「運命Girl」MVを考える。
Kis-My-Ft2「運命Girl」の分析
今回は2013年に発売された、Kis-My-Ft2の6枚目シングル「運命Girl」のMVについて分析し、思考することを試みたい。
6th SINGLE 『My Resistance -タシカナモノ- / 運命Girl』 | Kis-My-Ft2|MENT RECORDING
この楽曲はKis-My-Ft2が出演したセブン&アイのCMソングとなっている(上記リンクで「My Resistance-タシカナモノ」と合わせて表記されているのは両A面となっているためである)
テレビCMがバレンタインを主題にしているからか、恋愛模様が歌詞に表れている。またメンバーは赤を基調とした衣装を身に纏っており、MV内ではメンバーがプレゼントのようなラッピングされた箱を持ち、リップシーンを撮影するなどされている。
今回はYoutubeに挙げられている「運命Girl」MVを対象とし、分析を行う。
Kis-My-Ft2 / 「運命Girl」Music Video - YouTube
印象に残った「運命Girl」
これまで書いた記事は主に最新シングルから追うような形で行っていた。そのためもあって「なぜ2013年の楽曲を」と思われるだろう。
私は2014年に発売されたアルバム「HIT! HIT! HIT!」でこのMVを初めて見た。Kis-My-Ft2にとって初のシングルコレクションとなるアルバムの中で特に印象に残った楽曲が「運命Girl」であった。
当時印象に残った要因として2つの理由が考えられる。
1つ目は歌詞によるギャップである。
「巻き髪ハニー」や「ダイナマイト バディ」など対象となる女性像を”アイドル”が歌っていたこと、そのような相手に対して「返信全然ない」「今何してるのかな」など”アイドル”が一喜一憂している様子に抱いていた”アイドル”像とのギャップを感じたことが考えられる。
2つ目はMV最後の集合シーンである。
楽曲ラストのサビが終わり、後奏中はローラースケートを履いてのフォーメーションダンスが行われる。そのままダンスで締めくくられると思いきや、終わる5秒前(動画で言えば4:04あたり)でメンバー7人がカメラに向かってくる。おそらく低い位置にあるカメラに向かってメンバーは座り込む、寝そべるような姿勢をとり、7人が笑顔で集まった画面でMVは終わる。
この2つが私の中に「運命Girl」を印象付けるに至らせている。
「運命Girl」MVに登場する構図
歌詞と振り付けのズレ
このシーンを見たときに私は「可愛い」と思うと同時に、歌詞と振り付けの間で何かズレのようなものを感じた。
まず歌詞を見てみよう。
これは「運命Girl」1番の歌詞である。
ここから登場人物は俺と君(ハニー、You、Girlも君と同じ人物を指すため、以降君と表記する)の2名であることが分かる。
巻き髪・ダイナマイトバディな君と出会い、目が合う。
俺は君の笑顔・ウィンクに釘付けになり、初恋を経験する。
以降俺は恋をしよう、俺が好きでしょ?と君にアプローチする。
前述したようにここでの恋愛関係の構図は2名のみで構成される。MV中にもリップシーンとして、メンバー単独でカメラに「俺が好きでしょ?」と歌うような場面があることから、視聴者が君になりうる構成である。
このように俺と君の二者間でのやり取りならば、メンバー1人ずつを映すだけで良いのではないか、集合カットと考えた。無論グループとしてのダンスシーンはあるだろう。しかし1人ずつにする方が俺(=メンバー個々)と君(=視聴者)の構図は感じやすいものになるのではないか。
しかしMVはメンバー7人の集合、しかも笑顔で互いの存在を明確に感じるような距離で締めくくられる。
何故、俺と君の二者構図を持つこの楽曲にメンバー7人の集合シーンが用いられたのか。このズレに注目し、分析を行う。
集合がもたらす構図
楽曲にある二者構図に対するズレを感じるのはMVラストのシーンだけではない。
例えば2番のサビが始まるとメンバーがヒールの形をした椅子を取り合う、椅子取りゲームの様子が映される。この椅子が君を示しており、それを取り合うメンバーという構図に読み取ることも何ら違和感がないだろうと考える。
また2~3名の組み合わせで踊っているシーンも散見される。
全てではないかもしれないが、以下が該当している。
0:33-0:36 宮田俊哉・北山宏光と玉森・横尾渉の組み合わせでのダンス
1:15- 宮田・藤ヶ谷太輔・二階堂高嗣が手をつなぐ、股下をくぐるようなダンス
1:51- 横尾が北山を持ち上げたまま回る
2:05- しゃがむような姿勢をとっている千賀健永を玉森が飛び越える
2:55あたり センター位置の北山の手を玉森、藤ヶ谷が掴む
これらの組み合わせやダンスは視聴者にとって、個々ではなく複数を意識させる。
ここからメンバー個々だと思われた俺と君の構図は、メンバー7人対視聴者の多対一の構図になっているのではないか。
メンバーと視聴者に起こる反転
通常、視聴者1人1人はメンバーを見る多数のうちにしかなりえない。そのためKis-My-Ft2と視聴者には常に一対多の構図が成り立っている。
しかしこのMVにおける歌詞と振り付けのズレによって、メンバー全員が俺として一視聴者の君を見る、多対一の構図になっていると考えられる。つまり、メンバーと視聴者の中での反転が起こっているのである。
曲の解釈(恋愛の構図)と単純に擦り合わせるだけならば、メンバー7人に見られる視聴者といった、いわゆる乙女ゲームのような構図に思われるだろう。
しかし、突き詰めれば通常アイドルとファンが持つ立場の反転があるのだ。
一方で今回言及はしなかったが、ここには他の効果や意図も考えられる。
メンバー7人が集まることによって仲の良い姿、素に近い(と視聴者に感じられる)姿を思わせたり、メンバー7人をなるべく同じくらい映すためなどが考えられる。
しかし、その中でも視聴者自身の印象や受け取り方に関わるものとして「運命Girl」のMVでは”立場の反転”があることを結論とする。
反省
さては1時間半がボーダーか?と思い始めた。主観きっかけで楽曲を選択したことは初めてであり、何だかそわそわする。書けば何かしらの結論がつくことは実感しつつあるため、次回以降は複数作品にわたって追究することも1つであるように思われる。しかし悩ましいのが映像を分析する際の図像問題である。イラストにするか、顔を描かずに配置のみを表すものにするか。意見があれば伺いたい。また決まり文句のようになりつつもあるが、読みづらい箇所などがあれば是非とも教えて頂きたい。よろしくお願いします。
(誤字がひどすぎたため、翌日9:33に修正)
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