『言語の本質』(中公新書) 言語学はエキサイティング
『言語の本質』(中公新書)
今井睦美・秋田喜美 著
中央公論新社・2023年5月
ここしばらく推理小説ばかり読んでいて、その反動のためか学術的な本を読みたくなった。そういった動機があり手に取ったのが『言語の本質』である。この本を選んだ理由としては、学生時代に受講していた言語学の講義が面白く記憶に残っていたからだ。また、普段読まないジャンルの本を読むことで、頭のトレーニングにもなるだろうという期待もあった。
言語学と聞くと何かとっつきにくいように思われるかもしれない。実際、抽象的な話も多く難しく感じることもあった。ただ、書かれていた内容は知的好奇心を存分に刺激されるものであった。
この本は、著者の二人が「オノマトペとは何か?」という問いを出発点として、記号接地問題(注1)、子どもが言語を習得していくプロセス、アブダクション(仮説形成)推論といった内容に触れながら、「言語の本質」に迫っていく内容となっている。
そして、考察の中で結論付けられた「言語の本質」が終章で提示される。本書を読み進めていく過程は、まさに言語を巡る刺激的な旅であった。
言語を使うー。日々の生活の中で無意識に行っていることである。ただ、その言語を理論的に説明しようとすると、極めて奥が深い問題なのだと痛感した。だからこそ、この本を読んだことをきっかっけとして、日々の生活に中で使われている言葉に目を向け、理論的に考えてみようと思った。
(注1)認知科学者スティーブン・ハルナッドが」提唱した問題。ことばの対象について、身体的な経験を持たずして本当に意味を理解できるのか? という問い。
【終】
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