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未成年者も逮捕される?

一見不良少年とおぼしき輩が、「俺たちゃ未成年者だから逮捕されないし、捕まっても少年鑑別所か少年院に入れられるがすぐ出てこれる・・・」と電車の中で会話していた。はて?そうなんでしょうか?


|本当に「未成年者は逮捕されないの」か?

結論は「未成年者も逮捕されます。」
ただし、実際に逮捕されるかどうかは、捜査機関が、未成年者の年齢等により判断することになります。

少年法により、「14歳以上の未成年者」が、犯罪を犯した場合「犯罪少年」と呼ばれ、犯罪少年は刑事責任を問うことができることから逮捕される可能性があります。

一方、「触法少年」は「刑事責任は問われない」こととされているので、逮捕や拘留はされないのです。
ただし、14歳未満の未成年者は、児童相談所に一時保護される形で身体拘束を受けることはあります。

|もし触法少年が逮捕された場合

触法少年は刑事責任を問われないことから逮捕されない。というのが原則ですが、実際の現場においては現行犯や緊急逮捕の場合に、逃走防止や証拠隠滅のおそれなどから、身柄を抑える必要があります。

特に年齢等が不詳でその場で14歳未満であるのか不明な場合などは逮捕されることがあります。
しかし、犯人の年齢が14歳未満の触法少年であると判明した場合には、捜査機関は直ちにその少年を釈放しなければなりません。

|「特定少年」

民法の改正により成年年齢は18歳となりましたが、刑事手続きにおいては18歳以上20歳未満の年齢の者を「特定少年」と称します。

「特定少年」の場合は、
刑事裁判を受ける可能性がより高くなる
実名報道される可能性がある
などの点で、17歳未満の未成年の逮捕事件とは異なります。

その主な理由としては、17歳未満の未成年者と比べて、
 18歳・19歳の少年は社会において責任ある主体
であるということです。

下記は法務省のサイト:「少年法が変わります」より抜粋したものです。

選挙権年齢や民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ,18・19歳の者は,社会において,責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場になりました。
今回の少年法改正は,18・19歳の者が罪を犯した場合には,その立場に応じた取扱いとするため,「特定少年」として,17歳以下の少年とは異なる特例を定めています。

法務省「少年法が変わります!」;https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji14_00015.html

|逮捕後の流れ

➤ 逮捕直後
未成年が逮捕された場合、逮捕後の措置は成人の事件とほぼ同じ。
警察において留置する必要性があると判断した場合には、留置し、逮捕から48時間以内に事件を検察官に送致することになります。

➤ 勾留又は観護措置
検察官は、さらに留置して捜査する必要があるとき、送致から24時間以内に裁判官に勾留の請求を行います。

なお、未成年の場合には、成人と同じように「勾留される」こともあるし、勾留に代わる「観護措置が取られる」こともあります。
「観護措置」を受けた少年は、少年鑑別所に収容されることになります。

勾留または観護措置の期間が終わり、一定の嫌疑があると判断された少年事件は、すべて家庭裁判所に送致されます(「全件送致主義」といい、少年法第41条、第42条)。

(司法警察員の送致)
第41条 司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。

(検察官の送致)
第42条 検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、第45条第5号本文に規定する場合を除いて、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。
2 前項の場合においては、刑事訴訟法の規定に基づく裁判官による被疑者についての弁護人の選任は、その効力を失う。

e-Gov法令検索「少年法」

➤ 家庭裁判所送致
少年事件が家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所調査官が少年の生活環境や事件を起こした背景などについて調査をします。
そして調査官は調査した結果を「社会記録」としてまとめ、家庭裁判所の裁判官に提出します。

裁判官は、「社会記録」をみて少年審判に付すべきか否かの検討をします。その結果、審判不開始という判断をすれば、少年事件はそこで終了することになります。

➤ 少年審判
少年審判に付すべきと判断した場合には、審判の手続きを経て、終局処分として
〇 不処分
〇 保護処分(保護観察、少年院送致)
〇 検察官送致(逆送)

のいずれかの処分が下ります。

なお、下図のような逮捕後の流れの中で勾留等の必要性がなくなった場合には釈放されることがあります。

筆者作成

|検察官への逆送致について

逆送は、家庭裁判所によって、保護処分ではなく、刑罰を科すべきと判断された場合に、事件を検察官に送る(≒送致する)手続きです。
検察官に送致することを「逆送致(ぎゃくそうち)」といいますが、「逆送(ぎゃくそう)」と略して呼ばれることがあります。

検察官に逆送された事件は、必ず刑事裁判にかけられることになります。
また、少年法の改正等により、18歳以上の少年の逆送事件の拡大等がなされたことから刑事裁判を受ける可能性が一層高くなり、もし有罪の確定判決がでると刑罰が科されることになります。

原則逆送対象事件とは,家庭裁判所が原則として逆送しなければならないとされている事件で,現行の少年法では,
○ 16歳以上の少年のとき犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪(殺人罪,傷害致死罪など)の事件がこれに当たります。
今回の改正で,18歳以上の少年(特定少年)については,原則逆送対象事件が拡大されることとなりました。

法務省「少年法改正Q&A」https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji14_00017#Q5  

18歳・19歳の未成年者(特定少年)の場合は、18歳・19歳のときに犯した「死刑、無期又は1年以上の懲役・禁錮」にあたる罪の事件については原則逆送となります。
たとえば、現住建造物等放火罪、強盗罪、不同意性交等罪、組織的詐欺罪などを犯した場合です。

|特定少年は刑事罰が重くなる

特定少年については、逆送決定後は20歳以上の者と原則同様に取り扱われるなど、17歳以下の未成年とは異なる取り扱いがされます。

例えば、有期懲役刑の期間の上限については、17歳未満の未成年の場合は15年ですが、特定少年(18歳・19歳の未成年)の場合は、(成人と同様に)有期懲役刑の上限は30年となったのです。

|おわりに

以上のように、少年であっても逮捕されることはあります。そして犯罪の内容、事案によっては、検察官に送致(逆送致)され刑事裁判にかけられる場合もあるということです。

ルールを守り犯罪行為に手を染めないことが大事です。
闇バイト、オレオレ詐欺など誘われてついつい手を出してしまいたくなることもあるかもしれませんが、法律を守り未来を大事にして欲しいですね。


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