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小学生デザイン思考プロジェクト #01 -咲蔵家の困りごと解決プロジェクト-

新庄村でのデザイン思考の授業

新庄村は岡山県の西北端に位置する人口約1000人、380世帯の村です。
山々に囲まれ、今でも美しい自然が残っています。

CURIO SCHOOLでは村の小学生に対して、創造力を育むことをねらいとした人材育成事業の一環として、2016年度よりデザイン思考をベースとしたプログラムを実施してきました。

デザイン思考のプロセス

咲蔵家プロジェクトについて

咲蔵家(さくらや)は、古い蔵を改装して作ったコワーキングスペースです。
生徒たちは咲蔵家をより快適にするためのアイデアを考え、アイデアを形にしたもの(=プロトタイプ)を制作し、咲蔵家に設置することで価値を検証していくことを繰り返していきました。そして、2ヶ月のプロジェクトの最後には、咲蔵家の業務執行理事たちに自分たちのアイデアをプレゼンしました。

咲蔵家
※写真は真庭市観光情報局公式サイト(https://www.maniwa.or.jp/)より

咲蔵家プロジェクトの進め方

プロジェクトの進め方
生徒たちはプロジェクトを通して、このプロセスを何周もしていく

第1回授業では、咲蔵家内を細かくみてまわり、課題を見つけました。
見つけた課題から1つテーマを決めて、プロジェクトを進めていきました。

見つけた課題を書き出した生徒のメモ

第2回授業から第3回授業では、課題を解決するアイデアを考え、形にして、課題が解決されているかを検証していきました。

入り口の段差をなくすスロープを制作し、角度や滑りにくさを調整する様子
本棚が整頓されない要因を考え、解決策を考えた生徒のメモ

第4回授業では、咲蔵家の理事に対してプロジェクトの中間報告を行い、アイデアをより良くするためのフィードバックをもらいました。

中間プレゼンでプロジェクトの経過報告を行う様子

第5回から第6回授業では、フィードバックを元にした更なる作り替えと価値検証をおこなっていきました。

検証した結果をまとめた生徒のメモ

第7回の授業では、咲蔵家の理事たちに自分たちのアイデアをプレゼンしました。

副村長、村議会長、業務執行理事にプレゼンをする様子

生徒たちからは、「天井が低い箇所で頭をぶつける危険性を減らすための保護具」や「どのような年代でも履きやすく脱げにくいスリッパ」「足腰の弱いお年寄りのためのスロープ」などの説明が行われました。
生徒たちの取り組みは話題となり、ケーブルテレビでも取り上げられました。

また、プロジェクトの成果として副村長と村議長からはそれぞれ、以下のようなコメントをいただきました。

副村長:細かいところに目が向けられていることを感じた。発表したアイデアは全て実現できるから、これからも続けていけるように大人も意見を参考にしながら取り組んでいきたい。

村議長:大人が気づかないようなところに気づいて、「なんとかしよう」という気持ちが感じられた。これから大人になっても、問題解決の姿勢を大事にしていってほしい。

新庄村校生徒へのインタビュー

プロジェクトを終えた新庄村校の6年生4名に、インタビューを行いました。

インタビューに答えてくれた新庄村校の生徒たち
左からしゅうまさん(小6)、さえさん(小6)、あかりさん(小6)、さらさん(小6)
撮影は、インタビューアーの角田

4人のプロジェクト内容

4人はプロジェクトを通じてそれぞれ以下のような課題を見つけ、アイデアを考え、価値検証を行いました。

しゅうま
見つけた課題:咲蔵家の中が寂しい。
・解決のためのアイデア:咲蔵家にあった花を飾り、内装を華やかにする。

さえ
・見つけた課題:カーテンが地味だし、すぐ取れてしまう。
・解決のためのアイデア:使いやすく咲蔵家らしいカーテンを作る。

あかり
・見つけた課題:たくさんのボードゲームあるのに、ほぼ遊ばれていない。
・解決のためのアイデア:ボードゲーム用の棚を作り、遊び方とセットで飾る。

さら
・見つけた課題:本棚の本が整頓されておらず、読みたい本が見つからない。
・解決のためのアイデア:収納しやすいよう分類し、整理を促す表示を掲示する。

それぞれが持っているのが、課題をもとに考えたアイデアを形にしたもの

みんなの様子を見てたら、課題が見つかった

角田:今回のプロジェクトの感想を聞かせてください。

全員:難しかった…(笑)

角田:どのあたりが難しかったの?

