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幸せな職員室のつくり方〜ハッピーシェアから始めるウェルビーイングな学校改革<前編>

昨今、教育現場でも「ウェルビーイング」の大切さが謳われていますが、ウェルビーイングとは、いったいなんなのでしょうか?

現代の教育現場には「課題」が山積みです。
生徒の減少、教員不足、保護者のサポートや地域連携など外部時間の増加、評価・管理の雑務の増加、部活問題・・・。働き方改革が叫ばれていますが、大切にしたい生徒との時間に線を引き業務効率をはかることに葛藤している先生方も多く、先生自身が疲弊していっている状況です。

では、「ウェルビーイングな学校」は、どのようにしてつくっていったらいいのでしょう?

***

2023年の秋から今春にかけて開催したWell-being Community (WBC) 講座。お互いのウェルビーイングをじっくり育み伴走し合うコミュニティ型のプログラムに、愛知県名古屋市にある大同高校の6名の先生方がチームでご参加いただきました。

課題を抱え、どうにかしたい!という熱い思いをもって、Well-being Communityの多様な仲間たちと一緒に、およそ4か月間伴走し合いました。

こちらのnoteでは、実際にWell-being Communityに参加してみて、どんなことを感じたのか、変化があったのか、今にどうつながっているのかなどなど、先生目線でのお話しを伺ってまいります!


<チーム大同高校としてWBCniご参加いただいたみなさま>

それぞれのお好きなものを取り入れて生成AIで作成したイラストで、先生方のお人柄が伝わりますように〜🎶

みなさんお忙しいなか、合間を縫ってインタビューにご協力いただきました!チームメンバーそれぞれが感じた変化や学校での取り組みなど、手触り感のあるお話しが詰まった内容となっております。
教育に携わる多くの方々にお読みいただけたら幸いです。

(聞き手:DAE Masae)

※本記事は、2024年7月に実施したインタビューをもとに作成しております。



一人ひとりの「自己肯定感」を上げるためには、、、


大同高校が抱えていた課題と背景

DAE
大同高校さんとは、2023年の春に、教員研修をご担当されているM先生にオファーをいただいてからのご縁です。当時「自己肯定感が高まる教育を脳の視点から考えていきたい」と熱い思いを共有してくださいました。
「自己肯定感」は、大同高校さんにとって重要なテーマなのですよね。

はまださん
そうなんです。本校では、「すべての生徒に<汗と愛>の経験を」という最上位目標を掲げています。これは約80名の全教員が4か月かけて対話を続け、設定した目標です。
<汗と愛>を体現している生徒はどんな生徒かっていうと、簡単にいえば、見ず知らずの人でも困っていれば助けられる生徒。他者を尊重し、自律的に行動する。そういう自己を自ら高めていく経験を生徒自身がしていくためには、まず土台として「自己肯定感」が必要になるよね、というのが全教員が合意したことでした。
ただ、生徒のなかには、自分にちょっと自信がない子や自己肯定感が低い子たちが多く見られる・・・。どうしたら彼らの自己肯定感を引き上げていけるのか?教師としてどんなサポートができるのか?そんなふうに多くの先生方が課題を感じていたと思います。

やぎさん
もちろん、すごく楽しそうにしてる子もいれば、ちょっと擦れちゃっている子もいて、多様なんだけれど、「自己肯定感」が高いか低いかの差はいったい何が原因なんだろう?とあれこれ模索するなかで、青砥さんの脳神経科学というアプローチに出会った、というのがご縁の始まりでした。

「脳」との出会い

DAE
青砥が大同高校の先生方を対象に「自己肯定感」というテーマでお話しさせていただいたことをきっかけに、Well-being Community(以下WBC)にもお誘いさせていただきました。
チームメンバーを先生方のなかから募る際、あくまで強制ではなく手挙げ方式で集まっていただきましたが、どんな期待をもって参加しようと思われたのですか?

