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【取材】触れて、学んで、取り組んで「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」(前編)

こんにちは。みなさんは普段お買い物の際に「脱炭素」を意識することはありますか?
今回は2024年1月18日~2月18日に実施された、生活者が普段のお買い物行動の中で、カーボンニュートラルについて「触れる」、「学ぶ」、そして解決へ向けて「取り組む」ことを促進する「みんなで減CO2プロジェクト」の実証実験について、プロジェクトを主催している株式会社日本総合研究所(以下日本総研)リサーチ・コンサルティング部門 グリーン・マーケティング・ラボの佐々木努さんと、店舗協力をされた株式会社スギ薬局の杉山憲司さんにお話をうかがいました。

前編では、佐々木さんからうかがった「みんなで減CO2プロジェクト」の概要と取り組みの成果や発見のお話を紹介します。

プロジェクトの詳しい内容はこちら👇

公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美


「みんなで減CO2プロジェクト」の概要


株式会社日本総合研究所・佐々木努さん

―このプロジェクト及び店舗での取り組みについて詳しく教えてください。

佐々木さん:脱炭素といったキーワードはとても流行っていると思っていますが、このキーワードを自分ごととして捉えて、暮らしの中でその行動に繋がっているかというと、まだ遠いな、と思っています。

 日本総研は、企業の脱炭素を進めるさまざまなコンサルティングを手掛けていますが、企業の脱炭素に向けた活動が自走自律的に動くようになるには、生活者側からのアプローチや取り組みの応援も不可欠であると感じています。企業も頑張り、生活者も購買行動を通じて企業を応援するという両輪を回したいといった思いからこのプロジェクトはスタートしました。

 こうしたことは1社で取り組むには限界があるので、みんなでいっしょに行うことも大事ですし、さらに、もともと「脱炭素」というワードに興味関心が湧きづらく、自分ごと化されにくいものを言葉で表現するだけでは全然伝わりません。そこで、今回は、スギ薬局様、万代様の実際の店舗をお貸しいただいて、生活者にとって身近な売場や商品を通じて、我々の取り組みや思いをきちんと伝えることで、行動意識が変わり、環境に配慮した商品がしっかりと選ばれる状態につなげたいと考えています。

触れて、学んで、取り組んでみる

 具体的には、①環境に優しい商品を集めた棚を作り、お客様に訴求をする、②スマートフォンのアプリケーションを通じて学んでもらう、③実際に購買行動につなげてもらう、といった「触れて、学んで、取り組んでみる」行動変容のサイクルをユーザーさんに経験していただけるようになっています。
 その中で、各施策に対するお客様の反応や属性を、アンケート調査やアプリの情報、店舗のID-POSデータを合わせて、行動変容の結果を分析しています。

「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」アプリ画面イメージ
ゲンコツクイズやエコラベルの宝探し、ゲンコツ商品の紹介などのコンテンツがあり、
くらしの脱炭素行動について楽しく学ぶことができる

―生活者の行動は変える余地はまだまだ大きく、生活者の行動を変えることでそうした生活者に選ばれるために企業側の取り組みが後押しされる、そんなサイクルをつくるということですね。我々も生活者のために商慣習やサプライチェーンの仕組みを見直す企業を表彰等していますので、同じ思いです。さて、今回のプロジェクトの目標はどのように設定されていますか?

佐々木さん:最終的な目標は、生活者の購買行動に繋がり、脱炭素商品の売上が伸びていくことですが、今回の実証実験では、まず、環境にやさしい脱炭素商品(減CO2商品)の存在を「知る」、これからの買い物行動の中で少しでも「意識する」、そして、そうした意識や行動の変化が生活者に生じたかどうかを検証することが目標です。

現在の取り組みの成果や発見

―まずは意識の変化に注目していくということですね。お客様からの声や、現在の達成状況、感触はいかがですか?

佐々木さん:2月13日現在、アンケート結果などから意識と行動は非常に変わってきていると感じています。「家庭内でこうした取り組みのことが話題になった」や、「この取り組みやお店の棚を通じて、初めてこうした企業の脱炭素の取り組みのことを知った」といったお声、また、我々のアプリにエコラベルを探してみようといったコンテンツがあるのですが、そのコンテンツを経験して、「すごく勉強になって、普段の買い物の中でもそういう商品をとても見るようになった」、「自分だけではなく、子どもも見るようになった」といった声が集まっています。
 さらに、実証実験実施店舗から「減CO2商品」の棚を常設にしてほしいといったお声や、ほかの店舗、商品にも広げていってほしいといったありがたいお言葉をいただいています。このように、初年度の目標設定に対しては一定の成果があったのではないかと思っています。

店頭でのゲンコツ商品の陳列の様子
カーボンニュートラルって、ニャんだ?~シンボルキャラクター「ニャートラル」が目印

―かなり意識の変化につながっているのですね。そうしたなかで気づいたことや、新しい学びがあれば教えていただきたいです。

佐々木さん:自分ごと化していくということは、愚直なことですが、伝える機会をきちんといただければ、接触を持てたユーザーさんは少しでも意識や行動を変えることはできるのではないかと思っています。スギ薬局さんと万代さんの店舗力は素晴らしく、そこにたくさんのお客様に来ていただいて、触れることができるタイミングで、どこまでそれをきちんと伝えきれるかが重要です。
 私たちの今回の実証においては、アプリをダウンロードして試していただければ、行動変容に結びつけることができるのではないかと考えているのですが、やはり棚の前までは来ても、それをダウンロードして学んでもらえる人がすべてではありません。このような点が今後の大きな課題であり、チャレンジしていかなければならないことだと思っています。

※中編では、スギ薬局の杉山さんに、小売業の視点から脱炭素・サステナビリティへの取り組みについてうかがったお話を紹介します。

⚫チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム
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