さえ:まず最初に「咲蔵家のこういうところが不満だな」っていうのを考えるのが大変だったし、それをどうやって解決しようか考えるのも大変だった。

さら:「作ってからまた作り直す」っていうのがちょっと大変だった。プロトタイプ制作めっちゃやったな…5、6回くらいやった。

しゅうま:課題からどんなアイデアで解決するかを考えるのが、難しかった。

角田:最初の課題はどうやって見つけたの?

さら:見る。

あかり:観察する。

角田:「見る」っていうのは、何を見てたの?

あかり:私はカードゲームがバラバラになっているのを見て、「これ、いやだな」と思ったからお題にした。

さえ:私も2階のカーテンを見て、よく落ちていて直すのが大変そうだったし、元の状態が分からないと直せないから、どんな人でもうまく直せるようにした。

さら:身の回り困ったことやみんなの様子を見てたら、意外と見つかったな。

角田:「プロトタイプを作っていくのが難しかった」とういう話だけど、どういうことが難しいと感じたの?

さえ:思いついたものを作るのに、今ある材料でどう作るかってこととか…。

あかり:頭で考えていることを、完全には再現できないもんね…。

さら:ちょっと違ったりするんだよね。

あかり:だから、ボードゲームを収納するものを作るのに、線を引いて区切るのか、色で分けるのか、方法を決めるのが大変だった。思いついた方法を全部やって、どれが一番いいかを比べて考えた。

角田:確かに、形にしてみて気づけることは多いよね。

咲蔵家の中から課題を探そうとする3人

プロトタイプは、すぐにつくり替える

角田:プロトタイプはどれくらい作り替えたの?

さら:私は1個目のカーテンにめっちゃ時間かけたんだけど、「カーテン以外でもいいんじゃない?」ってアドバイスをもらったから、カーテン以外も試してみてる。

あかり:3回、4回くらい!ボードゲームをしまうのに最初は形だけくり抜いてたんだけど、自分で全部ひっくり返してみたときにどこにしまうか分からなくなったから、ボードゲーム名を書くようにしたり、汚れないように無色透明の箱を上にのせてみたり…さらちゃんは、結構やってたよね?

さら:私は小さいものだったから時間かからなかったけど、大きいものを作ったあかりちゃんは大変だったと思う。

しゅうま:僕はプレゼンの本番に向けて、花を置く場所や角度を何度も調整していった。

あかり:プロトタイプって、どう変えていくかだからね。

角田:作り替えるときのコツってある?

あかり:プロトタイプを作ってるときに「あれ?」って思ったり、不満があったりすれば、すぐ作り替える。

さえ:私は実際に試してみて、1週間後に見てみる。例えば、吸盤を使ったら「1週間経っても取れてないかな」とか、もし取れてたら「次はどうしたらいいかな」とか。

あかり:さらちゃん、本棚を汚くしてたよね。

さら:うん。本棚を(あえて)めっちゃ汚くして、それからみんなが直してくれるかをテストをして、ポスターの効果があるかどうか確かめた。

角田:わざと課題が大きくなるような状況を作って、自分が作ったものが効果あるかを確かめたんだね。

プロジェクトの経過報告を行い、理事からフィードバックをもらう様子

真っ白な世界から。いろんなものを作っていく

角田:みんなは、CURIOに何年生から通ってるんだっけ?

あかり・さえ:1年生から。

しゅうま:3年生くらい。

角田:昔と比較して変わったことはある?