はまださん
青砥さんのお話を聞いて、やはり自己肯定感、自分に自信が持てるかどうかということは、すべてのことに繋がるなと確信を得ました。脳がどのように物事を感じ取っているのかとか、自分のことを認識しているのかという「しくみ」の部分を学んで、少しでも生徒たちの支援につなげていきたいという期待をもっていました。

やぎさん
僕は、青砥さんの研修で学んだことのなかで、ハッピーな考え方が自然とできるような子は、今まで育った環境によって脳が鍛えられているところもあって、後天的に育んでいくことができる。「幸せ」っていうのは、自分自身の考え方とか心の持ちようとか、ものの見方によってつくり出していける、ということが強く残っていて。じゃあ、その学びをどう活かせるのだろう?どういうふうに幸せをつくっていけるのだろう?学校の生徒たちはもちろんだけれど、大人にも同じことが言えるなら、職員室でどんな実践ができるだろう?ということを知りたくて参加させていただきました。

先生が幸せそうじゃなきゃ、子どもたちを幸せにできないのでは?


参加した先生方自身の変化

DAE
生徒たちだけではなく「先生方のウェルビーイングも」という考えは、現在の日本の教育政策においても重要視されていることだと思います。
WBCでは、まず自分自身と向き合いウェルビーイングを深めることを大切にしていますが、実際にコミュニティに参加されて変化を感じたことなどはありますか?

はまださん
私自身は、WBCに参加する前は「どうしたら生徒の自己肯定感を伸ばすことができるか」「生徒に何ができるか」というように、「生徒のため」という視点ですべて考えていました。でもWBCでの活動を通して、生徒をどうするか以前に、「まずは自分自身がどうありたいか」という意識に変化していったんです。自分自身が幸せであること。ハッピーの経験をして、いろいろなことに対してハッピーだと感じられること。それが第一歩であり、WBCで学ぶ前と今で大きく意識が変わったところですね。

とりいさん
確かに、一番変わったのははまだ先生だなぁと感じています。だいぶ雰囲気が変わったな〜と。部活のとき、隣で様子を見ることが多いんですが、以前と比べてすごい笑顔が増えたんです。僕が喋りかけたときの反応の大きさもそうですし、普段の喋っているときの雰囲気もうんと変わったな〜と思っています。

DAE
ちなみに変化する前はどんな雰囲気だったんですか。

とりいさん
そんな笑うタイプじゃないと思ってたんですよ。生徒からも「はまだ先生なんも笑わないよね」って言われるくらい。黒い服着て、クールな感じで。今じゃもう白い服着てますし、(満面の笑顔のはまださんを見て)こんな感じじゃなかったですよ(笑)。めちゃめちゃ良い変化ですよね。

はまださん
(笑)自分じゃ全然気づけなかったですね、ありがとうございます。
自分でも、なるべく、どんなことがあってもポジティブにとらえようという意識に変わりました。あと、何か発言するときにはポジティブワードを出そう、とか。今まであまり「素敵です」ってコメントすることなかったんですが、以前、やぎ先生とむつうら先生が自分の発言に対して「素敵です」って言ってくれたとき、それが思った以上に嬉しかったんです。それからは、ちょっと恥ずかしい気持ちはあるんですけど、自分がいいなと思ったことには「素敵です」って言葉をかけるように意識しています。

DAE
それは素敵な変化ですね!

やぎさん
僕も、ネガティブな話題のなかからもポジティブな要素を拾おうとするようにしていて、最近では無意識的にできるようになりました。ネガティブな話が深くなる前に、「でもここはこうですよね〜」ってポジティブに返すと、ちょっと話題がそれるというか。他者からネガティブが飛んできても、一緒にダークサイドに引きずられないスキルを獲得できたように思います。

DAE
無意識的にそういうコミュニケーションが取れるようになったということは、神経細胞も物理的に変化を起こしていますよね。ポジティブを拾う神経回路が強化されている。

やぎさん
そうなんです。もともと、「気持ちよく寝れたらハッピー」みたいなレベルで幸せを感じられるくらいハッピー基準値が低いんですけど、WBCで学んだことを自分のなかで何度も反芻して理解を深めたことで、基準値は低いまま、より広げていけることを大切にしています。
普段周りの人たちと話していると、大人でも子供でも、「この人はハッピー基準値が高くなっちゃっているのかな〜」と感じることもあって、もったいないなぁと。そういうのを感じるセンサーが働くようになりましたね。

