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ちょっとだけ暮らしたリスボンの話

街が丘、丘の町

ポルトガルの首都、リスボンは街全体が丘のようになっている。サンジョルジュ公園という丘の上にある城跡から、海も含めた街の景色が一望できる。
ここからの景色はただただ美しく、ぼーっと見とれてしまう。入場料が取られるので、頻繁には行けない。が、逆に料金が取られることもあって、園内は人でごった返しているということもなく、静かだった。
余談だがこの公園にはクジャクがいて、ネコみたいにのこのこ歩いている。ハトを追い払ったり、ネコに喧嘩を売っていたり、結構気が強いようだ。人間にも慣れている風だった。

ちょっと通りますよ、と。

ヨーロッパの西端に位置するこの都市まで、東京から飛行機で16時間くらいかかる。直行便はない。どこかで経由便を使う必要がある。

この街はとにかく坂が多い。傾斜もきつめだ。この不便さとでも言うべき点も、この街の大きな特色である。坂が多い。歩くのがつらい。でも街はとても美しい。どこ行ってもインスタ映えする。うっとりするような街だ。でも坂。坂が。

季節的には冬に入りかけていた。年間通して気候が温暖で、冬でも最低気温は10度くらいである。天候が変わりやすく、にわか雨に見舞われることが多かった。雨が降ったときは石畳が滑りやすく、何度か転びかけた。
しかしこんな危ない道でも、現地の人なのかハイヒールでカツカツ歩いているのを見て、本当にすごいと思った。

街が古いこともあって、道路が狭い。同じ道をトラムも車も走るから、混雑していることが多かった。歩道も勿論狭い。
トラムは観光名所を大体通っているから、観光したい人はトラムに乗れば風光明媚なところまで足を延ばすことができる。

滞在していたアパートにはエレベータがなく、階段は足幅が狭い上に滑りやすかった。足腰が弱い人にはなかなかつらいものがあるかもしれない。古い都市あるあるだ。

なんだかdisっているようだが、そんなことはない。こういうのも味があって良いのだ、ということが言いたい。

海沿いは平坦な道が続く。ランニングしている人もちらほら。
お店も多く、場所によってはかなり賑わっている。海沿いから眺める夕陽は大変見ものである。心が洗われるような気持ちになる。

安くて美味しい食べ物

物価が安くて驚く事が多かった。飲食店だろうがスーパーだろうが、とにかく安い。
ラテが2€切る。エッグタルトは一つ40セントくらいで買える。破格である。

食いかけの写真で申し訳ないが、大変美味しかった。ポルトガル名物のこのスイーツ、街のパン屋みたいなところにはどこでも売っている。どこで食べても美味しかったが、この専門店が一番美味しかった。回転率が高く、ほぼ常にできたてが味わえる。

酒も安い。たとえばワインはボトル1本3.5€くらいから売っている。ポルトガル産のワインを飲んだが、どれも美味しかった。ヨーロッパはだいたいどこ行ってもワインが美味い。ここも例外ではない。
個人的にはロゼがとても飲みやすくて美味しかった。白は辛口が多くて、魚介系の料理と合いそうな味をしていた。赤も悪くない。つまり、全部美味しい。お酒が好きな人にはたまらないだろう。安価で美味しいワインが大量に飲めるのだから...
レストランでも一本11€〜20€くらいで良質なワインを堪能できる。私はリスボンから帰ったあと5kgくらい体重が増えていた。絶対酒太りである。

レストランに関しては、大衆食堂から高級レストランまでいろいろある。隣のスペインとはまた違って、なんというか素朴な感じがする。

リスボンの食のイメージは、いい思い出半分、イマイチな思い出半分である。
最初入ったレストランがレビューの高いところだったので期待していったのだが、味が無かった。濃いいとか薄いとかじゃなくて、「無」。パンも湿気っていてなんというかそのまま使いまわしているような感じがしたし、これがいわゆるツーリストトラップかと思った。

なのでしばらく自炊していた。

スーパーに売っている食材で十分美味しいものが作れるし、もっとこだわりたいならリベイラ市場まで足を運べばいろいろ捗るのではないだろうか。

ちょっとだけ住んでみた印象でいうと、外観が新しいお店はアタリの場合が多い。ずっと続いていそうな古いお店は、悪くはないのだけど...という感じのお店が多かった。

水道水は飲めないことはない...が、カルキの匂いがきつかったのでミネラルウォーターを買って飲むことが多かった。

街の人が聞いている共通の音

街の中には教会が点在している。朝、昼、夕方には教会の鐘が鳴って、時間を教えてくれる。
海の近くだとカモメの鳴き声が聞こえてくる。時折訪れる船が汽笛を鳴らして、港町なのだなというのを実感する。
こういう街を特徴づけるような音が聞けるのは、古都や港町ならではだなと思う。この音色を聞きながら、街の人は同じ時間の感覚が刻まれて育っていくのだろうか。

夜は割と賑やかというか、楽しそうに笑いながら通りを歩いている人がいる。階下の住人はパリピなのか、割と深夜までズンドコ騒がしかった。

夜道を歩いてみれば

時差ボケで眠れなかった私は、はじめの頃よく夜道を散歩した。特に治安が悪いとは感じなかった。
たまに、ボビーオロゴン似のアフリカ系の兄貴から
「ヘイチャイナ、スモーク?スモーク?」
みたいに声をかけられることくらいはあった。フードかぶって怪しさ満点である。私はチャイニーズではないし、吸わねーし...と思いつつ、なんか売り方に思わずニヤけてしまった。笑顔を見せるとかなりしつこく勧誘されたので、笑ってはいけないシリーズだと思い、真顔で通り過ぎることにした。
みんなも気をつけよう。でもなんか笑えるんだよなこういう状況って。
あーあー、やってますねえ...みたいな。

