?それともあなた自身の意見?」
このフィードバックをもらったときに見せた原稿は、「一般論と主観」が明確に分けられていませんでした。そのため、一文ごとの主語が「一般的な人」なのか「私」なのかはっきりせず、全体的に掴みどころのない印象になってしまっていました。
広報記事は基本的に「私」視点で書いていますが、事実や一般論を交えることもあります。
たとえば、
という文章だと「一般論」になりますが、
という文章だと、「私の意見」になります。
事実だけだと温度感がなくなってしまうし、主観だけだとただの感想文になってしまいます。大切なのは、両者のバランスを取ることと、この文章の主語は誰なのかをはっきりさせること。そうすることで、読んだときに違和感なく、すっと入ってくる文章になるのだと再認識しました。
「ことばですべて伝えようとしなくていい」
これは、デザイン会社ならではのフィードバックだと思います。
エルでは、デザイナーがデザインを、ライターがコンテンツをつくり、適宜それらを当てはめてクオリティを確認していく、というプロセスを踏むケースが多いです。
そのときに大切なのは、デザインとことばを合わせたときに、どう見えるか。
ことばで説明しすぎてもいけないし、ことば足らずでもいけません。デザインから伝わる印象と、そこに添えられたことばによって、「伝えたいことが伝わり、ターゲットの心に届く」クリエイティブが完成する。そういった場面に、これまで何度も立ち会いました。
デザインとことばの両方で伝えることを意識し出してからは、コンテンツ自体のクオリティを上げることはもとより、デザインと合わせたときにどう見えるだろう、と考えるようになりました。今では、できるだけ早めの段階でデザイナーと打ち合わせをし、互いにつくったものを組み合わせて検討することが多いです。
「デザインをつくること」「ことばをつくること」は、最終目標ではありません。クライアントらしさを十分に表現した、いいものをつくるための手段です。デザインやことば、写真や動画、一つ一つを組み合わさることで、「らしさが伝わる」クリエイティブをつくることができるのだと思います。
「クライアントは、”デザイン会社の”提案書という目で見てくる」
クライアントに提示する資料も、「デザイン」の一つです。私は入社してまもなく、提案書の作り方について、デザイン面からじっくり教わりました。
クライアントはエルを、「デザインのプロ集団」として依頼してくれています。クリエイティブへの期待値も高いはず。それなのに、提案書のデザインが洗練されていなかったら、クライアントをがっかりさせたり、「大丈夫かな」と不安にさせたりする可能性があります。デザイナーがいいデザインをつくるのを間近で見ているからこそ、提案書のデザインも妥協してはいけない、と強く思いました。
このときいただいた、もっと具体的なアドバイスは次のようなもの。
デザインの基本原則「近接・整列・強弱・反復」を、提案書の作成を通じて学ばせてもらいました。頭では理解していたつもりでも、実践すると抜け落ちてしまう、ということも痛感。知識を身につけるには、実際に手を動かすのが一番だと身を以て感じました。
このとき受けたフィードバックをきっかけに、デザイン会社の提案書としてクライアントに見せて恥ずかしくない資料を作ろう、という意識がより強くなりました。
いいフィードバックが成立する条件
いいフィードバックとは、する側だけでなく、される側の姿勢も大切です。そんなフィードバックが成立する条件を、いくつか挙げてみました。
エルでフィードバックの時間を「苦」と感じないのは、上記の条件が揃っているからだと思います。
つい、指摘されると落ち込んだり、反省モードになったりすることの多い私ですが、最近は「指摘をもらったからには、これからもっとよくするぞ」という前向きな気持ちを抱けるようになりました。
フィードバックを真摯に受け取って、次のアウトプットに活かしたい、そう思えるのは、先輩方が、真摯にフィードバックをしてくれているのを実感できているからかもしれません。
いいフィードバックが、さらにいいアウトプットを生む
今年頑張りたいのは「いいフィードバックをもらうための、いいアウトプットをする」ことです。
デザインに正解はありませんが、コンセプトや目的とずれていたり、クライアントの意図に沿っていなかったりするものは、最適解とはいえません。そういったアウトプットをすると、フィードバックは「不十分なところを直す」ためのものになります。
しかし、最適解に近い状態のアウトプットをした場合、「こうすればもっとよくなる」という、プラスアルファのフィードバックを受けることができます。これが制作の早い段階であればあるほど、最終成果物のクオリティは高くなります。
今年は、そんなフィードバックをもらうことでよりクオリティの高いものを作ることができるよう、まずは初稿のクオリティを上げていきたいです。初動は早く、レベルも高く。難しいけど、目標は高く。チームみんなでいいものを作れるよう、日々、精進していきたいと思います。
そして、今年もこちらのnoteでは、エルで働く日々のなかで感じたこと、学んだこと、メンバーのこと、社内イベントや『できるまで』シリーズなどを発信していきます。よろしくお願いいたします!
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デザインスタジオ・エルは「超えるをつくる」を合言葉に「らしさ」をデザインするWeb制作会社です。
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