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「地方消滅」回避のための『人づくり・繋がりづくり・地域づくり』

今回は、人口減少を向かえる日本の課題を改めて整理し「社会教育」を基盤とした「人づくり・繋がりづくり・地域づくり」に関する政策についてまとめ、

それらを実践している事例を紹介し、考察を加えます。


■「地方消滅」という未来

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日本創生会議「人口再生産力に着目した市区町村別将来推計人口について」によれば、地方から大都市圏(特に東京)への人口移動が収束しないと仮定した場合、

人口の「再生産力」を示す若年層(20~39歳)人口が2040年までに50%以上減少する市町村は、約1,800自治体のうち896(なんと全体の49.8%)に上る推計が出ています。

さらに、このうち人口が1万人を切り、「消滅可能性」が高い市町村は523(全体の29.1%)と推計されています。

このように、消滅可能性のある市町村は、これから人口減少、高齢化、担い手不足といった負のスパイラルに陥っていく可能性があります。

これらの危機感について記されている書籍をご参考までにご紹介いたします。

一方で、国は人口減少時代の新しい地域づくりに向け『社会教育』の振興を進めています。


■社会教育と生涯学習はどう違うのか?

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社会教育は、学校教育・家庭教育にならぶ領域にあります。

また「社会教育」と「生涯学習」の意味も異なります。

双方の意味を「教育基本法」および「社会教育法」をもとに以下のように整理しました。

〇生涯学習とは
 自己の充実や生活の向上のために、人生の各段での課題や必要に応じて、あらゆる場所、時間、方法により学習者が自発的に行う自由で広範な学習。

〇社会教育とは
 広く社会において行われる組織的な教育活動(学校教育・家庭教育を除く。)

つまり、

生涯学習個人的な課題を解決する『学習』

社会教育は社会に対し組織的に行う『教育活動』

と言えることができるでしょう。

そして、社会教育はこれまで行政が担うものとされていましたが、現在は、多様なプレイヤー(NPO、大学、企業によるCSR)が出現したことをきっかけに

今後は、それら多様なプレイヤーを巻き込む『ネットワーク型行政』として行政は社会教育を再構築する動きとなっています。


■人づくり・繋がりづくり・地域づくり


中央教育審議会(2018)「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について(答申)」によると、新たな社会教育の方向性を以下の通り示しています。

①ネットワーク型行政の実質化
社会教育行政担当部局で完結させず、首長(市長等)、NPO、大学、企業等と幅広く連携、協働

②住民の主体的な参加のためのきっかけづくり

社会的に孤立しがちな人々も含め、より多くの住民の主体的な参加を得られるような方策を工夫し強化

③地域の学びと活動を活性化する人材の活躍

学びや活動と参加者をつなぎ、地域の学びと活動を活性化する多様な人材の活躍を後押し

といったように『開かれ、つながる社会教育の実現』を目的に、これら大きな動きがあることが分かりました。

多様なプレイヤーや人材との連携・協働をキーとして、住民の参加を促進するといった、切れ目のない教育が期待されているのかもしれません。

続けて、それらを支える社会教育施設の今後の在り方にも触れています。

〇公民館:
 地域コミュニティの維持と持続的な発展を推進するセンター的役割、地域の防災拠点
〇図書館:
 他部局と連携した個人のスキルアップや就業等の支援、住民のニーズに対応できる情報拠点
〇博物館:
 学校における学習内容に即した展示・教育事業の実施、観光振興や国際交流の拠点

といったように、特に若い人がスルーしがちな、これら社会教育施設は皆さんの暮らしを支えていく上で、『人づくり・繋がりづくり・地域づくりの拠点』として役割を担い、そして期待をされているのです。


■各機関による取り組み事例


〇高校を核とした『地域人教育』(長野県)

長野県立飯出OIDE長姫高校と飯田市(公民館)と松本大学の3者がパートナーシップ協定を締結し、高校生が地域課題を主体的に考える「地域人教育」の実施を支援。

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(出典)「高校改革による地方創生をめざして」より

ここでは「地域人教育」を目的として、3者が共同し、高校のカリキュラムに「ビジネス基礎、広報と販売促進、課題研究」を展開し、人材育成サイクルを構築することで、社会の担い手となる若者の育成に力をいれています。


「ふるさとふれあい塾」旅館や宿泊施設を『学びの場』に~(愛媛県)

中央教育審議会生涯学習分科会資料」において社会教育の「場」の拡張と、関係者の「三方よし(トリプルwin)」につながる取り組みとして

旅館や宿泊施設も「学びの場」「生涯学習の拠点」になり得ると再評価し、課題解決へ向けて期待もされているようです。

産官学の連携により、松本大学の教員をはじめ博物館や企業担当者といった幅広い講師を招き地元の歴史、文化、観光といった分野を公開講座として実施しています。

結果として、『郷土愛の醸成』『市民と学生が議論する場』となり、さらには間接的に起業の実利にも繋げ、三方よしの関係を築いていることが考えられます。

 

■社会教育の必要性


以上、人口減少から地域の担い手不足といった課題に対し、社会教育が担う役割について触れてきました。

一方で、行財政改革等において社会教育経費は削減がされやすい部局でもあります。

しかし、学校教育を終えた後、人はどこで学び、どこで繋がればよいのでしょうか?今ならオンラインで簡単に繋がれますが、『地域特有の課題』となればそう簡単にはいかないでしょう。

生涯学習については、「越境学習のススメ」記事で事例を取り上げ、『生涯学習』の必要性を説きました。

そうはいっても、あくまで生涯学習は個人の課題解決であることから、社会の課題については、社会教育が担う必要があります。

そして、人口減少やSociety 5.0など、社会は待ったなしの状態で変化しています。それがあまりにも早いため、学校や既存のプログラムでは追い付くのがやっとの状態ともいえることから、

NPO法人SOMAの代表理事である瀬戸昌宣さんは、

『色々な形で子どもも、大人も学べる場所が必要』と考え、『あこ』という社会教育施設をつくったそうです。

このような背景は、変化の激しい現代だからこそ、とも考えられます。

そのため、これら様々な課題に対し、今後は、

多様なプレイヤー(行政・大学・企業・NPOなど)が連携し、社会教育を構築することで、『人づくり・繋がりづくり・地域づくり』のエコシステムが生まれ、

郷土愛の精神(人づくり)、対話の機会(繋がりづくり)、地域の担い手(地域づくり)が育ち、『地方消滅の回避』ひいては『地方創生』へと繋がるのではないでしょうか。


最後までお読みいいただき、ありがとうございました。
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