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初めて納涼盆踊りに行ったら、整ってしまった話


オマメです。

先日、近所の小さな公園で、納涼盆踊り大会が開かれていました。

折角だし、観に行ってみるか。
そんな軽い気持ちで参加してみたところ…、


盆踊り、エグかった。

すごかった。

これまで自分は、どちらかといえば、
『みんなでゆっくり回って何が楽しい…』と、
遠巻きに眺めているタイプでした。

しかし、参加してみてわかる類の知がそこに。

盆踊り、すごいぞ。

未経験の人はマジで1回行ってみて欲しい。

それくらい心が動いたので、今回は、盆踊りに
見つけた驚きの魅力を伝えていきます。


①サウナより整うかもしらん。


突然ですが、サウナ界隈で「整う」と呼ばれる
現象をご存知でしょうか。

え、今日は盆踊りの話じゃないの?
帰ろ。
そう思ったそこのアナタ、まあ、少し我慢して
聞いて下さい。

🔎『ととのう』ってなに??

【整う】ととのう
サウナ、水風呂、休憩を繰り返すことにより、心身ともに整った状態を指す。サウナハイ、サウナトランスともいわれ、瞑想効果や心身のバランス調整に効果的です。

野天湯元「湯快爽快」ちがさき HPより

以上の通り、サウナと水風呂を繰り返すことで
副交感神経が優位になり、『ほわ〜…』という
幸福感が得られるものです。

昨今の言葉でいえば、「チルする」に近い感覚
かもしれません。

私はよく、整うことを目的にサウナに行きますが、毎回整えるとは限りません。

その日の心身のコンディション、サウナの温度、水風呂の温度や滞在時間など、細かな条件が複雑に絡み合っているらしいのです。

理論上は、セックスに似てると思います。
サウナーの人達は、サウナとセックスしてるのかもしれない。
個人差があり、毎回整うという猛者もいれば、何度試しても整うことができないという人もいます。

私もこれまで2、3度、自分なりに"整い"の境地に達した事がありますが、
頭と身体がふわふわと浮遊して、時間の中に溶け込んでいくような感覚でした。

そして先日、盆踊りからの帰り道、整った時の感覚に近い心身の状態になったのです。

いや、サウナより、整ったかも。

私は、頭を休めるためにサウナに行っても、
つい考え事をしてしまうのですが、
盆踊り中は、余計なことを一切考えませんでした。

ある種の没頭によるトランス状態だったのだと
思うのですが、あの時、櫓の下では、何が起きていたのでしょうか。


※ここから先はある意味ネタバレを含みます。
盆踊り未経験の方は、個人の判断でお進み下さい。



②技能上達の3段階が体験できる。

少し硬い話になりますが、盆踊りに没頭した理由の一つは、ここにあると思います。

人間の運動技能は、一般に、

①認知的・意識的な段階
②感覚と運動の連合段階
③自動化の段階

以上の3ステップを踏んで上達するといわれています (Fitts&Posner, 1967)。

これらを盆踊りに当てはめて考えると…、


①認知的・意識的な段階(基本的動作を覚える)

盆踊り初挑戦の場合、はじめは他の人を見て、
見よう見まねで身体を動かします。

音頭のテンポがゆっくりなので、上手な人を見て真似れば、ギリギリ追いつける感じです。
いわば、踊りのシャドーイング(;英語を聞き
ながら真似して発音する通訳訓練法)状態。

動きは大きく「手振り」と「足取り」に分かれていますが、最初の頃は手振りを覚えても、
足取りがなぜか逆さになって縺れたりします。

『ワタシ、こんなんで混ざってていいのかしら…』と不安にもなりますが、上手い人達も
たまに間違えたりしているので、安心です。

盆踊りには、誰でも、いつからでも参加でき、
いつ抜けても良いような雰囲気があります。

また、同じ曲の間中はずっと、複数動作が
1セットになったものがループされています。
このため、身体を動かしているうちに、
自然と振りのパターンが分かってくるのです。

「あ?…あぁ?おぉ!こういう仕組ね!!分かった分かった。」と、まず、自力でパターンを
見つけた時のアハ体験がある。

そして、パターンは分かってきたのに、うまく
再現できないもどかしさも感じるでしょう。

第一の認知段階では,基本的なルールや知識、動作などが習得され、ルールの勘違いや粗大な間違いがしばしばみられる。

日本スポーツ協会,トレーニング論Ⅱより

まさに。

するすると嫋やかに踊る町内会のおば様達を
横目に、『クソッ、なんでああいう風に踊れないんだ…!』と、上達意欲も湧くのです。

②感覚と運動の連合段階(基本的動作の習得)

そうして反復練習を続けていると、ある瞬間、
手と足の動作がピタッとハマる時がきます。

『!!できた!!!』

この小さな成功体験、いつぶりでしょうか?

初めて自転車に乗れるようになった時。
初めてクロールの息継ぎがうまくいった瞬間。

そんな、自分でも忘れていたような、ノスタル
ジックな幸福の思い出が過ぎります。

連合段階では、基本的な動作の習得が進み、粗大な誤りが減少する。ただし、動作が充分に安定する段階には達していない。

日本スポーツ協会,トレーニング論Ⅱより

まさにまさに。
『!!できた!!!』の経験が積み重なって、
ぎこちなさが少しずつ削られていきます。

③自動化の段階(盆オドラー爆誕)

さらに踊り続けていくと、最早あまり考えずに
自然と身体が動くようになります。

最後の自動段階では、動作自体に注意を払うことなしに十分安定したパフォーマンスを達成できるようになる。

日本スポーツ協会,トレーニング論Ⅱより

流れるように動けるようになると、段々余裕が
出てきます。手首や足の差し出し方まで、工夫
しちゃったりして。

町内会のおば様にも負けてないんじゃないの?
え、ちょっと待って…。

『いま私、花魁道中みたいになってない?』

花魁道中かはさておき、自尊心は爆上がり。

横や後ろで新たに参入してきた若者が、自分を
手本にしている目線すら感じます。

オイ、初学者として参入したのに、いまや手本
にもなっているじゃないか!

小さな成功体験を積んだ盆オドラーが誕生し、
また新たな盆オドラーを育てる。

この小さな輪の中で、ミニマムな伝承すら
起きてるやんけ!!!

大興奮。


未経験だから味わえたことかもしれませんが、
以上、技能上達の3ステップを楽しめるという
ことも、盆踊りの魅力だと思いました。

③まとめと後書き。

本当はもっと書きたいことがあったのですが、

あまりに長くなりそうなので、一旦締めます。

盆踊りの輪に入っている間、私は見事に、
盆踊りのことしか考えていませんでした。

町内会の手練れおば様達を見て、格好いいと思いました。
盆踊り上手い人って、かっこよくない?
あんな風に踊れないかな…の一心で、夢中で、
没頭していたのです。

"どうしてこの流れで右足と右手を一緒に出せるんだろう?"等は考えましたが、
それも一瞬のことで、
本能的に手足を動かす時間が圧倒的に長かったと思います。

これは、ものすごいストレス解消になる。

前知識も準備も全く必要ない(むしろその方が
いい)し。

日本人のストレスコーピングに「盆踊り」も
入れれば良いのに…
と、思いました。

だからか分かりませんが、盆踊りに参加している人、全員ニコニコしてました。
確かに、不機嫌な人は『あヨイヨイ』なんて言ってる場合じゃないだろうしな。

でも、半信半疑で参加しているうちにご機嫌になっちゃうことはあるかも。
ご機嫌が先か、盆踊りが先か。

そして、盆踊りに必要な資格があるとしたらきっと、輪の中に入ってみるささやかな勇気だけではないでしょうか。

まだ人生で参加したことがないという方!

ぜひ、いちど行ってみては!?


〈出典〉
Fitts, P. M. and Posner, M. I. : Human Performance, 1-162, Belmont: Brooks/Cole, (1967).

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