見出し画像

「Rent」のAnthony Rappの一人ミュージカル "Without You" - ストーリー紹介 | ブロードウェイ観劇ガイド #15

2021年からアメリカ留学中(NY在住)のトップです。

TelechargeのLotteryチケット($40)に当選し、「Rent」のオリジナル・キャストAnthony Rappの伝記的ミュージカル"Without You"を観てきました。Anthony Rappによる同名のベストセラーを原作に、Anthony Rapp自身がミュージカル化し、自身が主演するという一人ミュージカルです。

観劇前に予習して100%楽しみたいという方や、概要を理解してから行くかどうか決めたいといった方のために、簡単にストーリーを紹介します。

内容が理解できるか不安で観にいく前に予習したい、または観てきたけどストーリーを復習したいという方を読み手として想定していますが、ネタバレですので、事前情報を入れずに観劇したいという方は読まないことをおすすめします

個人的には、英語ネイティブではないということもあり、観劇前にはかなり時間をかけて予習をしていくタイプなのですが、その一つの理由として、ショーによっては、ハイコンテクスト(文化的共通理解を前提としたコミュニケーション)なものがあるという点があげられます。

"Without You"は、①Anthony Rappと"Rent"(あるいは作者のJonathan Larson)とのストーリーと、②Anthony Rappと彼の母親とストーリーを軸としたストーリーで、特に前者が核心なので、"Rent"に関する知識がないと、"Without You"のストーリーを理解することが難しくなります。

特に、"Without You"で登場する曲の多くは、"Rent"のミュージカル・ナンバーで、"Rent"のどのようなシーンで使われているか知っていないと、"Without You"におけるコンテクストも理解できないと思われます。

なお、オフ・ブロードウェイではありますが、TelechargeでLotteryを行なっていますので、興味がある方はこちらを参考にエントリーしてください。

1. ミュージカル「Rent」について

"Rent"は、Jonathan Larsonが、作詞・作曲・脚本を手掛けたミュージカルで、1996年からOff Broadwayで公演を始め、同年Broadwayに引越し、Nederlander Theaterで、2008年まで12年間公演を続けました。

当時としては前衛的だった薬物、エイズ、LGBTQ+などをテーマとして扱っていることに加え、作者のJonathan Larsonが、プレビュー公演の前日(当日未明)に突然死したというストーリー性も相まって伝説的な人気となり、RENT-headsと呼ばれる熱狂的なファン(もともとは、$20のlotteryチケットを購入するために早朝から並んだ若者たちが語源)を生み出したほか、ブロードウェイでの5,213公演は、第11位のロング・ランとなっています。

ミュージカル・ナンバーも有名な曲が多く、"Seasons of Love"は、"Rent"を観たことがない方でも聞いたことがあるのではないでしょうか。

Anthony Rapp以外のキャストでは、アナと雪の女王(Frozen)でElsa役を務めたIdina Menzelが、主要キャラクターの一人Maureen Johnson役のオリジナル・キャストを務めています。Idina Menzelは、RentのMaureen Johnson役の後、WickedのElphaba(西の悪い魔女)のオリジナル・キャストを務めるなど、まさにRentをきっかけにスターダムを駆け上がりました。

そんなRentですが、(ほぼ)オリジナル・キャストで映画化されており、また、ブロードウェイでの最終公演も映像化されていますので、"Rent"を知らない方は、"Without You"を観にいく前にいずれかを観ておくことをお勧めします(最終公演の方はAnthony Rappが出演していないので、映画版の方がお勧めです)。

Rent(映画版)

2. "Without You"のあらすじ

Anthony Rappは、イリノイ州ジョリエットで生まれ育ち、幼少時代から子役として活躍。当時は、俳優としての成功を夢見てニューヨークに引越してから5年、俳優としては鳴かず飛ばずで、Starbucksで時給7ドルでバイトをしていた。

"Without You"は、Anthonyが、New York Theatre Workshopで行われているオーディションに20分遅刻したシーンから始まる。なんとかオーディションに参加できたAnthonyは、R.E.M.の"Losing My Religion"と、Rentのテーマ曲"Rent"を歌い、WorkshopでのMark Cohenの座を射止める("Finale B"/"Losing My Religion"/"Rent")。

4週間のWorkshopでの給与は週給300ドルであったものの、Anthonyは久々の役者としての仕事に就けたことを、Anthonyを応援し続けてくれてている母親(イリノイ州ジョリエットで暮らしている)に嬉々として電話する("Carry Me Home")。

最初のリハーサルの日、DirectorのMichael Greifは、"Even though it takes place at a funeral, it's very much about celebration."と説明し、Act 2の最初の曲"Seasons of Love"の練習を開始した("Seasons of Love")。Anthonyは家に帰り、彼の担当曲をデモテープで聴き、Act 1の最後の曲"La Vie Bohème"が気に入る。Workshopは大成功で、10公演を終えたところでSold Outとなった("La Vie Bohème")。

Anthonyの母親は田舎暮らしが好きで、同年のWinter vacationはWisconsin州のロッジで1週間過ごしたが、Anthonyは彼女がひどく弱っていると感じた。その2年前、AnthonyがNYで寝ている間に、Anthonyの母親は気を失って倒れ、大量の輸血を必要とするほどの手術を行ったのだ。回復は驚異的で、数週間後には看護師としての仕事に復帰したが、原因はガンだということが分かった。Anthonyの母親は、家、車など、何にでも名前を付けていたが、ガン腫瘍にも「Wild Bill」という名前を付けていた("Wild Bill")。

