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はじめての写真集#3〜美しい一冊にひとめぼれ〜

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あれから2週間後、休日の午後。写真好きの友人同士、カホちゃんとさらおちゃんは、暑すぎる陽射しをのがれ、すっかり気に入ってしまったブックカフェで休憩中です。

今日はどの写真集にしよう……?迷うカホちゃんの目に止まったのは、手前の椅子に飾られていた、赤と緑が目を引く一冊。

クリスマスカラーともふもふの衣装が相まって、ページをめくる前から冬の空気が漂ってきそうです。ただそこに置いてあるだけで、空間が引き締まるような存在感。なんだか、海外の絨毯のようなエキゾチックな雰囲気もあります。

「暑すぎると、逆に冬のこと考えたくなること、ない?」とカホちゃん。
「わかるかも」とさらおちゃん。

「ダンデライオン」/撮影 高橋ヨーコ/出版社 ロッキングオン/出版年 2007年

表紙の文字は高級感のあるゴールド。カホちゃんが手に取ると、少しずしっとくる重みが。昔のアルバムみたいで、なんだか懐かしい感じ。

『ダンデライオン』と題されたこの写真集は、女優・蒼井優がシベリア鉄道で旅する10日間を撮影したもの。映画『フラガール』『ハチミツとクローバー』などで日本を代表する実力派女優となった蒼井優と、KIRINのドリンクシリーズ『世界のキッチンから』などの写真で人気の高橋ヨーコがタッグを組んでいます。

ページをめくると現れるのは、鼻先がつんっと痛くなるくらい寒そうな雪景色。そしてそこにたたずむのは、あふれんばかりの透明感に満ちた蒼井優さん。

思わず息を止めて見つめたくなるような透明感のひみつは、いったいなんなのでしょう?気になったカホちゃんは、写真に詳しい店長に尋ねてみました。

「なんでこんなに透明感が出るんでしょう……?」

「いい質問ですね」
大好きな写真の話ができて嬉しいのか、店長はご機嫌そう。
「ひとつは、メイク。じつはこの写真集、蒼井さんは全部すっぴんなんですよ。」

「えっ!」
隣のさらおちゃんも、思わずびっくり。

「そしてもうひとつ。タレントさんですが、蒼井優ちゃんと高橋ヨーコさんのほかには、スタイリストさんしか同行しなかったんです。女3人の旅。国民的女優さんなのに、マネージャーさんさえも行かないという思い切った撮影だったそうなんです。」

「たった3人で!?」

女性3人の旅から生まれる自然な空気感が、この写真集に流れる心地よい雰囲気の正体だったのかもしれません。

「最後にもうひとつ」、と話し足りない様子の店長がつづけます。

「まだあるんですか」と目を丸くしたカホちゃんが驚きます。

「この写真集を撮影した場所は、日本よりも光が低く差し込む場所なんです。明るい時間帯でも、どこか夕方のような印象の光になるんですね。建物や衣装はポップでカラフルな色使いだけど、光のおかげでやさしい印象になる。」

言われてみれば、ミントグリーンの壁や真っ赤なセーターも、けっしてケバケバしい感じがしません。むしろ落ち着いて見えるくらい。

ページをめくり終える頃には、なんだか自分たちも一緒に旅していたようなふしぎな感覚がありました。なんとなく見た目に惹かれて手に取った一冊でしたが、その先に荘厳な大地と稀有な透明感を見ることができて大満足。

「次はすっぴんで撮るか〜!」とさらおちゃん。
「勇気いるねぇ。でも楽しいかも。」カホちゃんも乗り気の様子。

今日も良い写真日和になったようです。
次回も、お楽しみに。

企画:CURBON/ライター:片渕ゆり


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