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『知的生産の技術』 もっと早く読んでおけばよかった…

『知的生産の技術』 
梅棹忠男著
岩波新書・1969年7月

 読もう読もうと思っていて、書店で購入したり、図書館で借りてみたりと手元に置くまではしてみるのだけども、そこから読み始めることができないといった類の本がある。読み始めると、面白くすらすらと読み終えてしまうことが多い。しかし、読み始めるには、なぜか不思議と「よっこらしょ」と重い腰を上げなければいけない。
 
 前置きが長くなってしまったが、『知的生産の技術』もそういった本の中の一冊であった。岩波新書の青版であること、タイトルに「知的生産」という難しそうな文言が入っていたことが、長く積読になっていた原因なのでないかと思う。
 
 この本には、以下のような「知的生産」を行うための技術(研究や勉強を行う上でのテクニック)が書かれている。
・日常生活の中で得た着想を記録・整理する方法
・書類の整理の仕方
・読書記録のつけ方、本の読み方
・原稿・文章の書くときの心構え
 
 面白い点は、「記憶の能力が、わたしの場合、まったくあてにならないのである」(本書「1」29p)と本文中にあるように、平凡な人間が「知的生産」を行うことを前提として書かれていることである。個人の能力に過度な幻想を抱かず、平凡な人間がどのように「知的生産」を行っていくかという視点で書かれている。
 
 この本に書かれていることは、一般的なビジネス本に書かれていることと通じるものがあるのではないか。仕事の能率を上げるために、(専門的な知識とは別に)時間の使い方・整理整頓の方法、段取りの仕方といったノウハウがある。同じように、学問の領域でも研究や勉強をうまく進めるための工夫が必要なのである。
 
 ―――「知的生産」についても、うまく進めていくためのコツがある。
 
そのことに気付けたことがこの本を読んでの最大の収穫だった。試行錯誤しながら、自分の中での「知的生産の技術」を確立させていこうと思う。【終】


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