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【取材】触れて、学んで、取り組んで「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」(後編)

こんにちは。今回も引き続き、生活者が普段のお買い物行動の中で、カーボンニュートラルについて「触れる」、「学ぶ」、そして解決へ向けて「取り組む」ことを促進する「みんなで減CO2プロジェクト」の実証実験(2024年1月18日~2月18日)について、佐々木さんと杉山さんにうかがったお話を紹介します。

※前編・中編はこちら👇

公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美


子どもから大人まで学んで楽しめる「エコラベルの宝探しゲーム」

-アプリの利用状況についてですが、効果の大きかった機能はありますか?

佐々木さん:私たちが提供しているアプリにはいくつか機能がありますが、私たちが予想していた以上に行動や意識変容に影響したと実感したのは、「エコラベルの宝探しゲーム」です。

「エコラベルの宝探しゲーム」の画面イメージ
約20種類のエコラベルが紹介されており、
実際にエコラベルがついている身の回りの商品を探して、写真を登録するとポイントがもらえる。
アプリ内ではそれぞれのラベルがどのような意味を表すのかを学ぶことができる。

 FSC認証商品などにラベルをつけてもらいコミュニケーションしてもらいます。具体的には、ラベルを20個程度集めるエコラベルの宝探しゲームを通じて、「どんな商品にどんなラベルがついていて、そのラベルの意味ってなんだろう?」ということを学んでいただくというものです。
 ラベルを見るともちろん宝探しとして子供も楽しめますが、意外にも、大人の方にもとても興味を示していただき、次に買い物に行ったときに、「この企業はついていない」、「この商品はついている」とついラベルを見てしまうそうです。
 そういった行動が結果的にはラベルのついている商品購入に繋がれば理想的ですし、「きちんと環境に配慮している企業なんだ」など、さまざまな気付きのきっかけとして、エコラベルの宝探しはとても機能しているのがうれしい誤算ですね。

―エコラベルいいですよね。大人も体験できるから、やはりついつい色々見るようになって買うとか、企業評価の行動に繋がってくるということですね。

佐々木さん:一方で、エコラベルに関して、良い面と悪い面の両方があると思います。商品の限られた表示スペースの中で伝えきるための工夫としてシンプルな絵やロゴで表しているものが多く、それは伝える工夫としては秀逸ですが、ラベル自体の認知が高くないので、見ても分からないし、伝わらないことが往々にしてあります。

―エコラベルは商品を見て「環境に配慮する」ということを考えてもらうきっかけにはなるけれど、そのラベルの意味や、それがなぜ環境に良いのかといったことの情報伝達が非常に難しいということなのですね。

店舗での脱炭素商品の展開について

ゲンコツプロジェクトの特設ブース(スギ薬局・江戸川瑞江店)
ペットボトルリサイクルや水自販機などの環境配慮の取り組みと一緒に展開することで、お客様への訴求力アップ!

―店舗での商品陳列などについて、生活者の方の反応や行動の変化に有効だったアプローチはありますか?

杉山さん:スギ薬局として循環型社会への対応としての他の取り組みとの相乗効果があげられます。「ボトルtoボトル」水平リサイクルの取り組みで、店舗にペットボトルの回収機を置いており、今回ボトルtoボトルに力を入れている企業の商品を軸として、「商品が生まれてから捨てるところまで廃棄せずに回収する」というパッケージとして表現できたのは良かったと思います。それに加え、もともと環境配慮の観点で導入していたわけではない「水自販機」も、生活者のペットボトルの利用を減らすことに一役買いますので、そのような関連性のある取り組みがセットで展開できたのは面白い方法ではないかと考えています。

―逆にうまくいくと予想していたのに、あまりうまくいかなかったことはありますか?

杉山さん:名古屋ゼロゲート店は栄の町の中にあり、比較的購買層も若い人や女性も多く、ビューティーをターゲットにした店舗で、エシカル消費に関心のある方々が多く来店されているので、関心を寄せていただけるのではないかと予想していたのですが、今回の脱炭素商品のブースはいろんなものを寄せ集めた印象が際立ってしまい、ビューティーとは全く違うものと認識されて素通りされてしまうケースがありました。
 また、これは日本総研の佐々木さんとも話していたのですが、あえて特設売場にしなくても、例えば、定番の売場の中に環境ラベルに特化して、その商品を買うとポイントがアップするといったキャンペーンを実施することで、「どうせ買うなら環境配慮商品」と感じていただく方法もできると考えています。

―今回の実証実験でのいろいろな成功、反省点を踏まえて商品の幅を広げたり、訴求性の高いエコラベルを用いた売場展開を行うなど、店舗での環境配慮商品の訴求をもっと拡大していく余地がありそうですね。

チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアムの取り組みについて

―最後に、今回のプロジェクトを主催している「チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム」について教えてください。

佐々木さん:このコンソーシアムは、我々日本総研やスギ薬局さんを含めた10社の民間企業で構成されており、今回のようなCO2削減に関する実証実験の企画・運営や、参加企業でのCO2削減の取り組みのために、外部の人を招いての勉強会を開催するなどの活動を行っています。来年度以降も、今回の結果を踏まえて、CO2削減に関する企画をコンソーシアムのみなさまで引き続き議論していきながら、PDCAを回していきたいと思います。

まとめ

 小売業が脱炭素の取り組みに参加することは、生活者の意識と行動の変容につながる重要な一歩です。しかし、脱炭素という概念が一般の人々にとってはまだまだなじみがなく、行動に結びつけるのは容易ではありません。そのため、企業や小売業はエコラベルなどの取り組みを通じて、環境に配慮した商品を提供することで、生活者の意識を高めることができます。
 特に、子どもから大人まで楽しめるアプローチゲーム形式の学習コンテンツは効果的であり、生活者の行動変容に繋がります。
 また、小売業が取り組みを拡大するためには、政府からの支援や炭素税の導入などの経済的な枠組みが整備されることが必要ではないかと示唆されます。
 さらに、脱炭素社会の実現という大きな目標に対しては、メーカーや流通業、生活者との協力や連携が不可欠です。今回の取り組みはその一歩であり、将来的にはより広がりを見せることを期待しています。

「チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム」の詳細はこちら👇

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