ポルトガルは今でこそ失業率が6.8%(2018年8月)だが、10年ほど前は16%を超えていた。そのとき来ていたらどうなっていたかはわからない。街全体に流れる穏やかなムードと、上向きになっている景気は、無縁ではないだろう。景気が良いのは、良いことだ。
リスボンを離れると、結構殺伐としている感じがする。 田舎の方はどうかわからない。いつか行ってみたい。

さっきの話で思い出したことがあるが、ロンドンで働いていた日本人の同僚が、同じようにヘイチャイナ、って声かけられてストレスだったという話をしていた。なんだか馬鹿にされているような気がすると。

なるほど、尊敬はされていないかもしれない。私はあまり気にしたことはなかった。そう言われると、気になるような、気にならないような。
彼らからしたら単にそう見えるのだろうし、アジア人で最も多いのは中国人だから、確率的にはチャイナに賭けるのは、道理というか、特に考えなかったらそうなるんじゃないのか?と思った。

この話をして思い出すことがもう一つある。知人がパブでスコットランド人に英語で喋りかけた時のこと。英語で返してきてくれたので、知人は彼にイングランド出身なのかと何気なく聞いた。するとスコットランド人は真っ赤になって、俺はスコティッシュだと1時間位説教されたという。

人のアイデンティティというのはセンシティブなものなので、扱いには要注意ということだ。先入観を持って相手を断定するのは良くないよね。
...というのを、あのアフリカ系のアニキに話すことは一生ないだろうけど。

サンフランシスコのようだが...

リスボンはサンフランシスコに似ているところがいくつもある。気候が年中通して温暖なこと。空が青くて綺麗なこと。海に面していること。坂が多いこと。

最近は、スタートアップ企業がリスボンを拠点にして起業するようなケースも増えてきているらしい。SFと違って物価が安い点は、お金に余裕がない人にとっては好機に違いない。
風光明媚で気候温暖、飯も概ね美味い。ヨーロッパの各地やアフリカ、南北アメリカにもアクセスしやすい。おや...これは...?  穴場?

しかし今でこそ穴場扱いだが、ポルトガルはかつて、スペインと世界を2分するくらいに栄華を誇った時代があるのだ。そしてその時代には世界で最も繁栄した都市がこのリスボンなのである。
今でこそ落ち着いた古都、という感じだし、街の人も穏やかな雰囲気醸してるけど、いろんな国を征服しまくっていたヤバい時代もあったわけだ。
世界地図に1本線引いてこっちが俺の、あっちがお前のな!みたいなトンデモナイ条約が結ばれたのは、1494年のことである
その意味ではまだまだ眠った可能性を秘めている...のかもしれない。

都市の基盤

インフラに関しては、結構弱そうなイメージが有る。
インターネットは偏在しているとは言い難かった。宿のWi-Fiも弱かった。カフェに行っても死んでいるWi-Fiがちらほら。そもそもWi-Fi飛んでません…みたいなお店が大半だ。
ビデオ通話で参加するMTGはかなりしんどいものがあった。

電気もドライヤーと洗濯機を同時に使うとブレーカーが落ちたりする。日本の感覚で家電を扱うと痛い目を見る。

古い家屋も多く、その歴史ある町並みが貴重な観光資源ともなっているから、おいそれと改築するのも勇気がいるだろう。するにしても、街全体が丘のようになっているから、工事が大変だろうなと思った。
道も狭いし、どこかが通行止めになるとそれだけで交通網が混乱してしまう。この都市をリノベしていくのは大変そうだ。

物価が安いことの裏返しなのか、カードが使えるお店は限られていた。特に飲食店はキャッシュオンリーのお店が多い。スーパーは大体どこもカードが使える。

街の中心部では、英語を話せる人が多かった。
私の付け焼き刃のポルトガル語ではなんともならなかったので、ポルトガル語は
Olá(こんにちは)
Obligado(ありがとう)
Verifique por favor(お会計お願いします)
くらいしか喋った記憶がない。

一番困ったのは空港から乗るタクシーで、運転手が全く英語を理解しなかった。Saobentoという通りに行きたかったので、それを伝えると
「ルア?ルア?」と連呼してくる。
いや、私はフィッシングがしたいわけではないのだが...と思いながら筆談すると、
「Rua」
と書いてある。確かフランス語でRueはStreetだよな...と思い、なんか納得した。Rua de Saobento で Saobento Streetということなのだ。

ちなみにタクシーで空港から中心地まで時間は20分程度と、かなり近い。
料金35ユーロくらいだった。しかし、Uberで行くと12ユーロくらいで済む。
どちらを使えばいいかは明白である。Uberで5ユーロくらいのチップを払っても、まだ全然Uberのほうが安い。Uberの運転手は片言だけど英語が通じた。タクシーの運転手は通用しなかった。しかもキャッシュオンリーという...
ルートも明白だから、ぼったくられるリスクも限りなく低い。Uberのありがたみ。
列車を使ってもいいのだが、時間が倍以上かかる上にそこまで安いわけでもない。

おわりに

住むには結構良さそうだと思った。
気候が温暖なこと、物価が安いことは非常に魅力的である。
街中の移動に関してはまあ、トラムもあるし?
慣れれば良い運動くらいの感覚になるかもしれないし?
治安も悪くはなさそうだ。中心地に限った話ではあるが。
良いか、と言われたら、夜道を一人で歩くのはあまりおすすめしない、という程度。悪くはなかった。
飯も概ね美味しかった。
またぜひ行ってみたいが、今度は殺伐としているエリアも見て見たいと思った。

次回

次回はどこにしようか迷っているが、ベルリン、ロンドン、コペンハーゲンストックホルムのいずれかになると思われる。
ではでは、また。

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