マガジンのカバー画像

小林秀雄を読む日々

108
『小林秀雄全作品』全32巻を、あきれるほど丁寧に読んでいきます。まず「『私の人生観』にたゆたう」を完結。新連載を準備中です。
運営しているクリエイター

#文学

はじめての小林秀雄

「批評の神様」とよばれる小林秀雄を読んでみたい。しかし、レトロな表紙の文庫本『モオツァル…

既視の海
1年前
66

『葉隠』、宮本武蔵、そしてスティーブ・ジョブズへたゆたう

戦争中に、従軍記者をしたり、兵士相手に講演をした小林秀雄は戦後、軍国主義プロパガンダに加…

既視の海
1年前
3

生きた人生そのものがロジックであり、思想である

宮本武蔵は兵法を極める方法論をもって自らの思想をつくり、「器用」を極めたものが国の指導者…

既視の海
1年前
5

必要なのは、「器用」をきわめる名人であって、己を知らない指導者ではない。

宮本武蔵は、兵法を極める手法をもって諸芸をも極め、自分を鍛練することで、みずからの思想を…

既視の海
1年前
8

指導者こそ、人生観を持つ事に勝たねばならない

小林秀雄は、宮本武蔵が兵法の方法論をもって様々な芸事をも極めたことについて、「器用」を追…

既視の海
1年前
8

その人そのものを生きることが批評だ

小林秀雄の批評における起点は、論壇に登場した1929(昭和4)年の『様々なる意匠』における「…

既視の海
1年前
10

批評の手法で俺流の肖像画を描く

小林秀雄は、宮本武蔵が兵法だけでなく、その方法論をもって水墨画、茶の湯、連歌をも極めたことも合わせて「器用」を追究したと見ている。さらに宮本武蔵にとっては「思想」をも極める対象の一つだったと考えた。その思想とは一つの行為であり、勝つ行為である。そして一人に勝つということは、千人万人に勝つということであり、つまりは己に勝つことだという。 これは経験を重んじる、小林秀雄の批評の極め方ともいえるのではないか。 先に、宮本武蔵は実用主義を徹底的に思索した日本で最初の人物であると、

「器用」を極めたから、師匠はいない

宮本武蔵が著わした『五輪書』の「地の巻」にある、兵法の道を学ぶ心がけ九箇条のなかで、小林…

既視の海
1年前
3

心のあり方よりも、「器用」を極めよ

13歳から真剣勝負を初め、20代の終わりまでに60数回の勝負をしたという宮本武蔵は、兵法の道を…

既視の海
1年前
5

伝統に頼らず、自らの言葉で思想を語る

宮本武蔵が著わした『五輪書』は、『私の人生観』の当時はまだ評価が定まっていなかった。それ…

既視の海
1年前
4

ふたたび宮本武蔵から学ぶ

四六判の「小林秀雄全作品」第17集でも61ページにわたる『私の人生観』において、最後のおよそ…

既視の海
1年前
1

文体を欠いた思想家はシンフォニーを創り出せない

日本の哲学者は、論理は尽くすが言葉を尽くしていない。観念を合理的に述べれば十分だと思い込…

既視の海
1年前
2

「批評」の平静と品位こそ「美」である

話を『私の人生観』本文に戻す。 小林秀雄は詩人リルケの言葉を用いて、「美」についての考え…

既視の海
1年前
3

読んだだけでは駄目だ。眺めるのが大事なのだ。

「読んだだけでは駄目で、実は眺めるのが大事なのだ」とは、いったい、どういうことだろうか。 これが、「眺めているだけでは駄目で、よく読むことが大事なのだ」とあれば、何ものどにつかえることなく飲み込める。またもや小林秀雄によく見られる逆説表現なのだろうか。 「という妙な言葉で、人に語った事がある」について、脚注では『コメディ・リテレール 小林秀雄を囲んで(座談)』『対談/伝統と反逆 坂口安吾・小林秀雄』(いずれも「小林秀雄全作品」第15集)とある。だが、「文学というものは、君