見出し画像

そのブリーフの真っ白さは決して頭から離れない

おさまり放浪記 Vol.04 の覚書

昨日、木村松本の木村さんの原寸図集の出版を経た全国ツアー「納まり放浪記 Vol.04」を聴講しに。この会での議論を聴きながら、本を読みながら考えていたことを書き留めた記録としていったんここに残します。
(決してイベントレポートではないのでご注意ください。論壇とは関係のない内容や解釈が含まれています。よって本を読了していない方、イベントに参加されてない方には不親切な記事でしかないと思います…)

「納まり放浪記 Vol.04」のフライヤー(転載)

前半は木村さんによる「本の読み方」を指南する収録作品を中心としたレクと建築家の皆さんの「納まり」(もしくは「納まる」)に関するプレゼン。
後半に登壇者による討論という流れで、観客には学生から実務者、施工者まで広い世代、性格の方々が参加されているいい空気感でした。

「いったん」 止まる態度

書内の「原寸」論を読むと原寸に集約する、部品同士が取り合いひとつの系を為し、それはまたある時点の状態でしかなく動いていく中で停止した状態がひとまずの建築になるという。さらに原寸には『何かそこで起こることをあらかじめ「追体験」している』ような感覚になる、と書いてある。

確かに原寸(図)には、自分が経験してきた寸法を身体で考える瞬間でもあり、その経験を「いったん」詰め込む記録物(ドキュメント)の役割があるのだろう。その対にある1/100の骨組みとのラリーも要になっているようにみえる。図面は技術を統合するdrawingでもあるし、日々の経験、出来事のdocumentでもあるのだと。

ただ、木村松本さんの「いったん」の姿勢は止まろうとするようにはみえない。今にもおおきく手を振りかぶって走り始めようとしている。

「っぽい」 イメージの公転

この部分はスキーマっぽい。この部分は吉村順三っぽい。もしくはおしゃれなDIYっぽい。「あれって〜っぽいよね。うん、ぽいぽい。」という立ち話を聞くことがあるし、することもある。SNSやサブスクによって画像が垂れ流しで入ってくる現代、建築家や芸術家に限らずつくり手のイメージは「っぽい」画像たちによって気づかないうちに消費され判断されてしまうようになった(決して悪い意味ではない)。

そんな分かり合えない他者(つかい手)と共に一つの創作をするのには苦労を要するという意見もよく理解できるし、一方で「どのように歩み寄るのか」も設計行為の一部にもなりつつあるのではないだろうか? 

そう思うと、「いったん」には「っぽい」に歩み寄るための暫定的な態度があるように、その原理が「原寸」論に現れているようにみえてきた。

分かり合えない他者と共にいること

私は、「みること=分かること」ではないと思っている。建築家の内覧会へ行ってもそれを単にみたからといって、分かっているわけではないと自覚している。「こうみることもできるな…」と脱線し、思考がドライブしていく。それがむしろつくりの解釈に繋がる。

では、「分かってもらう」もしくは「分かり合う」とはなんだろうか。それは伝える側とみる側の間で必然に起こりうるのだろうか?

正直、「っぽい」と言う方が観客も楽だし気軽なのだ。『テアトロン』で高山明さんが言うように、観客に知らせる、みせるためには「っぽい」ままにしない迂回路を開く必要があるのだと思う。それは近年のプロジェクトの演劇性(シアトリカティー)とも無関係ではないように思う。(→ 補)


じゃあどうするんだ、と言う議論はまたどこかで。ここでは文字数を割きたくないので「いったん」止めたいと思う…

ペットボトル、撮影器具、マスキングテープ、プロジェクター(写真:筆者撮影)


長くならないためのいったんの終わり

終盤。パラパラと改めて図面集をめくる。全然図面集の感想とか書けてないと思いながら、全ての論考を読み返しタイトルを追う。木村松本さん「っぽい」をいつの間にか探しながら、家成さんの論考(p.190)にあるブリーフの真っ白さと重ねている。

つくること、つかうことの世界線で時点は動き続ける。地球が公転しているように、気づかないうちに私たちは後ろからひたすら木村松本さん、家成さんのブリーフの真っ白さを、「いったん」の態度を追体験していくのかもしれない。まだ私たちの建築的な実践は始まったばかりであり、ひたすら続いていくのだろう。そんな気づきを得た。

(翌日の朝にひとまずの言葉足らずな記録として残してます。)

(補)
高山さんのレクチャーをちょうど今日聴いていた。その中で、「アクティビストのような性格でも私はみられているが、そう言う意識はむしろない」と。「どちらかというと、当事者性を社会に忍びこませていくイメージ」というようなことについて話していて、面白いし建築への態度と繋がる議論だと思う。
→ 聞いていたレクチャー動画はこちらから


この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?