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【連載:地域交通のカタチ】DXやライドシェアを追い風に、四国からスタートアップ育成の形をつくる〜いよぎんキャピタル 濱口俊樹氏 & 電脳交通 近藤洋祐〜

電脳交通は地域交通の維持・存続を目指し創業から7年以上経過、過去3度の資金調達を実施し、多くの企業と資本業務提携を締結しました。

わたしたちが向き合う地域交通を含めた地域経済全体やタクシー業界の課題と将来性などを株主の方々や提携企業の皆様はどう捉えているのか?弊社代表取締役社長・近藤洋祐との連載対談を通じて浮き彫りにする連載【地域交通のカタチ】

第10回はいよぎんキャピタル社長の濱口俊樹氏(はまぐち・としき)をお迎えしました。愛媛県だけでなく瀬戸内地域を広く地元ととらえ、地銀発のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)として新たなあり方を模索する濱口氏に、電脳交通への出資の経緯や今後への期待について伺いました。

現場を知るからこそ分かる手触り

電脳交通 近藤(以下、近藤):今日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。最初の質問ですが、どういう経緯で我々のことを知っていただいたのでしょうか。

いよぎんキャピタル 濱口氏(以下、濱口氏):「電脳交通」という社名を最初に聞いたのは2017年頃だと思います。私は伊予銀行で高松支店長の経験があるのですが、同支店で徳島と高知を所管していまして、それぞれの地域の企業情報を集約していました。その際に電脳交通の社名が上がってきていて、高松の経済会合のいろんな場面でお名前が出ていました。サイバーチックな社名なので印象は強かったですね。

近藤社長にお会いしたのは確か2022年の8月だったと記憶しています。私が社長に就任したということでご挨拶に伺って、その時に近藤社長のお考えやこれまでのストーリー、今後の展開などをお聞かせいただきましたね。「メジャーリーガーを目指していた」「祖父のタクシー会社を引き継いだ」というところから始まって、タクシー業界ならではの問題点や将来像を適切に分析していました。そして、それらの課題を解決したいという情熱を感じることができるような、誠実で正直な経営者だなという第1印象を受けました。

近藤:ありがとうございます。御社は四国の地方銀行の中でも早い時期にCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を設立されていて、シリーズBのときから出資をいただいています。中期計画の中身などにとても細かくフィードバックを頂くことができて、大変僭越ながら頼りにさせていただいています。タクシー業界は厳しい状況にありますが、その中で出資を決めて頂いた経緯や理由についてお聞かせいただけますでしょうか。

濱口氏:我々いよぎんグループのお客様の中にはタクシー業界の企業もたくさんあり、業界の課題は非常にその根が深い。ICT化が進まないし、人手不足も深刻です。四国の人口は2050年には250万ぐらいに減ると言われています。ローカルに行けば行くほど、交通インフラの重要性は増し、タクシー業もなくてはならない存在です。そこにコロナ禍が起きて、あらゆる業界でDXにどう対応するのかが叫ばれるようになり、電脳交通という存在に時代が追い付いてきた感じになりました。

近藤社長にお聞きしたかったんですが、2月に開催したサミットの感想はいかがでしたでしょうか。応援団が増え、認知度が高まっているということは必要とされているという表れだと思います。近藤社長が現場をよく知っているからこそ、課題が正確に分析をされて、それに対する一手がしっかりとユーザーの皆さんに伝わっている証拠だろうなと思っているんです。

「差別化をどうする」という点は最初、私も少し疑問に思ったところがあったんですが、きちんと対応されており、業界になくてはならない存在として現場を見つめて一手を打たれているというところが大きなポイントだったというふうに整理をしています。

近藤:ありがとうございます。例年、オフラインでイベントを開催しており、昨年は200社以上の方々にご来場いただいたのですが、今年は500社を超えた方々にお集まりいただきました。これは元々、タクシー業界向けに営業イベントと位置付けて企画していたものなんですが、今回から一般公開させていただいたので、業界以外の方々もたくさんお集まりいただきました。タイミング的に、日本型ライドシェアの動きが注目されて、そこに関心の高い方が非常に多かったんだなという印象を受けました。

