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#詩人

クーデター

クーデター

クーデタークーデター

巧妙に張り巡らされた
バイブスに乗せられて
自由の沈殿物を謳歌し
革新と銘打たれた退廃

快楽の吐瀉物にまみれ
血の涙に魅入られては
失われた神性をがなる
聖職者における性倒錯

精神の根源を枯らす薬
脳漿を操作する実験室
貧しい者は死さえ転売
富める者に更なる富を

我々には価値などない
もはや数十億玉砕にて
この地に安息を約束し
我々の尊厳を宣言する

クーデタークーデ

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錆びた階段の上

錆びた階段の上

真夜中黙って出て行った
追いかけて探し回っても
不思議なくらい見つからない

一度目は諦めた
二度目も諦めた
三度目も諦めていた

そしたら僕を呼ぶ声
慌てて見回しても分からない
もう一度僕を呼ぶ声

頭の上から聞こえてきた
ぐるりと見渡す
廃屋の脇にある

錆びた階段の上
夜空になるべく近付いて
お前は星ばかりを眺めていた

潰れた顔

潰れた顔

潰れた顔に雨が降る
明日も強か雨が降る
遠くで犬が吠えている
ひと鳴き毎に遠退いて
終いに輪廻の共鳴が
触れる命の戯れに

誰もあたしに気付かない
ろくに別れも伝えずに
去ったあたしがいけないの
可憐な夢を見たかった
優しい言葉が好きだった
生きていたいと思ってた

それがあたしの願いだと
信じていたのは幾日か
嘘にできない偽りを
心の折り目に綴じました
別にあたしは馬鹿じゃない
いっそ馬鹿なら良

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人感照明

人感照明

月は光度を上げながら
高く昇るほど裸になっていく
それが美しいことなんだと
伝えるためだけに

夜を支配する

同じ空に居ながら
決して交わることを
叶えられずにいる雲は
その輪郭線だけを

露にされたまま

せめて月光を隠してみせる
凛としたその光が
柔らかくも途切れた刹那
どこかの人感照明が

不意に灯る

聞こえないような声で
「ここまでは追って来れないから」
それだけ囁いてみせると
声は人

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探し物

探し物

寝る間も惜しんで探すのは
果たしてどれ程価値がある

そういう野暮は言わないで
どうせ途中で眠るから

真に価値あるものなんて
分かりもしないと分かるだけ

だからそれでも構わない
探すだけでも意味がある

意味など付ければ百通り
偉人の言葉を聞けば良い

それも充分受け入れる
けれど私は私なの

ならば私と云う物の
心は誰に教わった

それは数多の別れ道
寝る間も惜しんで探してる

おりがみ

おりがみ

腕が折れたよ
滑り台から落ちたんだ
雨あがりで濡れていたからね
余計に滑る滑り台だったんだ

足が折れたよ
暗いところで飛んだんだ
新月の夜だったからね
足場も見えない着地点だったんだ

心が折れたよ
ただ生きていただけなんだ
誰かの気持ちなんてわかりっこないからね
愛されていたのは僕の方だったんだ

舞台

舞台

薄汚れた純白の壁に囲まれた
小さな部屋に篭りきり
書き殴った言葉も今は昔と
アルバムに綴じられたカビが語る

もう何もしないし何もされたくも無い
吟遊詩人の歌を聴かせてくれたなら
別れも告げずこの世の果てまで旅に出て
諦めと些細な期待を連れだって闊歩する

伝えたい事なんて独善的な告白で
バーガンディのシャツがお気に入り
足りないくらいがお似合いだから
余白に隠した陳腐な息吹を愛おしむ

何者にも

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東京モグラ

東京モグラ

あらかた掘られた跡ばかり
東京モグラの時刻表

人脈金脈キャッシュレス
東京モグラの歓楽街

木曜ゴミの日エコバッグ
東京モグラの特売日

染井吉野は単一始源
東京モグラの没個性

誰かが死んだら振替輸送
東京モグラの無関心

顔を出したら取り締まり
東京モグラの自警団

崩落するまで掘り進め
東京モグラは絶滅種

理想狂

理想狂

歌は理想を紐解くか
たとえばそれが可能でも
米が無ければ盗人か
飢えて死ぬのが関の山

理想のために生きるのが
存在理由の名乗りでも
あちらを立てればこちらは立たず
兎角この世は世知辛い

理想に首をくくるのが
行動原理の生粋か
とはいえ罵声と野次馬の
世界はめでたく回るだけ

結局何にもしないまま
その日暮らしの風見鶏
いっそ丸ごと生き様を
理想と語って飛んで行け

生きていら

生きていら

生きているけど死んでれら
被害届けのサイン会
心の扉はQR

死んでいるけど生きていら
山で朽ち行く木の階段
ボトルキープのカウンター

生きているけど死んでれら
問わず語りのワイドショー
幻覚幻聴緑内障

死んでいるけど生きていら
歳を取らない免許証
焼いて撒かれた喉仏

生きているけど死んでれら
死んでいるけど生きていら
生きていらったら死んでれら

コンコンゴトゴト

コンコンゴトゴト

コンコン線路の遮断機が
お山の向こうで鳴いている

高架を走る終電の
車窓に絵本の読み聞かせ

暗い地平に浮かんでは
残像描いた走馬灯

ゴトゴト最後に手を振って
お山は静かに鳴いている

高架はベッドの枕元
車窓に頬杖ついたまま

暗い地平の在りし日も
瞳を閉じれば生きている

アネモネ

アネモネ

ごうごうと沸き立ちながら
春を呼んでいるような風が
夜の木立に割り込んで
姿を見せる事もなく
無闇やたら騒ぎ立てては

あんまり急にしんと
静まり返るもんだから
消えちまったのかと思うと
てんで違う場所で佇んでいる
そいつを見つける度に

僕はフンと目を閉じて
まるで気にも留めないような
素振りをしてみせると
背中越しに頭を叩いてきて
ホント悪戯っ子みたいだよな

別に追いかけたりもしないけど

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嫌われ者

嫌われ者

身を粉にして
見返り欲しさに犠牲を払い
真面目に生きては
面白くない奴と言われ

純粋そのもので
誰かの為にと言いながら
腹に一物抱えては
汚い奴と言われ

不審火の情熱
燃やして全部失った
そう観念した時には
間違ってはいないと言われ

俺は嫌われ者
時々思い出してみれば
愛されてる事も忘れるから
因果応報なんてクソっ喰らえ

春は気まぐれ

春は気まぐれ

過去は過去だと割り切って
思いつくまま振る舞って
欲しくなったら手を伸ばせ
要らなくなったらそっぽ向け
当てもないなら風任せ
邪魔する奴は打ち負かせ
悲しい奴とは笑い合え
虚しさ見つけて唾を吐け
何者だろうが俺は俺
何様だろうがお前はお前
共に行くなら肩を抱け
独り行くなら胸を抱け
助けが要るなら前を向け
苦悩を見たなら声を掛け
名前も知らんが友と呼べ
誰かを想えば信じ抜け
誰かを愛せば身を砕け

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