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『スモールトーク』 車好きはどんなことを考えて車に接しているのか?

 私自身は田舎育ちであるにもかかわらず、車に対しての関心がほとんどない。運転免許を取得した時は30歳を優に過ぎていたし、実家に帰省した時に親が乗っている車が変わっていても気が付かない。そもそも乗っている車種を把握していない。そして「車を運転したい」「車を所有したい」といった欲が非常に希薄なのである。
 そんな自分がこの本を読むことで、車好きはどのように車を見ているのか、その一端が分かったように思う。

 『スモールトーク』は、車をテーマにした小説である。本自体は200ページに満たないものの、著者の車に対してのこだわりがしっかりと描かれている一冊に感じられる。
 絵描きをしている主人公のもとに、昔の男が現れる。昔の男は、会うたびに次から次へと新しい車に乗ってやってくる…。(車種はジャガー、アストンマーチン、バンキッシュ、アルファロメロ等。車に詳しくない自分でも聞いたことのある名前が並んでいる)。あらすじとしてはシンプルであるものの、登場する車のディティールが細かく描かれ、それがストーリーとも微妙に関わりあっている。

 また併録されているエッセイでは、著者の会社員時代の車にまつわるエピソードが書かれている。作者の車に対する思い入れと、その仕事ぶりの一旦を垣間見ることができる。著者の仕事についての件では、仕事をするということのリアリティーを感じることができる。

 そもそも、車に対しての関心の有無はどこで違いが出るのであろうか? 男女、田舎育ちか都会育ちか、理系と文系か、合理性を求めるのか情緒性を求めるのか、色々と考えてはみたものの答えが見えない。なかなか奥が深い問題であるように思われる。(終)

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