批評の手法で俺流の肖像画を描く
小林秀雄は、宮本武蔵が兵法だけでなく、その方法論をもって水墨画、茶の湯、連歌をも極めたことも合わせて「器用」を追究したと見ている。さらに宮本武蔵にとっては「思想」をも極める対象の一つだったと考えた。その思想とは一つの行為であり、勝つ行為である。そして一人に勝つということは、千人万人に勝つということであり、つまりは己に勝つことだという。
これは経験を重んじる、小林秀雄の批評の極め方ともいえるのではないか。
先に、宮本武蔵は実用主義を徹底的に思索した日本で最初の人物であると、