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【駅前が廃墟】人も鉄道も消えた夕張の街

 2016年11月、北海道の夕張支線に乗り、夕張市を訪れました。

■夕張支線とは

 夕張支線は、北海道の日高山脈を貫く石勝線の支線として、新夕張~夕張間を結んでいた路線です。2019年4月1日に廃止されました。

(画像:北海道ファンマガジン https://hokkaidofan.com/yubari-trainline01/)

 戦後炭鉱の街として栄えた夕張市。夕張支線は、その豊富な石炭を運ぶことを目的に造られましたが、昭和40年代に市内の炭鉱が次々と閉山すると、その後は利用客が急速に減少。2016年には、市長自らJR北海道へ鉄道廃止を申し入れ、市の持続可能な交通体系構築へのJRの協力を条件に、廃止が決定されました。

■市の財政再建問題

 石炭の時代が終わって窮地に立たされたのは夕張支線だけにとどまりませんでした。そもそもが炭鉱開発のために山を切り開いてつくられた夕張の街は、大規模な農業にも向かず、石炭に代わるこれといった産業を持つことができませんでした(「夕張メロン」が有名ですが、生産規模は北海道の他自治体と比べるとごく小規模です)。
 バブル期には、スキー場開発や映画祭など観光振興に取り組みますが、バブル崩壊とともにこれも失敗。赤字が積み重なり、自転車操業状態に陥った夕張市は2007年に「財政再建団体」に指定、いわゆる「財政破綻した街」となりました。

■列車に乗り、いざ夕張市へ

 2016年11月。まさに、市長の申し入れにより夕張支線が廃線の方向で決まった直後でした。夕張市の悲惨さはあまりにも有名だったため、一体どんなところなのか(夕張支線の乗車も兼ねて)足を運んでみることにしました。

 飛行機で新千歳空港へイン。隣の南千歳駅に移動し、千歳発夕張行の普通列車に乗車します。

 年季の入った行先プレート。

 自販機でコアップガラナを買い、北海道気分を高めていきます(笑)

 途中の川端駅で停車時間がありました。石勝線は特急や貨物列車が多く走行する路線で、普通列車はほとんど運転がありません。この駅も1日5本ほどしか列車がないようでした…。

 殺風景な待合室…。

 新夕張から分岐して夕張支線に入っていきます。1つ目の沼ノ沢駅。

 2駅目、南清水沢駅。もちろん乗降客はいません。

 4駅目、鹿ノ谷駅。写真では伝わりませんがホームは意外に長く、石炭の時代には重要な路線だったことがうかがえました。

 終点の夕張駅に到着。

 行き止まりの線路の向こうに駅舎がある構造。

 駅舎は洋風の立派な建物で、観光案内所もありました。

 しかし、駅を出て数分歩くと早速廃墟が見えてきます…。

 遠くの山にはスキー場の名残も見えます。

 駅から歩くこと十数分、「ゆうばりキネマ街道」という、古い映画広告が並ぶ通りに着きました。バブル期に映画祭を開いて観光客を呼び込もうとしていた名残です。

 かなり古く見えますが、結局お客さんは来たのでしょうか…。

 こちらは別の路地で見つけた横丁の看板。これもかなりボロボロ。おそらく載っているお店のほとんどは残ってないと思います…。

 民家らしき建物も人が住んでいる気配はありません。

 図書館も廃墟と化していました。建物を取り壊すお金すらないということなのでしょう…。

 夕張小中学校跡。壁に描かれた絵など、かつては子どもたちが通っていた痕跡があるのがまた切ないです…。現在は10kmほど南の清水沢地区に小中学校があります。

 唯一明るい気持ちになれそうな「石炭博物館」に行こうとしたところ、まさかの臨時休館。というより、開館している期間の方が短いようです…(笑)

 公共施設や団地など、ほとんどが廃墟と化しています。

 セイコーマートが1軒だけ灯りをともしていました。こんな街でも道民の生活を支えているセイコマはさすがです。

 駅の近くにある、「バリー屋台」という屋台風フードコートで食事。カレーそばがおいしかったです。

 12時過ぎに着き、16:31の列車で帰る約4時間の滞在。石炭博物館が空いていなかったせいでひたすらゴーストタウンをさまようこととなり、身も心も疲れ切ってしまいました…(笑)

 街を歩いてもほとんど人の姿は見られませんでした(平日かつ天気が悪かったというのもありますが)。

■夕張市は今後どうなる?

 この記事を書くにあたり、2021年現在の夕張市がどんな状況にあるのか自分なりに調べてみました。そもそも、2016年時点で市の中心は私が散策した集落より南の清水沢地区付近にあり、私が見た光景は夕張市の特に悪い部分だったのかもしれないと思ったからです。
 しかし、結論から言うと夕張市の今後について、明るいニュースは一つも見つけることができませんでした。人口減少に歯止めがかからないことで、公共料金の値上げや各種手当の打ち切りが重なり、それによってますます人口が減少する負のスパイラル。財政再建を担う市においても、極度のコスト削減で労働環境が悪化し離職者が続出(冬でも夜になると暖房が切られ、事務所が氷点下になることまであったそう…)。再建以前に、それを行う人材が定着しないという厳しい状態です。
 極めつけは新型コロナウイルスの影響による観光需要の減少。今年2月1日に、スキー場や複数のホテルを経営していた「夕張リゾート株式会社」が破産申し立てを実施。観光業の基盤が崩れ始めています。

 旧夕張駅近くにあった「ホテルシューパロ」。以前、知人が泊まった際に朝食がとてもおいしくて良いホテルだったと聞いていたのですが、訪問したときは休館していました。

 夕張市の苦しい状況は他の地方都市とレベルが違い、鉄道を手放すのも極めて当然の選択だったと思います。逆に言えば、昨今ローカル線のダイヤ見直しなどを迫られているような地方都市は、今後夕張市と同じ未来をたどる可能性があると言えるでしょう。鉄道の存廃だけにとらわれず、街のあり方全体を大局的に考える必要があると思います。

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