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優しく、強くありたい。そして、幸せになりたい

今朝、目が覚めてふと幡野広志さんと糸井重里さんの対談(取材・構成:古賀史建さん)を読んで、すぐに幡野さんの著書『ぼくが子供のころ、ほしかった親になる』を手に取り一気に読み終えた。

末期がんで余命3年を告げられた幡野広志さん(note)から2歳の息子さんへ向けられた本ではあるが、わたしはまるで自分に向けられた本のように読んだ。

1983年生まれの幡野さんとは6歳しか離れていない。少し年上の頼れる兄から話を聞くつもりで気持ちでページをめくった。

結論から言うと大げさに聞こえるかもしれないが、この本は私が人生で目指すべき方向を示してくれた。それくらい胸に深く刺さるものがこの本にはある。

写真家という仕事への姿勢、お金の使い方、自らの子供時代を踏まえての子どもへの接し方、狩猟とガンという経験を通じてたどり着いた生死観など、さまざまテーマにについて、将来、息子さんが何かに迷ったときの道しるべとなるような言葉が綴られていく。その一つ一つが真剣でいてあたたかい。幡野さんがここまで考えてきたことが息子さんにまっすぐに向けられている。

そのどれもが胸に響いたが、今の私にとってもっとも印象的だったのは以下の部分だ。少し長いが引用させていただく。

息子が大きくなったときに、絵馬に職業を書いたりしないように、僕はしっかり教えておきたい。 「職業を夢にしてもあんまり意味がない」 「夢を叶えるためにお金と仕事というツールがあるんだよ」  お金と仕事というツールを得るために必要なのが学歴や職業で、それ以上の意味はないんだよ、と。

小学生の僕は、学校で「将来の夢は?」と聞かれると、「幸せになりたい」と答えていた。幸せになるという夢は、今も変わらない。
ところがこれは大人からすると奇妙な答えだったらしく、先生に 怪訝 な顔をされた。「この子は深刻な問題を抱えているんじゃないか」と心配されたりもした。 大人が変な顔をすると、僕は困った。早生まれで成長が遅く、運動も勉強も苦手だった僕は自己肯定感が低くて、大人に否定されたらすぐに自信がなくなったのだ。「僕は間違っている。きっと、どこかおかしいんだ」
そう思ってまわりを見れば、友だちはみんな「夢」として職業をあげている。僕も合わせて職業を言うようになり、「幸せになりたい」という本当の夢は封印した。
でも、大人になった今は思う。おかしいのは、みんなのほうだと。  息子には、夢と仕事とお金の関係をちゃんと知ってほしい。「普通はこうだから」と職業=夢にして、つまらない大人にならないように。

この記事にも書いたけれど、わたしはずっと「何者かにならなければ」と思って生きてきた。数ヶ月前にnoteに文章を書き始めたのも、29歳にもなって自分の核になるものが定まり切らないと感じながら、何かの手がかりを求めてのことだった。

幡野さんのこの言葉を聞いて、長年の呪いが解けたような気がした。

そう、わたしはずっと幸せになりたかった
こうして文字にしてしまうとあまりにあっけないのだけれど、この事実になかなか正面から向き合うことが出来ないでいた。それはきっと自分への自信の無さからくるものだったのかもしれない。

それでも20代も後半を迎えて最近になり少しずつ考え方が変わってきた。そして、幡野さんの本を読んで、ここにきて私の考えは一つにまとまったように思う。今はっきりということが出来る。

わたしは優しく、強くありたい。そして幸せになりたい。

自分の家族や友人、パートナー、いつか親になることがあれば子ども、といった周囲の人たちと一緒に幸せになりたい。そのために、優しく強い人間でありたい。そのために日々できることを一つ一つ積み重ねていこうと思う。

命にかかわることだと誰だって冷静になれなくなるから、しっかり、この2つを考えることを覚えておいてほしい。  
その人にとって、幸せとはなにか。
ただ1日でも長く生きていることが幸せなのか。


幸せの定義は一つではない。結婚することやこどもを持つことが幸せではない。長生きすることが幸せなのかもわからない。だから、私たちは考え続けなければならない。

その人にとっての幸せはなんであるか。
そして私自身の幸せとは何なのかを。

私はこれから自分なりの方法で旗野さんの生き方を見習っていきたい。
これからいつまで続くか分からない人生の中で考え続け、私なりの答えを生み出していきたい。

誰かの胸の奥から時間をかけて生み出された言葉は、時間や距離を超えて誰かの元に届き、その人の胸の奥に沈む。そしてその人の血となり肉となり、いつかまた形を変えて次の誰かへとつながれていく。

この本を読んで、なんだかそんなイメージが頭に浮かんだ。
わたしはこれからも悩んだ時や迷ったときこの本を開くことになるだろう。

この本を、文章を生み出してくれてよかったと心から思う。


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