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権利関係の確定は、裁判?

債権債務、つまり貸し借りや不法行為、離婚などなどいろいろな場面で当事者のどちらに権利があるのか争われれますが・・・、どちらに権利があるかをはっきりさせたい‥、このような場合には最終的には裁判になりますね。


|裁判とは

国民は等しく、憲法によって「裁判所を受ける権利を奪はれない。」とされています。

裁判とは、裁判所が法律を用いて、トラブルを最終的に解決する手続きのこと。
裁判が行われる裁判所には5つの種類があり、最高裁判所のほか、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所があります。

全国裁判所の数は、
・ 最高裁判所は1庁
・ 高等裁判所は本庁8庁・支部6庁
・ 地方裁判所は本庁50庁・支部203庁
・ 家庭裁判所は本庁50庁・支部203庁・出張所77か所
・ 簡易裁判所は438庁
設置されています。

憲法 第32条
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

|裁判には民事と刑事がある

裁判の内容を分類すると、大きく民事事件刑事事件の2つに分けることができます。
そして、民事事件に対応する裁判が民事裁判刑事事件に対応する裁判が刑事裁判ということになります。

|刑事裁判

都合上、刑事裁判にちょっとだけ触れることにします。
刑事裁判は、検察官が主張する刑罰権が本当にあるかを判断する手続で、当事者になるのは検察官と被告人です。たとえば「この人は人を殺したので、無期懲役にしてください」という裁判であれば、被告人を無期懲役に処する刑罰権を、国が本当に持っているかどうかを裁判所が判断します。

難しい表現をしましたが、これを簡単に言うと、罪を犯したと疑われている人について、本当に罪を犯したのかどうか、また、罪を犯したと認められる場合には、どのような刑罰を科かすべきかを審理、決定する手続きをするということになります。

|民事裁判

では、本題の民事裁判ですがこちらは、「どっちが悪い」、「どっちが正しい」というような善悪を決めているというイメージがあるかもしれませんが、 実はそうではないのです。
民事裁判は、「権利があるのか、ないのか」を判断する手続のことなのです。

民事の裁判は、原告が主張する権利が本当にあるかどうかを判断するもので、当事者になるのは訴えた者である「原告」と、訴えられた者である「被告」ということになります。

たとえば 「貸したお金を返してください」という裁判であれば、原告の被告に対するお金を請求する権利 (貸金返還請求権)を原告が持っているかどうかを判断することになります。

|民事裁判における立証責任

原告にせよ被告にせよ、自分が主張する事実があるかどうかは、それを主張する人が証明しなければなりません。
これを「立証責任」があると言い、つまり立証できなかった場合の責任を自分が負うということです。

権利の有無は、その権利を発生させる法律上の要件を充たしているかどうかで決まります。
そして、要件を満たしているかどうかは、その要件に該当する事実 (要件事実)があるのかで判断します。

さらに事実の有無については、裁判所は必ず証拠に基づいて判断します。
そのため、証拠はとても大切です。

裁判所が主要事実の有無について確信を持てない場合 (真偽不明の場合)には、その事実はないものとして扱われます。
このように、法的効果の発生に必要な事実がないものとして扱われるという不利益を受けることが、「立証責任がある」ことの実質的意味といえます。

|法的な要件を満すことが必須

裁判で「慰謝料をもらう」「裁判でお金を取り戻す」「裁判で土地を取り戻す」など、裁判において訴訟、つまり何らかの請求を行うためには、まず法的な要件を満たす事実が存在する必要があります。

当然ですが、要件を満たす事実がなければ請求できませんし、あるということで請求をしても、裁判でその請求が認められるかどうかはわかりません。なぜなら裁判所は、その請求の内容が法律的に判断して要件を満たす事実があるのかを判断します。
そしてその判断のための資料は原告、つまり請求者側が、法的効果の発生に必要な事実の立証をする必要があり、立証できなければ、裁判所は請求を認めません。

|請求どおりの内容の判決を得られるか?

民事裁判で勝訴、つまり請求が認められた場合には請求額の全額が得られると思っている人はいませんか?

例えば、金銭の支払いを求めている場合、請求が認められたというのは「請求権の存在」、つまり請求する権利があること自体を認めたということになります。
そして裁判所が請求権を認めたとしても、請求額どおりの金額になるとは限りません。
請求の内容に応じて、裁判所が当事者の主張、資料などから判断して金額を認定することから判決での言い渡し金額が変わってくることがあります。

|履行されるかが問題
民事裁判において、請求を認めてもらえたとしても、現実に相手に財産がなく、支払い能力がなければ、裁判に勝っても慰謝料などを手にすることが困難な状態にもなります。

また、裁判で認められた内容を、相手に支払い能力があっても支払わないということもあります。
そのときは、強制執行という方法により権利を実現することができます。

しかし、相手に財産がなければそれも困難です。

|おわりに

民事上のトラブル、特に権利、義務の存在などについては、裁判という手段により権利の確定をすることができます。

しかしながら、その立証責任や法的に請求要件を満たすのかを判断した上で請求訴訟を起こすことになりますが、権利が確定しても、裁判所が満額を容認するかどうかはわかりません。

また相手側が裁判確定内容に応じて弁済等をしてくれるかも確定はできません。
そのような場合にはあらためて強制執行などの法的な手続きを行うことになります。
そのあたりについては後日にします。

【関係条文】

◎憲法 第37条
 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

◎民事訴訟法 第1条(趣旨)
 民事訴訟に関する手続については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。

◎民事訴訟法 第2条(裁判所および当事者の責務)
 裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。

◎民事訴訟法 第3条(最高裁判所規則)
 この法律に定めるもののほか、民事訴訟に関する手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

◎刑事訴訟法 第1条(本法の目的)
 この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することを目的とする。




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