見出し画像

キラキラする「愛(love)」のお菓子箱を味わう「わたしたちが光の速さで進めないなら」

<SF(9歩目)>
お隣の大韓民国のキラキラする「愛(love)」のお菓子箱(SF短篇集)を味わってみる。

わたしたちが光の速さで進めないなら
キム・チョヨプ (著), カン・バンファ (翻訳), ユン・ジヨン (翻訳)
早川書房

「9歩目」はお隣の大韓民国の女性作家からのSF短篇集です。

著者のキム・チョヨプさんは、若い韓国の女性SF作家。韓国SFブームの牽引車の一人です。

彼女の作風は、「優しい」「読後感があたたかい」に尽きます。素晴らしい!

この短篇集もそれぞれがきらめく「お菓子箱」の様な短篇集です。
私が「お菓子箱」としたのは、見た目も味もそれぞれが異なるけど、トータルで心へのステキなプレゼントになるからです。

こんな読後感は、プロ作家ではあまり見たことない。似た読後感は、2010年代のお茶の水女子大学のSF研究会の部誌(毎年発行されていて、徽音祭(きいんさい=お茶の水女子大学の学園祭)で購入可能)で読んだことがありました。

また「SF」なる世界は、結構「登山」に似ているのですが、その初期は「完全な男性社会」であり、「女性」のジェンダー性を強くした作品は激烈な原理主義者(主にお爺さん)からは批判される傾向が強い(これも登山界と似ている)。(笑)

でも、そんなこと言っていたら「SF」の進化は無い。彼女のステキな「お菓子箱」を楽しみ、素晴らしい「SF界のパティシエ誕生!!」と拍手できないファンは淘汰されないといけないと思う。

とかく専門家は「ハードSF」礼賛志向(それしか認めない!)が強すぎなのです!

また、仕掛けにこだわって、映画化等々を狙う作品(アメリカ型)よりも、シンプルにセンスの良さと起承転結で読ませてくれる良品の「お菓子箱」であり、韓国SFブームの底力を感じさせます。

特に、彼女の発想が面白い。表題作の「わたしたちが光の速さで進めないなら」は、「いかなる物質も光の速度を超えることはできない」というテーマをニュースに出ていた「偽のバス停」(ドイツにある「偽のバス停」は、いくら待ってもバスが来ない。これは勝手に養護施設から逃亡したお年寄りが道に迷わないために設けられていて、夕方にお年寄りを連れ帰るのは、バスではなく施設のスタッフである)を読んで発想したとのこと。

(同じ記事を私も読んだことあるのですが、私は完全に「スルー」でした。コチコチ頭だとダメですね!)何気ない、ニュース記事からオリジナルの世界を考え出す、柔らかでしなやかな発想がとても参考になった。

彼女がこのまま作品を発表し続けて、美しい「お菓子箱」がもっと充実する頃、「あ~やっぱり、キム・チョヨプさんのお菓子箱はサイコーだね!」と言いたいと思いました。

「愛(love)」って「いいね!」の作品集であり、SF初心者であっても問題なく読めてファンになれる作品です。

#読書感想文 #わたしの本棚 #早川書房 #わたしたちが光の速さで進めないなら #キム・チョヨプ #カン・バンファ #ユン・ジヨン #巡礼者たちはなぜ帰らない #スペクトラム #共生仮説 #感情の物性 #館内紛失 #わたしたちのスーパーヒーローについて #宇宙 #韓国 #韓流 #SF #SF #韓国SF #韓国SF #徽音祭 #お茶の水女子大学


この記事が参加している募集

読書感想文

わたしの本棚

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?