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アネモネ

ごうごうと沸き立ちながら
春を呼んでいるような風が
夜の木立に割り込んで
姿を見せる事もなく
無闇やたら騒ぎ立てては

あんまり急にしんと
静まり返るもんだから
消えちまったのかと思うと
てんで違う場所で佇んでいる
そいつを見つける度に

僕はフンと目を閉じて
まるで気にも留めないような
素振りをしてみせると
背中越しに頭を叩いてきて
ホント悪戯っ子みたいだよな

別に追いかけたりもしないけど
不器用に逃げるもんだから
無理矢理起こされた鳥が
寝言と文句の入り混じった
頼り無げな声で鳴いている

小さく真っ赤なアネモネは
首を重たそうにもたげながら
そんな僕とか風や鳥の
他愛無い様をつぶさに眺めながら
誰のことを想っているのかな

やりたいことなんて何もなかった放課後 ぺっちゃんこにした鞄に詰め込んだ反逆 帰る所があるから座り込んだ深夜の路上 変えたい何者かを捕まえられなかった声 振り向くばかりの今から届けたいエール