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逮捕されるかも!?薬機法に関わる広告表現

化粧品や美容雑貨の広告、サプリメントなど健康食品の広告に関するお話です。

コピーライターの人はもちろん、デザイナーやディレクターなど広告制作に携わっている人は全員が知っておいた方がいい薬機法に絡むものです。

薬機法とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」というのが正式名称で、2014年の法改正がされる前までは「薬事法」と言われていた法律です。
薬機法では医薬品や医療機器、化粧品などの製造・販売から広告に至るまで、さまざまな規制やルールが定められています。薬機法に違反すると、課徴金納付や業務停止などの重い罰則が科せられ、商品を販売する企業にとっては多大なる損害を与える可能性があり、社会的信用を失うことになりかねません。

「え?違法で罰せられるのは販売している企業でしょ?」と思ったそこのあなた!今日からその考えをあらためてください。
製造会社や販売会社以外にも、広告代理店や広告制作会社など広告を作っている側にも責任はあり、法律違反をした場合は逮捕および罰金刑が科せられることがあるのです。

広告業界が衝撃!2020年のステラ漢方事件

2020年にステラ漢方が販売していたサプリメント(健康食品)のWeb広告において、“肝臓疾患の予防に効果がある”と宣伝。また広告内で体験談の捏造があったとして、薬機法違反の疑いで販売会社であるステラ漢方の従業員が逮捕されました。

広告業界に衝撃が走ったのは、このWeb広告の制作に携わった広告代理店と制作会社も逮捕されたということです。

今までは販売企業(広告主)のみが立件されるケースが多かったのですが、薬機法の対象が広告代理店や広告制作会社にまで及んだということで、広告を作る側も関与度合いによっては処罰対象となるという事例です。

TVCMや新聞・雑誌などの広告は媒体審査というものがありますので、薬機法に抵触する可能性がある広告は「この表現はダメです」と媒体社より差し戻しをされますが、Web(LP含む)やSNSだと審査が緩かったり、そもそも審査がなかったりするので、広告主や広告制作側がしっかりと薬機法について認識をしていないといけません。

おさえておくべき薬機法における広告表現の知識

広告制作に携わっている人なら必要最低限理解しておきたい薬機法における広告表現の知識を簡単に解説します。

  • 医薬品

  • 医薬部外品

  • 化粧品

  • 医療機器

  • 再生医療等製品

上記に該当する広告において、医薬品でないのにまるで医薬品のような効果・効能があると謳ってはいけないということです。注意すべき点は、コピーなどの「文言」だけでなく、誤解を招くような「デザイン表現」も含むという点です。つまり、コピーライターだけでなく、広告をデザインするデザイナーやデザイン内容を指示したりチェックするディレクターも、薬機法について理解しておかなくてはいけません。

サプリメントなど健康食品はどうなの?ってことですが、健康食品は未承認医薬品にあたるため、やはり効果・効能を謳うことはNGです。健康食品はあくまで「食品」扱いで、医療品(薬)ではありません。

ざっくり言うと、医薬品でないのに医薬品と誤認させて商品を購入させようとすることはすべてダメだということです。医薬部外品やトクホ、機能性表示食品など分類によっては表現して良いとされる範囲が変わってきますが、それ以外は基本的に下記のようなものはNGだと認識しておいた方がよいです。


【NG表現例】
◾️効果・効能を謳う(これで治ります!)
◾️医師などを登場させて効果保証を誤解させる(⚪︎⚪︎先生もおすすめ!)
◾️根拠のない虚偽のエビデンス(こんなデータがあるんです!)
◾️具体的な病名や症状(がんに効きます!)
◾️特定の部位・部所(肝臓の働きが〜)
◾️使用者と偽り体験談を捏造する(私もこれで痩せました!)
◾️物理的にありえないこと(これで若返る!)


「え〜!そんなこと言っても、結構、違反している広告見かけるよ」と思われた人もいるんじゃないでしょうか。Web広告(LP含む)においては昔と比べるとコンプライアンスがだいぶ守られてきていますが、近年とくに、YouTubeやインスタグラム、X、TikTokなどのメディアでは無法状態に近いのが現実です。

インフルエンサーやアフィリエイターも要注意!


広告代理店や広告制作会社にお勤めの方であれば、ここらへんのリテラシーというのは社内で共有されているかと思いますが、怖いのは薬機法のことを全然知らないYouTuberやインフルエンサー、アフィリエイターなどの個人です。

広告主から宣伝費用をもらっているのに、さも個人的な紹介のように商品を勧めるステルスマーケティングについては社会的な問題になり、「広告」や「PR」などと明示するようにルールづくりがされましたが(この場合のルールは薬機法ではなく景表法)、薬機法の遵守についてはまだまだ十分に浸透していないようで、違反者が散見されます。

YouTuberやインフルエンサー、アフィリエイターによる広告宣伝も、もちろん薬機法の対象ですので、「知らなかった」では済まされません。

フリーランスのコピーライターやデザイナーも同様で、仕事の依頼を受けて制作したものが、実は薬機法違反だったなんてこともあり得るわけです。

そうならないためにも、「知っておく」ことはとても大事なことだと思います。薬機法だけでなく景表法など、ネットで構わないので広告に関する法律は調べて概略だけでも知っておくと良いと思います。

自分の身を守るために断る勇気

とは言っても、広告主や広告代理店に「こういうふうにしてくれ」と強く言われるケースもあるかもしれません。

「いや、これは薬機法NGだからできませんよ…」なんて言ったら「次から仕事が来なくなってしまうかも…」そんなことを考えてしまいますよね。

私も昔、とある通販の美容ドリンクの広告制作をしていて、広告主(しかも取締役)に直接「こういうふうにしてくれ」と言われたことがありました。
明らかに薬機法(当時は薬事法)に抵触するような表現だったため、「いや、これはマズいですよ…」とその方に進言しました。
それでも広告主は「いいんだ。この方が売れるからやってくれ!」とこちらの忠告に耳を傾けてくれませんでした。
結局、その仕事は途中でこちらから降板させてもらいました。

それ以来、その会社から仕事を頼まれることはありませんでした。
数ヶ月して、当時私が勤めていた会社の社長が、「この人知ってる?」と新聞を渡してきました。そこには、その取締役が逮捕されたという小さな記事が載っていました。

消費者庁に怒られて指導されるくらいはあるかなとは思っていましたが、さすがに逮捕されるなんて思いませんでした。私が降板したその後も、きっとゴリゴリの違反広告で営業していたんでしょうね。

もしあの時、「わかりました!」と広告主の言うことを聞いていたら、私も逮捕されていたかもしれません。

昔の話ですので、今はそんな横暴な広告主なんていないと思いますけど、薬機法のことを知らずに違法な表現要望を伝えてくる広告主はまだ少なからずいると思います。その場合はしっかりと、「薬機法に抵触してしまいますよ」とこちらから進言すべきです。それは広告主のためでもあり、自分の身を守るためにも必要なことだと思います。

ダメと言うだけでなく、「こうしたら大丈夫ですよ」という代案を提示できたら最高ですね。

「それでもやってくれ!」と言われたら、もうその会社からの仕事は引き受けない方が良いと思います。広告主である会社も、その商品を買ったお客さまも、そして広告を作ったあなたも、誰ひとり幸せにはなりませんから。

ときには断る勇気も必要です。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

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