EAPは本当に「復職支援」なのか ~ある休職者の感想 その1~

たまにネットで人様の休職体験談を読むが、「EAP」に関する言及が見当たらないことに気付いた。
さらに、サービス利用の感想はその多くが企業側の視点である。
そこで、今回はその「EAP」に関する個人的な感想を書いてみることにする。


なお予め断っておくが、以下に書く内容は個人的な感想であり、すべての「EAP」に当てはまるとは限らない。
また、今後感想が変わるかもしれないので、そこにもご注意を。

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「EAP」とは何か。
とある書籍では、以下のように定義されている。

EAPはEmployee Assistance Program(従業員支援プログラム)の略称です。
(中略)
このサービスでは、企業に対しては、職場組織が生産性に関する問題を提議することを援助し、社員に対しては、仕事上のパフォーマンスに影響を与えるさまざまな個人的な問題(健康問題、結婚・家庭問題、経済問題、アルコール・ドラッグ中毒、法的問題、対人関係、ストレスなど)を見つけ、解決する手助けをします。
- 「メンタルヘルス・マネジメント 検定試験 公式テキスト Ⅱ種 ラインケアコース 第4版」より

僕は5月からお休みしているが、体調が悪くなった朝に駆け込み寺のように電話を掛けたのが「EPA」である。
幸いにも会社がとあるEAPサービスと提携していたため、すんなりと電話相談→医療機関受診のフローを取ることができた。
普通に医療機関に電話していたら予約が取れなかったかもしれないので、この対応はありがたかった。

しかし、問題はここからである。
端的に言ってしまえば、今、僕の復職判断は会社でも産業医でもなく、EAPに委ねられている(ちなみに産業医は会ったこともない)。
会社としてもEAPに従うしかない構造が出来上がり、EAPの意向=会社の意向になる。

さらに、会社とEAPの連携も、(僕から見たら)お世辞にも良いとは言えない。
結局は自分が仲介役となって両者を繋ぐしかない場面が散見された。
場合によってはそこに心療内科の主治医もかかわってくるので、三者三様の主張を取りまとめなければいけない。
ぶっちゃけ、仕事よりも大変である。

ある程度症状が回復して日常生活に問題が無くなってくると、「生活記録表」なるものを書いて提出することになるが、かなり細かいところまで突っ込まれる。
EAPは医療機関ではなく、あくまで「企業と契約した復職支援サービス」なので、僕のような休職者の日常生活は、勤務と同等の活動レベルが求められる。
したがって、「決まった時間に、決まった場所にいる」ことができていないと、そこを細かく指摘される。
例えば、ちょっと体調が優れなくて気分転換に公園に行ってもアウトだし、小さな我が子を思って平日に混雑を避けて家族とお出かけしようものなら、それは勤務ではないと叱られるわけだ(少なくとも自分の場合はそうだった。これには「そこまで細かく言われる筋合いはない」と妻も怒り心頭)。

最近分かったことであるが、EAPはカウンセリングサービスの提供者ではないのである。
どちらかというと、復職に向けた生活指導という側面が強い。
支援ではなく、指導である。
上司に「ちゃんと会社に来なさい」と言われているような感覚である。

このように、正直なところEAPとの面談はとてもストレスフルであり、何が正しくて何が間違っているのか、やっているうちによくわからなくなってくる。
会社がEAPに一任してしまっているため、指示系統の重要さは「EAP>会社」になり、EAPに従わないといつまでも復職できない構造にすり替わる。
リワークに行くかめちゃくちゃ悩んでいた僕だが、正直今は早いとこリワークに行ってEAPの面談から解放されたいとも思っている。
(まぁリワーク先もリワーク先で、いろいろとグチグチ言われるような気もしているが)

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結論から言うと、うつ症状が見られた場合のEAPの活用はオススメしない。
彼らは「社員をどうやって職場に適合させるか」を主眼に活動しているので、こちらの事情や意志はあまり汲んでもらえない。
使えるリソースは医療機関であれ家族の援助であれ、なんでもフル活用して復帰させようとする。
それでいて、「勤務やストレスに耐えられるか」が常に第一になるため、自身や家族にかかる負担もかなり大きい。
正直に言って、普通に働いていたほうが楽である。

(こう考えると、“復職支援”という立ち位置はかなり疑わしい。「そういうストレスにも耐えられるかどうか」を見ているのだろうが、そういう見方もEAPとの面談で醸成され疑心暗鬼になっていくのだ。)


・・・ここからは読み手への、僕の稚拙なアドバイス。
もし体調が悪くなって動けなくなった場合は、その日の出勤を諦めて自分や家族で、その日や翌日に受診可能な医療機関を探したほうがよい。
この段階では、ある程度評判に目を瞑って近所のクリニックに行くことを勧めたい(医者なんて後からいくらでも変えられるし、最初に診てもらった医師がいつまでもそこにいるとは限らないからだ)。
どうしても医療機関が見つからない場合は、最後の切り札としてEAPを使うのもよいかもしれないが、ここで書いたような厄介ごとに巻き込まれることを覚悟しなければならないだろう。

・・・そう考えると、会社が「気軽にEAPに相談してください」というスタンスでいるのも甚だ疑問であるし、おそらく僕の感想を見聞きした者はEAPを使おうとは思わないだろう(正直自分も再度使おうとは決して思わない)。
こういった対応が、結局メンタル不調者の居場所をなくしていることに、会社は気付かないのが、何とも皮肉である。

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(その2は以下よりお読みくださいませ)
https://note.mu/dachiyo47/n/n01e3accb96f2

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