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旅のうた(歌日本紀行)

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2022年3月の記事一覧

(第21回) 白い京都に雨が降る

(第21回) 白い京都に雨が降る



 ひさしぶりに京都・大原の「三千院」を訪れた。別に恋に破れたわけではないが、「京都・大原・三千院」という例の歌によって脳裏に焼き付いているこのお寺、何回か訪れているが、正直毎回印象に残らず、何がそうさせているのかと、いぶかしながら、半世紀を超えた人生で3度目の訪問とあいなった。

 もちろん、この場所にふさわしい歌は、(デューク・エイセスや渚ゆう子が)「恋に破れた女がひとり」と歌う『女ひとり』

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(第20回) 森高千里『渡良瀬橋』 青春の匂いがする場所

(第20回) 森高千里『渡良瀬橋』 青春の匂いがする場所

 語呂がいい、音(おん)がいい、という。実体よりも前に、それに付けられた名前の響きや印象を気に入る。見た目のインパクトによるレコードの「ジャケ(ット)買い」もそうだけど、この「語呂買い」も、それはそれで粋な話だ。

 歌手の森高千里さんは、橋をテーマにした曲が作りたいと考え、日本地図を手に取った。住んだこともなく、縁もゆかりもない土地にある橋だけど、その「響き」が気に入り、詞を書いた。それが『渡良

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(第19回) 仙台・広瀬川の思い出

(第19回) 仙台・広瀬川の思い出

 コロナ禍の合間を縫うように仙台を訪れた。旅人を自認する割には、通過することは多かれど、仙台に宿泊するのははじめてのことだった。東北の雄藩に連なる仙台は、あまりにも大都市すぎて、自分のようなよそ者が「把握」しようとするには手には余るような気がして、いままでなんとなく敬遠していた。

 今回、ある本を読んで気が変わった。作家・佐伯一麦氏が、生まれ故郷である仙台の川を歩き、「広瀬川周辺」の景色を生き生

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(第18回)原監督と潮来笠、粋でいなせな若大将

(第18回)原監督と潮来笠、粋でいなせな若大将

 今年の日本シリーズはソフトバンクの圧勝で終わった。無念そうなジャイアンツ・原辰徳監督の顔がテレビに写った。私はなぜかこの人の顔を見ると、脳内にある音楽が流れる。『潮来笠』である。

 原監督のあの「グータッチ」のポーズと表情が実に粋でいなせな潮来笠。原監督と橋幸夫さんは世代も違い、見た目が似ているかどうかは個人の感じ方なので、強制はしないが、私のなかでは実に見事な脳内コラボとして存在する。

 

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(第16回) 「あずさ2号」と信濃大町の立ち食いそば

(第16回) 「あずさ2号」と信濃大町の立ち食いそば

 登山で有名な出版社「山と渓谷社」の創業90周年を記念した上映会の案内があった。神保町のミニシアターで「山岳映画」の大特集が組まれるという。井上靖原作『氷壁』なども上映される。たのしみな催しだ。

 もうだいぶ前のことになる。一時山岳小説にのめり込んでいた時期があった。厄年を迎えた、心身ともの「倦怠感」から、あらゆることに手がつかず、ただ「非日常」の感覚だけを追い求め、ベッドの中で、(過酷で尊くて

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