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線香花火

 「今年も花火大会が中止になったから線香花火やろうか」冷房がガンガンに効いた部屋で真面目に誘われた。線香花火やって意味あるの?断るはずがやる方向に話が進む。何事も真面目な姿が格好良いが妬ましかった。疎ましかった。

 空に星屑が瞬く頃、線香花火に幾重にも花びらが咲き散る。花びらが散る姿が打ち上げ花火よりも儚く見えた。花びらを咲かせ散らせる姿を見て、「いつか打ち上げ花火みたいに大きな夢を叶えたい」花火が映る瞳で夢を詳しく語った。「今はまだ線香花火だけどな」その姿に心臓が急激に心拍数を上昇させた。顔が一気に茹でダコになった。湯気も出てるかも。顔を見られたくなく背ける。隣ではどの花火よりも美しい瞳で夢を語る。今まで真面目な姿が暑苦しく妬ましく疎ましかったが、この時は暑苦しさも妬ましさも疎ましさも消えた。真面目な姿・夢を追いかける姿だけが残った。その姿に絶対に好きにならない、好きになるものか思っていた。が、それも今日で終わる。

 

 

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