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人間の怖さ【読書感想文:雨穴 変な家】

本を一冊読み切った。
『変な家』という作品だ。

私は本を選ぶ時、何の知識も無くパッケージや帯や本屋さんが工夫を凝らして描くPOPに釣られて手に取ってしまう。あまり本を読まないことと常に何も考えていないことがバレてしまう。

だから作者の雨穴さんや、彼の本業や、どんな経緯でこの本を書かれたかなどは何も知らないし、むしろこんな無知な人間すらも面白いと思わせてくれる本だったということに驚きを隠せない。


本を読むのにそれほど時間を要さない私は、購入して何か月も経った一冊の本を一時間で読み終えた。

怖かった。

私の語彙力の無さが露呈してしまうが、これが感想をぎゅっとまとめたものだ。

言葉というものは、たった一行で分かるような文章を何行でも何ページでも語ることが出来るし、言い換えることも出来る。
日本語はそれに頼って、『筆者が怖かったと述べているのはなぜか。文中から十文字以上で答えよ』と訳の分からない問題を出してくる。怖かったと言っているんだから、前の文章で理由を述べていようとも、理由はその人次第だと諦めれば良いのに。

だがそれが文章。人に読んで貰う、ということなのだろう。見りゃ分かる、読めば分かるという気持ちもこうして文字にしたためないと分からないのだから、実際、私がなぜ『怖かった』という終着点を選んだのかを話していきたい。


私がこの本(以下Aと略す)から受けたのは、『人間の怖さ』である。


私は妖怪や非人間的なアングラなものもすごく好きだ。
その理由は、理性と本能を持ち合わせる人間が一番怖くて恐ろしいし、人間の自分に降りかかる恐怖かもしれないと怖くなる。でも非人間達は、本能で人間らしさを偽造している生物だから、その偽造が面白いと他人事に思えるからだ。
だから非人間的な物が好きと言っても、ホラー系や幽霊、心霊スポットなどの、人間を驚かすために作ったものは本当に苦手なので避けて生きている。

Aからは、私が避けたくて仕方が無い、人間の怖さを感じた。


生まれてこの方人間の暮らししか経験していないので、人間を客観視して怖いと感じるためには、こうして本やテレビの実体験を元にした話を聞いて感じることが多い。
人間は複雑なのに単純な所がある。他の動物とは違って、理性が物を言う時と、本能が先走る時の二つが存在する。引き分けになることはまず無いし、勝つものも人による。

だがAは、本能に勝てなかった人が、本能で進んだ結果、理性とぶつかっている作品だと感じた。どちらにも従えず、悶々としている様が人間らしくて、自分にも待ち受けている未来かもしれないと思うとなんだか怖くなった。自分の理性と本能だけではなく、他人の理性と本能にも出会うこと、自分の価値観に落とし込むことがどれほど難しいかを考えさせられる。そこに人間というコミュニケーションが無いと生きられない生物の怖さを感じた。


Aはただの奇妙で震えるような題材の本かと思いきや、私が一番苦手である、人間の恐怖が待っていた。
人間であるそこの貴方が、人間の愚かさや弱さを外側から見たいと思っているのなら、ぜひ読んで欲しいと思う。

私は頭に刻み込まれたAの内容を、どうしたら夢に出さないようにすれば良いか、今こうして文章を打つ間にも真剣に考えている。

あー、怖かった。

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