さえ:始めた頃は「何を作ろうかな」って悩んでたけど、今はすぐに決まる。考える力がついたと思います。

あかり:思考力とかね、考えることとか。昔はできなくて、何かを作るときにすぐ手伝ってもらってたけど、自分でできるようになった。

しゅうま:発想力かな。頭の中で自分が作りたいものを想像して、似たようなものを作るっていうような感じ。

あかり:真っ白な世界からいろんなものを作っていくのが、ちょっとずつできるようになった。CURIOをやってたら、考えるの楽しくなるんだ。小学校に入学したときは授業がつまらなかったけど、CURIOで身についた想像力があると、学校の授業でも「どうしてこうなるんだろう?」と考えることが増えてる。

角田:それって、CURIO以外で生かせそうな場面ってある?

さえ:学校ですごく生かせる!図工で自分が作りたいものを「こうやったらデザインできるかも」というときに活用できる。新庄学(※小学校で実施されている地域の課題解決に向けた教育活動)でも、自分の村をもっと発展させるときに、どういう風にやっていくかを考えることができてる。

テストの結果、説明を作り替えるあかりさん

どうしたら村がよくなるか想像していくと、ワクワクする

角田:村のことって、どんなことを考えたの?

さえ:新庄村は年々人口が減っているから人口を増やしたいし、盛り上げていきたい。でも、今の自然は壊したくない。だから、どうやっていくかということを考えた。

しゅうま:新庄村のPRをして住みたいという人を集めた。新庄村のいいところや村の様子をインスタグラムにあげて見てもらうようにした。

さら:顔はめパネルを作るプロジェクトをしていて、それにCURIOでやったことが生かされている。デザインして、それから作ったり、みんなの意見をもらってきたり…。CURIOでやっている、問いを立てて仮説を検証していくことと同じだと思う。

あかり:この前は観光客の人たちが、どのパネルがやりたくなるのかを確かめたよね。

新庄村の様子
新庄村の代表する春の景色である桜並木は
「日本の音風景百選」「日本のかおり風景百選」にも選出されている。
※写真は岡山県観光情報局WEBサイト(https://www.okayama-kanko.jp/)より

角田:これから挑戦してみたいことはある?

あかり:国旗を作りたい。道徳の授業で、国旗にはそれぞれの国の誇りの色が使われたり、似ている丸でも少し形が違ったりというように、意味があることを知ったから、自分自身を表すような国旗を作りたい。

さら:今、環境委員会で「本を読もう!」というポスターを作っているから、今回のプロジェクトでもらったフィードバックを生かしたい。

さえ:新庄村を盛り上げていく取り組みを今後もやっていきたい。どんな施設があったらいいかを考えていきたい。

しゅうま:村をライトアップしてみたい!村民の安全も守れるし、道路に絵を描いてPRできるようにもしたい。

角田:村のこれからを考えるのは楽しい?

さえ:楽しい!どうやったら村がよくなるか想像していくとワクワクする。

あかり:未来が、私たちにかかってるからね!

さら:どんな人でも絶対困りごとがあるから、これからも改善するものを考えていきたい。

あかり:国語で点字ブロックについて調べてるんだけど、点字ブロックは視覚障害者にとってはいいいものだけど、車椅子の人がそこに引っかかって転倒するってことが起きているみたいで。だから誰のためのものにするかっていうのが大事だなと思ってる。

角田:確かに「村を良くしよう」みたいな大きな話だと、ユーザーが多すぎるから、誰に焦点を当てるかが大事になってくるよね。

インタビューを終えて

生徒たちが、小学生のうちから「村の今後を自分たちが担っていく」という意識を持って、かつその活動を楽しみながら前向きに取り組んでいることが印象的でした。彼ら彼女たちがデザイン思考を用いて、どのような新しい価値を生み出していくのか、これからの活躍が楽しみです。(角田)

(インタビュー・文章:角田)

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・プログラム:https://mono-coto-program.com/
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・担当:m-tsunoda@curioschool.com(角田)


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