おすすめ本を紹介vol.2神谷美恵子【生きがいについて】
今日ご紹介する本は、神谷美恵子『生きがいについて』という本です。
神谷美恵子という人は精神科医で、ハンセン病と向き合った医師として知られています。
そんな彼女が1966年に出版した本が『生きがいについて』で、今やこれは日本の名著の一つとして広く知られています。
皆さんは生きがいという言葉を聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
「私は○○を生きがいにして生きている」
とよく言いますね。○○に入る言葉は、抽象的なこと、たとえば人の笑顔を見ることを生きがいにしていると言っても不自然ではありません。
一方で、ただの趣味とも見えるようなこと、たとえばあのアーティストのライブに行くことが生きがいになっている、という人も多くいるでしょう。
しかし生きがいとはそもそもどういうものなのでしょうか?
もし心のなかにすべてを圧倒するような、強い、いきいきとしたよろこびが「腹の底から」、すなわち存在の根底から沸きあがったとしたら、これこそ生きがい感の最もそぼくな形のものと考えてよかろう。 『生きがいについて』
実はこの本には生きがいとはこういうことだ!と分かりやすく書いてあるわけではありません。
そういう意味では不親切な本と思われるかもしれない。
しかしその中でも、よく読んでみると、少しずつ著者の言いたいことがわかってきます。
そして生きがいを考えることが本当の意味でどういうことなのか、そしてそれがいかに大切なことなのかを私たちは痛感するでしょう。
人間はべつに誰からたのまれなくても、いわば自分の好きで、いろいろな目標を立てるが、ほんとうをいうと、その目標が達成されるかどうかは真の問題ではないのではないか。
結局、ひとは無限のかなたにある目標を追っているのだともいえよう。
つまり著者は、目標を達成すること自体が生きがいであるのではなく、目標を達成するまでの過程、その瞬間瞬間の時間そのものが生きがいそのものであると言っているのです。
大抵の自己啓発はいかに目標を達成させるかのノウハウが書いてあります。
しかし、実は目標を達成させることなどとても些細なことで、言ってしまえば大体の目標というものは、毎日の少しずつの努力を積み重ねていくといつかは叶うものなのです(それがあまりに荒唐無稽でない限り)。
そんな中で、目標達成を第一に置かず、むしろ生きがいにすべきは永遠に辿り着くことのないようなことであると本書では述べています。
また、生きがいというものは、それを見失った者にたいして他者が与えられるものでもありません。
こういう思いにうちのめされているひとに必要なのは単なる慰めや同情や説教ではない。もちろん金や物だけでも役に立たない。彼はただ、自分の存在はだれかのために、何かのために必要なのだ、ということを強く感じさせるものを求めてあえいでいるのである。
だれからも必要とされていないと感じるとき、人はもっとも辛く生きづらいと感じるのではないでしょうか?
逆に言えばどんなんに辛いときでも、だれかに必要とされていると思ったらなんとか生きていけるのではないでしょうか。
つまり、私たちは他者に与えることはできないが、求めることはできる。
そして、それがいかに他者を救う行為であるかをもう一度考えてみるべきだと思います。
人間が最も生きがいを感じるのは、自分がしたいことと思うことが義務とが一致しているときだ。
とはいえ、私たちは普段から常にずっと生きがいを感じて生きていけるのでしょうか。
もちろんその努力はするでしょうし、できるだけ明るく生きたいと誰もが思うでしょう。
しかし、誰にでも闇が襲ってくる時期はあります。
何をしてもうまくいかない。
そもそも自分が何をしたいのかがわからない。
不安で仕方なく、それなのに一歩も前に踏み出せない。
どうでしょうか。そんな時期はありませんか?
しかしこの本の著者は、そういう時期もまた、ある一つのことさえ間違わなければ大丈夫であると言っています。
待つというのは未来へむかっている姿勢である。向きさえ、あるべき方向に向かっていればよい。
一見するとネガティブにも捉えられる「待つ」という行為にも意味があると言っています。
方向さえ間違わなければ必ず闇には光がいつか差す。
この本は読んですぐに何かを得て日々の暮らしに影響を与えるといった類いのものではありません。
しかし、この混沌とした時代を生きる私たちにとって、今こそ読むべき本ではないでしょうか。
ぜひ読んでもらいたいおすすめの一冊です。
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