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人感照明

月は光度を上げながら
高く昇るほど裸になっていく
それが美しいことなんだと
伝えるためだけに

夜を支配する

同じ空に居ながら
決して交わることを
叶えられずにいる雲は
その輪郭線だけを

露にされたまま

せめて月光を隠してみせる
凛としたその光が
柔らかくも途切れた刹那
どこかの人感照明が

不意に灯る

聞こえないような声で
「ここまでは追って来れないから」
それだけ囁いてみせると
声は人感照明と共に消えて

無秩序だった暗闇が

みるみる僕の姿に集約する
振り向けば、見とれてしまう
目を逸らすには、心残り
あんまり裸が、綺麗だから

僕は背中で月を隠した

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール