マエダイ

図書館司書としての勤務を経て、現在は福祉の仕事に就いています。 アウトプットの練習、習…

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図書館司書としての勤務を経て、現在は福祉の仕事に就いています。 アウトプットの練習、習慣付けを目的として、読んだ本の感想を投稿しています。 「徒然、つじブログ」(現在は閉鎖)の管理人でした。 よろしくお願い致します。

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    読んだ本のレビュー、感想を載せています。一本800字程度てす。

最近の記事

『言語の本質』(中公新書) 言語学はエキサイティング

『言語の本質』(中公新書)  今井睦美・秋田喜美 著 中央公論新社・2023年5月   ここしばらく推理小説ばかり読んでいて、その反動のためか学術的な本を読みたくなった。そういった動機があり手に取ったのが『言語の本質』である。この本を選んだ理由としては、学生時代に受講していた言語学の講義が面白く記憶に残っていたからだ。また、普段読まないジャンルの本を読むことで、頭のトレーニングにもなるだろうという期待もあった。  言語学と聞くと何かとっつきにくいように思われるかもしれない。実

    • 『でぃすぺる』 好みの要素が詰まった小説

      『でぃすぺる』  今村 昌弘 著 文藝春秋・2023年9月    ミステリやホラーといった類の本は、ネタバレに配慮が必要なため紹介することがなかなか難しい。そんな制約がありながらも、今回紹介したい本は今村昌弘氏の新刊『でぃすぺる』である。  ちなみに私は、事前の情報を知らずに読み始めたいタイプである。例えば「二度読み必至」「衝撃のどんでん返し」というような文言が帯に書いてあることを見かけると、勘のいい読者であればどういうことを指しているのかを勘づいてしまうのではないかと思う。

      • 『夢見る帝国図書館』 「記憶」と「記録」を巡る物語

        『夢見る帝国図書館』 中島 京子 著 文藝春秋・2019年5月  中島京子の小説に共通するテーマとして「過去」が挙げられるように思う。本書でも、喜和子さんという一人の女性と帝国図書館にまつわる過去が大きなテーマになっている。    物語のあらすじはこうだ。  ある晴れた日、上野の国際子ども図書館のベンチの前で、「私」は喜和子さんという老年の女性と出会う。その後も、何度か顔を合わせることになり、緩やかに喜和子さんとの交流は続いていく。  しかし、しばらくたった時、「私」は喜和

        • 『悪魔の手毬唄』 現実を忘れ、空想の世界に遊べ 

          『悪魔の手毬唄』 横溝 正史 著 角川文庫・昭和46年7月  推理小説を紹介するときには、ある種の難しさが付きまとう。それは、ネタバレがないよう十分に配慮した上で紹介しなければならないからである。 よく本の帯に書かれているような「二度読み必須」「衝撃の結末」といった文言でも、勘の良い読者であればネタバレに近いものを察してしまう。そのため、内容に踏み込み過ぎないためには細心の注意が必要となってくる。  推理小説の場合、ネタバレしてはいけない部分と小説の魅力が密接に関わりあってい

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          12本

        記事

          『工場』非現実と現実の間

           『工場』 小山田 浩子 著  新潮文庫・2018年9月   以前から小山田浩子さんの小説は気になっていた。しかし、パラパラとページを繰ってみて、改行がほとんどない文面に臆していたのか、なかなか手に取ることができなかった。そんな中、図書館の棚でたまたま文庫版を見つけ、ようやく読むことになったのが『工場』である。    作中の語り手は、「工場」で働くことになった牛山佳子、古笛青年、牛山佳子の兄の3人である。牛山佳子は契約社員としてシュレッダーでひたすら紙を粉砕し続け、古笛青年は

          『工場』非現実と現実の間

          『一寸先の闇 澤村伊智 怪談掌編集』 とにかく面白い小説がここにある

          『一寸先の闇 澤村伊智 怪談掌編集』  澤村伊智 著 宝島社・2023年7月  澤村伊智の書く小説の魅力。それは「面白いエンターテインメント小説を読む喜び」を十二分に味わえること、それに尽きるのではないかと思う。  ストーリー、キャラクター、テーマ、小説に施した仕掛け、そういった要素が高いレベルで共存している。とにかく、先が気になってどんどん読んでしまう、そして読み終わった後には大きな満足感が得られる。自分にとって、澤村伊智はそんな作家である。    さて、『一寸先の闇 澤