ひでさん
私もこのWBCを通じて、ハッピーの視点や捉え方が少し変わりました。
コミュニティで「最近あったハッピーなこと」を共有する際、ある方が「朝何事もなく起きれて幸せです!」とおっしゃっていて。正直最初は、そんなことで!?と思いました。でも、その方は数日前までインフルエンザにかかっていて、当たり前だった日常が幸せであるということに気づいたそうです。
私もつい『ハッピー=特別にいいこと』というふうに考えていて、最近あったハッピー聞かれても、特にないな・・・って気づきもしなかったんですけど、その話を聞いて以来、「ハッピー」の考え方捉え方が変わって、自分のなかのハッピーが増えました

とりいさん
僕は今まで以上に人に優しく接するようになった気がします。より相手の自己肯定感につながるような話し方を考えるようになったというか。厳しいことを言う場面でも、伝え方だったり声のトーンだったり。前から優しかったと思うんですけどね(笑)。でも優しさのベクトルがちょっと変わったように感じています。

むつうらさん
自分は、「脳にはこういう特徴・メカニズムがあるからこそ、こういうことをより意識することが重要だよ」ということを理論的に学べたことがすごく良かったです。生徒たちに、自分の言葉で、確信をもって「ハッピーな視点を持つのは大事だよ」と伝えられるようになったことが、自分のなかでの大きな成長かなと思います。

全教員でのハッピーシェアが大きな一歩に

DAE
みなさんがWBCで学ばれたことを他の先生方に共有する会も開催されたんですよね。

はまださん
はい。今年の2月に、大同高校の全教員を対象に研修報告会という形で実施しました。固い研修報告会にならないよう、我々がWBCで感じた空気感を他の先生方にも感じていただきたくて、内容は我々がWBCのコミュニティパートでやったようなグループでのハッピーシェアと、その後、やぎ先生の方から学んだ内容のちょっとしたレクチャーをしてもらいました。

はまださん
特にハッピーシェアは、非常に有意義な時間になったと感じています。やっぱり、自分がハッピーだなと思えることを共有することって、恥ずかしい人はいれど、幸せじゃない人はいないと思うんですよね。報告会でも、みんな笑顔で、笑いながら、楽しそうに話されていました。今はまだその一時だけかもしれないですけど、この幸せな空気を教員間につくることができたこと、学校として全教員で取り組んだということは、我々にとって非常に大きな一歩だと思っています。

やぎさん
先生方の感想も、学びになったことだけじゃなく、「楽しかった」とか「良かった」とか、「こういうのをもっとやってほしい」とか、ポジティブな内容が多かったです。研修という時点で身構える先生が多いなかで、いい意味で研修っぽくない場をつくることができて、かつそういうものが大事だよねっていう共通認識を持てたのは、すごく大きな意味があると思っています。

はまださん
報告会後も、日々の業務のなかで何かいいことがあったときに「それはハッピーだよね」といった反応が、WBCに参加していない他の先生から出ることがちらほらあって。それってすごいことだと思うんですよね。我々が学んだこと、体験したことが、ちょっとでも伝わっていることが嬉しいですし、どの先生も同じように「生徒の幸せ」を望んでいる仲間であることを、改めて、強く感じることができました。


課題起点ではなく、ハッピーな体験起点の学校改革

やぎさん
報告会以来、職員室のなかで、ちょこっとしたことでも話題を共有して近くの席の人と話すことって大事だよね、という雰囲気が出てきています。そのおかげか、何か課題について議論するような場でも、先生方の向き合い方がちょっとずつ変わってきてるように感じています。それこそ働き方改革とか。

DAE
ハッピーシェアが働き方改革につながったのですか?

