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『悪魔の手毬唄』 現実を忘れ、空想の世界に遊べ 

『悪魔の手毬唄』
横溝 正史 著
角川文庫・昭和46年7月
 推理小説を紹介するときには、ある種の難しさが付きまとう。それは、ネタバレがないよう十分に配慮した上で紹介しなければならないからである。
よく本の帯に書かれているような「二度読み必須」「衝撃の結末」といった文言でも、勘の良い読者であればネタバレに近いものを察してしまう。そのため、内容に踏み込み過ぎないためには細心の注意が必要となってくる。
 推理小説の場合、ネタバレしてはいけない部分と小説の魅力が密接に関わりあっていることも多いため、その部分に触れずに魅力を伝えるということはなかなか難しい。
 
 そういった点に注意をしつつ、今回は横溝正史の『悪魔の手毬唄』を取り上げたい。ただ、『悪魔の手毬唄』については、簡単なあらすじを紹介しただけでも読みたくなる要素は多いのではないかと思う。以下があらすじである。
 岡山県の鬼首(おにこべ)村に静養に訪れた金田一耕助は、村を襲う連続殺人事件に巻き込まれる。鬼首(おにこべ)村に伝わる手毬唄の歌詞に見立てる形で次々と人が殺されていく中で、20年前に鬼首村で起こった事件とのつながりが浮かび上がってくる…。
 
 鬼首(おにこべ)村というおどろおどろしい名前、地方の寒村という舞台設定、手毬唄の歌詞の通りに人が殺されていくというストーリー等、横溝正史ならではの雰囲気を味わうことができる。そのため、個人的に強くお勧めしたい横溝正史作品である。
 
 読書をすることが日々のストレス発散になっているという人もいるかと思う。しかし、本の内容が実生活に関りがあるものの場合は、なかなかストレスの発散にならないこともあるかと思う。その点、横溝正史の推理小説は現実から離れるという読書の醍醐味を十分に味わうことができるものなのではないだろうか。
横溝正史、金田一耕助と聞くと、一昔前の小説だと思われる向きもあるだろう。しかし、文書は読みやすく、令和の今に読んでも非常に面白く読むことができる。現実から離れ空想の世界に遊びたいという方は、ぜひとも横溝正史の推理小説を読んでほしいと思う。【終】

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