          『一寸先の闇 澤村伊智 怪談掌編集』 とにかく面白い小説がここにある

          『TUGUMI』 こうして私は、山本屋最後の夏にむかうことになった

          『TUGUMI』  吉本ばなな著 中公文庫・1992年3月 『TUGUMI』が出版されたのは1989年。吉本ばななの小説の中でもデビューしてから間もない頃の作である。    海辺の小さな町で育った主人公のまりあと、従姉妹のつぐみ。まりあは大学進学を機に上京したが、二人が生まれ育った旅館が廃業することになり、夏休みに帰省をする。故郷でひと夏を過ごすうちに、まりあとつぐみは恭一という魅力的な男の子と出会う…。  小説のあらすじ自体は、けっこうオーソドックスだ。しかし、読後感とし

          『TUGUMI』 こうして私は、山本屋最後の夏にむかうことになった

          『知的生産の技術』 もっと早く読んでおけばよかった…

          『知的生産の技術』  梅棹忠男著 岩波新書・1969年7月  読もう読もうと思っていて、書店で購入したり、図書館で借りてみたりと手元に置くまではしてみるのだけども、そこから読み始めることができないといった類の本がある。読み始めると、面白くすらすらと読み終えてしまうことが多い。しかし、読み始めるには、なぜか不思議と「よっこらしょ」と重い腰を上げなければいけない。    前置きが長くなってしまったが、『知的生産の技術』もそういった本の中の一冊であった。岩波新書の青版であること、

          『知的生産の技術』 もっと早く読んでおけばよかった…

          『水車小屋のネネ』 日々を誠実に生きていくということ

           津村記久子の小説に含まれる大きなテーマとして、「弱者が不当に扱われていることへの抗議」があるのではないかと思う。本作もそういったテーマとともに、苦しい状況に置かれた主人公姉妹が、日々を誠実に生きていくことで、自分たち自身の人生を生きていく姿が描かれている。    主人公の山下理佐・律の姉妹は、実母との三人暮らしであった。しかし、理佐は短大の入学金を母の恋人の事業資金に回され、律は母の恋人から暴力を受けている。そのことをきっかけに、姉妹は遠くの町での住み込みの働き口を見つけ、

          『水車小屋のネネ』 日々を誠実に生きていくということ

          『スモールトーク』 車好きはどんなことを考えて車に接しているのか?

           私自身は田舎育ちであるにもかかわらず、車に対しての関心がほとんどない。運転免許を取得した時は30歳を優に過ぎていたし、実家に帰省した時に親が乗っている車が変わっていても気が付かない。そもそも乗っている車種を把握していない。そして「車を運転したい」「車を所有したい」といった欲が非常に希薄なのである。  そんな自分がこの本を読むことで、車好きはどのように車を見ているのか、その一端が分かったように思う。  『スモールトーク』は、車をテーマにした小説である。本自体は200ページに

          『スモールトーク』 車好きはどんなことを考えて車に接しているのか?

          『すべてのことばはメッセージ 小説ユーミン』 ため息が出るくらい、都会的で煌びやかな青春

          『すべてのことばはメッセージ 小説ユーミン』  山内マリコ著 マガジンハウス・2022年10月  小説ユーミンとサブタイトルにある通り、松任谷由実の生い立ちからデビューまでを描いた一冊。松任谷由実の幼少期からデビューするまで、その時代の空気感を存分に感じることができた一冊だった。  この本を読むと、松任谷由実は東京の文化的な環境で育ってきたことがよくわかる。  八王子の呉服屋の次女として育ち、幼い頃から母親と様々な舞台を観に行く機会があり、ピアノや三味線といった様々な習い

          『すべてのことばはメッセージ 小説ユーミン』 ため息が出るくらい、都会的で煌びやかな青春

          『マチルダは小さな大天才』 子どもであることはしんどい。

           『マチルダは小さな大天才』 ロアルド・ダール著・クェンティン・ブレイク絵・宮下嶺夫訳  評論社・2005年9月 この本の内容をシンプルに言ってしまうと、非常に頭がいい聡明な少女マチルダが、自分自身の前に立ちはだかる悪い大人をやっつけていく話である。  娘であるマチルダの教育を放棄し、あくどい手段で金儲けをしているワームウッド夫妻は現代の言葉でいう「毒親」である。そして、マチルダが通う学校長のトランチブルは、学校に通う子どもたちを暴力で抑えつけ、支配している。  そういった

          『マチルダは小さな大天才』 子どもであることはしんどい。