タクシー業界の規制緩和は非常に大きな追い風となっておりまして、業績面での影響も大きくなるだろうと思っています。ただ、先ほど濱口社長に言及いただいた通り、やはり今この瞬間そういったお話ができているのも、創業してからずっと業界の課題解決に絞って事業作りを展開してきたというところが社会的に評価された結果なのかなと思っています。

ちょうど先日47都道府県全てでお客様を獲得することができました。このように盤石な体制で、日本型ライドシェア時代をすごく良い状態で迎えることができるのかなと思っています。世間からの関心も高いですが、世論などに踊らされることなく、自分たちのやるべきことをしっかりとやっていきたいと思います。

東京での投資で判断能力を磨く

濱口氏:弊社は愛媛県が地盤ではありますが、四国は一体と捉えています。いよぎんホールディングスの中核である伊予銀行の店舗戦略も四国のみならず瀬戸内圏域には出しています。そのなかでVCとしてのあり方は、金額・投資先数も、瀬戸内圏域に縁のある企業さんが半分、それ以外の東京などが半分と考えています。

これにはいろんな狙いがありまして、例えば東京で出資をするにしてもただ単にキャピタルゲインを狙いに行くスタンスではなくて、投資することによって、瀬戸内圏域や四国に何を還元できるかという観点を重視しています。具体的には、それによって雇用が生まれたり、既存の地場産業に良い影響があったりするのかという点を見ます。

そしてもう一つ、競争の激しい東京で経験を積んできたことで知見が蓄積され、CVCとしての投資判断能力を磨くという狙いもあります。

近藤:通常、最短距離で成功を目指していこうというスタートアップの戦略として、地方を拠点に事業を作っていくのは、投資家目線では厳しい評価を受けると思っていました。ただ、だからこそ逆説的に「日本に必要なこと」であるとご理解いただけたのは、御社が先ほど述べられたような狙いからしっかりした体制を作っていただいていたからだと思いますし、そこに非常に感謝しています。

四国から新たなスタートアップ育成を

濱口氏:政府の5ヶ年計画でもスタートアップ支援策が議論されるようになりました。しかし現状では、「地方では環境が整わないので東京に行きます」という起業家の方が多いんですよね。エコシステムを整備しなければならないし、我々のような資金の供給サイドももっと充実していく必要があります。

そこで大事なのがロールモデルですね。これからやっていこうとする起業家や大学が、実際にビジネスにしていくやり方が分からないでつまずいてしまう事例が非常に多い中で、やはり成功事例っていうのは大きな意味を持ちます。その事例として一番身近なのが近藤さんであり、電脳交通だと思っていて我々も期待感は非常に大きいです。是非そういうポジティブな影響を与える存在になっていただきたいなと思います。そうなれば後を追うような企業がすぐまたきっと出てくるはずです。

近藤: 各地域でのルールや歴史を担ってきた方々の思想が、確実に各地域それぞれに存在していて、私自身もそういったものをすごく大切にしたいという思いがあります。ただ、例えば人口減少の流れに沿った形で、政府がレギュレーションを微妙に変えたりすることで、ある意味で地域に守られてきた様々な仕組みが機能しなくなるような機会は必ず増えると思います。徳島の中にいながらでも県外や海外でお金を稼ぐとか、生き延びていくために何をしなければいけないのかという考え方を同時に持たないといけません。

たまたま私がこのタクシー業界という厳しい環境の中で事業作りをしてきたことで相当な強い危機感を持っていたことが、結果として電脳交通の創業につながっています。少しずつ他の産業でもそういった考えを持たれている次世代の経営人材が増えてきた印象も持っています。

日本型ライドシェアを追い風に変えていくような事例も作りつつ、「古い産業だからといってゲームチェンジが全く起こらないわけじゃない」というように固定観念を覆すような動きにもなりえると考えています。そのうえで、東京で事業作りをしなくても、地方発でIPOを十分狙えるんだというメッセージを、次世代の若手経営人材の方々に伝えていくことができたらと思っています。その思いを今も持ちながら経営をしておりますので、そういった意味で皆さんのご期待にも応えていけるように頑張っていきたいと思っています。

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最後までお読み頂きありがとうございました。
引き続き本連載では各界のキーパーソンとの対談を軸に、未来の地域交通のカタチについて取り上げてまいります。
次回の記事も楽しみにお待ち下さい。

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