やぎさん
そうなんです。教員間のコミュニケーションが活発になれば、自然と生徒やクラスのこと、今やってることなんかも共有するようになるし、その情報共有は回り回って教員の業務効率にもつながるよね、という話から、職員室の座席配置の見直しを進めています。
今の職員室の座席は分掌(仕事が割り当てられてる組織)ごとで配置されているんですが、学年単位のチームで生徒をサポートしていることを考えると、学年ごとで固まった方が情報共有しやすいよね、というアイデア出たり。私やはまだ先生の座席がちょっとしたオープンスペースのような構造になっていて、気軽にコミュニケーションをとれるので生徒の話になったときにみんなのってきやすいですよ〜っていう話しをしたら、いやこれはでもすぐにでもやった方がいいんじゃないか!みたいな流れで。

DAE
ハッピーシェアで幸せな感情や空間を全員が体験し、「コミュニケーションが鍵」という共通認識がつくられた。そこに紐づくように、課題の捉え方がポジティブに変化していってるのかもしれませんね。

先生自身がまずハッピーであれ


同じ課題感を抱えている先生方へ・・・

DAE
生徒さんたちへの取り組みも気になるところですが、その前に、、、
日本の学校には、「生徒のため」「生徒の幸せ」を第一に考えるあまり、「自分自身の幸せ」を後回しにしてしまっている先生方がたくさんいらっしゃるように感じています。WBCに参加する前のみなさんの姿でもあると思いますが、そんな先生方に、今メッセージを贈るなら、どんな声をかけられますか?

はまださん
そうですね、やっぱり教育者って、どうしても生徒生徒っていうふうになってしまうと思うんですね。けれども、まずは自分を見つめ直すというか、例えば「働いていて幸せだな」とか、「生徒と一緒に過ごしていて幸せだな」と自分自身で思えることこそがまず大事だなというふうに思います。小さな幸せ、学校のことでもそうじゃなくてもいいと思うんですけども、ささやかなところから幸せを発見して、感じて、味わって。それを続けると、今までなんとも思わなかったものにも少しハッピーを感じられるようになる。そういうふうにハッピーの基準をどんどん変えていけると、もっともっと生徒との時間が楽しいものになりますし、普段から自然と「ウェルビーイング」という核を持って仕事ができるようになるんじゃないかなぁと思います。

ひでさん
ハッピーシェアを続けていて感じたのは、他者とハッピーを共有することや話し合うことで、相手にもハッピーが伝染するということ。これってすごい力なのでは!?という気がしています。
なので、我々教員自身がハッピーでいることが生徒のハッピーに一番つながるのかな・・・なんてことも思ったり・・・!

やぎさん
「ゆとり、ありますか?」って聞いてみたいですね。ゆとりって、ハッピーに近いものかなと僕は思うんですけど、結局がんじがらめだと、そういうふうに受け取ることすらできない。
手放さなきゃいけないもの、無くしていいものって絶対あると思うので、そういうものを学校の中で見つけられるといいですよね。その分業務が減って、一人ひとりの先生にゆとりができたら、自分はやりたいけど風潮的に削らなきゃと言われているような業務──例えば生徒との時間とか部活とか、それぞれが大切にしたいことに時間を割けるようになる。それがみんなのウェルビーイングにもつながるんじゃないでしょうか。もちろん、働き方を一回見直す必要がありますけど、先生の学校ではいかがですか?って声をかけられたらな〜と思いました。



NEXT>>> 大同高校さんの新たな取り組みや生徒さんたちの変化など、後編につづきます!




仲間と一緒にウェルビーイングをじっくり育み伴走し合う『Well-being Community』

★第5期メンバー募集中(9/20まで!)

『ウェルビーイング』テーマの脳レクチャーを受けていただいた方向けになりますが、現在Well-being Community講座の新規メンバーを募集しております。

温かなコミュニティに参加したい方、自己のウェルビーイングを育みたい方、ウェルビーイングの輪を他者に広げていきたい方、どなたでも、大大大歓迎でございます✨

ご自身の『ウェルビーイング』に真摯に向き合いたい思いが強い方や、脳の学びを深めることに貪欲な、多様で、温かくて、素敵な方ばかりに参加していただいております。

1〜4期の卒業生にもサポートメンバーとして多く参加していただく予定ですので、みなさんと創っている場を、ぜひ味わいにきていただけたら嬉しいです。