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47才のキャンパスライフ 〜慶應一年生ミュージシャンの日々〜 50「日吉図書館の漫画事情」

 あるレポートのテーマに日本の戦後におけるストーリー漫画文化の形成を選んだこともあって、日吉図書館の漫画に関する本のコーナーには大変お世話になった。そして日吉図書館には漫画に関する本だけでなく、漫画そのものも所蔵されている。

 大学の図書館に漫画があるなんて、ひょっとしたら昨今は当たり前なのかもしれないけど、昭和生まれの僕は結構驚きました。しかし勿論なんでもかんでも所蔵されているわけではなく、そこには歴然としたキュレーションが存在する(気がする)。その選別具合が僕としては少し興味深かったので、ちょこっと紹介してみたいと思います。

 まず何と言っても嬉しいのは、手塚治虫(煩雑になるので以下敬称略で行きますね)から連綿とつながるトキワ荘メンバーの作品である。手塚治虫「火の鳥」「鉄腕アトム」「リボンの騎士」「ジャングル大帝」あたりはもう文句のつけどころのないところで、新しめのところでは「ブラックジャック」「絢子」「アドルフに告ぐ」なんかもある。歴史気的価値というか、日本のストーリー漫画文化の礎となったと言える「新宝島」も所蔵されていて、僕もはじめて読む事ができた。

 藤子・F・不二雄先生からは「ドラえもん」の単行本が全巻(!)と「SF短編」全集も愛蔵版が全巻揃っていた。SF短編は藤子先生といえばドラえもんのイメージしかない大学生に是非読んでもらいたい作品なので、大変嬉しいところである。藤子不二雄A先生からは「まんが道」「まんが道 愛…しりそめし頃に…が選出。オリジナルまんが道だけでなく、いわゆる「愛そめ」の方も所蔵されているのがなんとも憎い。

 赤塚不二夫先生からは「天才バカボン」石ノ森章太郎先生からは「サイボーグ009」とそれぞれ代表作が並んでいて、実はあまり読んだ事がないので在学中に読んでみたい。

 ここいらはもう、戦後まんがの基本みたいな作品たちで、納得のセレクションである。あと図書館にあって違和感の少ない作品としては、文学作品的テイストを持つつげ義春の作品集(もちろんかの名作「ねじ式」もある)や、芸術的側面からか大友克洋「AKIRA」もある。萩尾望都の作品群や「ベルサイユのばら」なんかもある。あ!そういえば「あしたのジョー」もあった! 永井豪「デビルマン」もしっかりある。

 その他にも色々あるんだけど、僕的に意外だったのは、高橋留美子「うる星やつら」鳥山明「Dr.スランプ」など、かなり娯楽色の強い作品も並んでいたことである。しかしそれぞれ「らんま1/2」や「ドラゴンボール」は所蔵されていないあたりが、たまたまかもしれませんが、なんだか納得できるラインを感じて面白い。「うる星…」も「Dr.…」もそれぞれ漫画史におけるエポックメイキングな作品だし、特に「Dr.…」は漫画を読んでみると「こんなにポップな作品が当時のジャンプで連載されていたのかー!」と驚愕した。

 「こち亀」なんかはぜひ時代を映す貴重な資料として所蔵してほしい所なんですが、現状ないようです。やはりあまり巻数が多い漫画がずらっと並んでいると図書館なのか快活倶楽部なのかわからなくなってくるからかもしれない。いつかは堅めの装丁の愛蔵版とかが出て、両津勘吉の活躍が日吉図書館で読めたらいいなあ!

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