その後2年間、3か月ごとに定期検診を受けたが、転移は見つからなかった。Wisconsinのロッジでの再会から1か月後、Anthonyは母親から、転移が見つかり、手術を受ける旨の電話を受ける。Anthonyは病院に向かうが、全ての切除は無理だったと医師から伝えられたと母親から聞く。

AnthonyはNYに戻り、仕事で忙しくしていたところ、Jonathanから連絡を受け、オフ・ブロードウェイでの本公演が決まったこと、ローカルのオペラ劇団の前で"Rent"のいくつかの曲を披露することになったので参加してほしいことを告げられる。Jonathanは、Giacomo Pucciniのオペラ"La Bohème"やBilly Joel/Elton John/The Whoが好きで、全ての影響を受けた作品を作りたかったこと、数年前に数人の友人からHIV陽性であることを告げられ、何人かは亡くなったことからRentを書くことに決めたことなどを説明する("Another Day")。

その年の夏、Anthonyは母親のサポートのためジョリエットに帰ったが、母親との間で、隠し事や未解決のことはなしにしようと約束する。

Anthonyは、彼のアパートで自身の誕生日パーティーを開き、Jonathanも参加した。そこで友人から、Jonathanが、"I am the future of musical theater."と真剣に言っていたと聞かされる。

オフ・ブロードウェイ公演へ向けたリハーサル開始の前の日、Jonathanは食事会を開き、Roger役のAdam Pascalを紹介される。また、Jonathanは、クリスマスに満足な食事が得られない人々に向けたチャリティーを行なってきたことなどを説明する。

Anthonyは、MichaelとCynthia O'Nealが主催するNPO「Friends In Deed」のゲスト・スピーカーとして招かれた。Cynthiaは、QOLは環境によって変わるものではなく、AIDS患者であっても人間関係や愛などが変わるわけではないと説明する。Anthonyが悪いことが起きた場合はどうすれば良いのかと質問すると、Cynthiaは彼女の夫を亡くしたこと、そこから立ち直った経験を語った。

リハーサルは続き、AnthonyとAdamが"What You Own"を歌っていた際、劇場の従業員からJonathanが倒れたことを聞く("What You Own")。数日後、Jonathanは顔色が悪く見えたものの、衣装を着てのリハーサルに参加できるまでに回復していた。リハーサル終了後、AnthonyはJonathanの元に駆け寄りたかったが、既にJonathanは大勢の人に囲まれており、その後New York Timesの取材を受け始めたので、その日Jonathanと話すことは諦め、帰宅した。

翌日、Anthonyが起床し、リハーサルの大成功を祝福するメッセージを期待して電話の留守電を再生したところ、劇場からすぐにコールバックするようにというメッセージが残されていたのみであった。劇場との電話では、Jonathanが亡くなったことを伝えられる。

Anthonyは劇場に向かった。キャストやスタッフが静まり返る中、Michaelが、Jonathanの両親や友人がNew Mexico州アルバカーキから来ることを伝え、その日のプレビュー公演をキャンセルし、彼らのために公演を行うこと、テクニカル・イシューを避けるため、テーブルに座っての読み合わせの形で行うことを提案する。

Jonathanの両親らが到着し、公演が開始する("Tune Up #1")。観客は沸き、"La Vie Bohème"のシーンで、通常の演出と同じくAnthonyがテーブルに乗って歌い出すと、他のキャストもそれに続いた("One Song Glory"/"Halloween")。Rentの終盤、Anthony(Mark)が一人になるシーンで、Anthonyは自分の状況と重なり感傷的になるが、公演は無事フィナーレを迎える("Finale B")。フィナーレの後、Anthonyらは舞台裏に戻るが、観客が静まり返っていることに気付く。長い沈黙が続いた後、一人の観客の"Thank you, Jonathan Larson!"という声で沈黙が破られた。

Rentは、批評家からの高評価も受け、Jonathanはプリツカー賞を受賞し、ブロードウェイでの公演も決まった。Anthonyは忙しくしており、あまり母親の元に帰れていなかったが、ブロードウェイでの公演初日を観に来ることができた。おそらく初めてで、最後の機会になることを意識し、Anthonyは可能な限り母親に向けて全ての歌を歌った。母親がスタンディング・オベーションに参加していたのを見たAnthonyは感動する。ブロードウェイでの公演は順調にスタートし、全ての公演が完売(standing room only)となっていた。

Anthonyは、18歳のときに初めて母親にセクシャリティをカミングアウトした際、受け入れてもらえなかったことを思い出す。Anthonyが帰省した際、母親に対し、AnthonyのBoyfriendのToddのことを話したが、母親は今回は受け入れる。

その年の夏、母親から骨にまで転移していること、手術を受けることを伝えられ、付き添いのために帰省する。母親から過去に聞いた話を思い出したAnthonyは、母親と話合い、治療をやめて残りの人生をホスピスで穏やかに過ごすことを決める("Visits to You")。

ホスピスでは、母親が作成したAnthonyのアルバムを眺めるなどして過ごす(Always)。徐々に弱っていく母親を見て、Anthonyは傍に残ることを決めたが、数週間後、NYに戻った。妹から母親が危篤との連絡を受け、ジョリエットに向かうことを決めたが、空港からホスピスに電話した際、まさに亡くなったところだと聞く("That Is Not You")。

母親の葬式では、母親の言葉に従い、Anthonyはレクリエムとして"Without You"を歌う("Without You"/"Seasons of Love")。


いかがでしたでしょうか。励みになりますので、面白かった・参考になったという方は、是非、スキ、コメント、フォローをお願いします!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?