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イタリアの農業について聞いてみた

イタリアで食べるイタリア料理は、とにかくおいしい。ピザとかよりも、伝統的で地域色の豊かなイタリア料理が。

今まで旅行した各国で現地料理を食べた中では、自分にとってのダントツ一位がイタリア料理。少なくとも僕にとっては飛びぬけた料理の実力を持っている国。しかもそれぞれの地方によっても料理が全然違っていて、バラエティーが豊富。

イタリアを車で走ると、そんなイタリア料理を支える農作物をつくるための広大な農地が延々と広がっている。イタリアの農地の風景は、美しさや豊かさを体現しているようで、飽きずに景色を見ながら運転しつづけることができる。

で、イタリアを旅行していたときに、フト頭に浮かんだことが。

「今どきの若い人たちって、果たして農業を仕事として選ぶのか?ひょっとして農地が受け継がれずに、国土が荒れ果てていくことはないのか?」ということが気になった。なので、イタリア旅行中に現地のイタリア人に聞いてみた。

なお、今回聞いた話は旅行中にほんの数名に聞いただけなので、イタリア全体を代表した意見ではないです。

農業地域で聞いてみた

まずは中部に位置するトスカーナ地方で聞いてみた。トスカーナは豊かな丘陵地帯が広がっており、農業が盛んな地域。


「今どきの若い人って、農業の仕事するの?イタリアの若い人たちは、大学や仕事で大都市に出て行くって話もよく聞くんだけど」

イタリア人女性
「若い人でも、農業に従事する人は普通にいるよ。人によって事情は違うけど、例えば大都市の大学で農業を勉強した後で、また自分の地元に戻ってきて農業をしたり。他にも、林の手入れをする方法について大学で勉強して、地元に戻ってきて林のメンテナンスの仕事に就くとか」


「へー、さすがイタリア。なんだかんだ言って、やっぱり地元に戻ってくる人は多そうだね」

イタリア人女性
「他にも、私の知り合いの中には、大学を出た後で何人かで田舎の大きな土地を所有して、あらゆる種類の麦を栽培している人がいるよ。こだわりの農作物を栽培して、そのこだわりに価値を見い出すレストランへ卸して、普通より高く買ってもらったり」


「そっか、農業に従事する若い人がいないわけでもない、ってことか」

日本だと、東京一極集中が顕著。会社が従業員を転勤させる権利を持っている特殊な国だから、ビジネスの合理性によって国民が一ヶ所へ集められがち。でもイタリアは、そもそも歴史的にはイタリア語を喋る様々な国があって、それが近年になって統合された末にイタリアという一つの国になった。その歴史的な経緯から、もともとの自分たちの国=地元地域への愛が一般的に強いとされている。それゆえ、国中の人たちが集まってくる唯一無二の大都市というものがない(人が集まりがちな大都市はいくつかあるけど)。なので、幸いにして地元に戻りたいと思う人もある程度は存在していて、それで地方の活気が保たれている面もあるようだ。


「あと、イタリアと言えばワインだけど、ワインづくりの人も確保できているのかな?」

イタリア人女性
「ワインづくりに従事する人も多いよ。一口にワインづくりって言っても、いろんな仕事があってね。ぶどうを摘む人とか、摘んだブドウを選別する人とか。あとはワインのラベルをデザインする人とかも」


「そういった仕事の中には肉体労働も多いはずだけど、それもイタリア人がやってるの?ドイツの場合だと、移民とか外国人が主に担っている職業って多いから」

イタリア人女性
「そうね、輸出も手掛けるような大きなワイナリーだと、畑で働いているのはイタリア人だけじゃないわね。バルカン半島やアフリカから移民としてやってきて、住み込みで働いている人たちも多い」

という答え。トスカーナという農業が盛んな州の田舎の街で聞いたからか、「農業を職業として選ぶ人も一般的にいる」という感じだった。

というように、イタリアの農業もまだまだ持続可能なかたちで維持できているのかなーって、胸をなでおろしたのが、トスカーナで聞いた話。

冬のトスカーナ。冬だからちょっと殺風景ではあるけれど

大都市で聞いてみると

でも、その後で大都市で聞いてみると、農業をもうちょっとネガティブなイメージで捉えていた。

イタリア人男性
「農業ねぇ・・・、基本的には同じ家族で代々受け継いでいくのが多いイメージだね。でも、お年寄りが若い世代に継がせようとしても、子どもや孫は継ごうとしないケースがあるよね。農業以外の仕事に就けるなら、そっちを選ぶ人が多いんじゃないかな」

トスカーナで聞いたトーンとはちょっと違って、あまりポジティブな見方ではなかった。

イタリア人男性
「そして、自分の代から農業を始めてみようって人はいないと思う。だってさ、農業をするには大きな土地が必要だし、大量の種を買わないといけないだろ。機械への投資も必要だし、人を雇う必要もあるし。そんなのをイチから投資してから始めるのはハードルが高すぎるよね。だから先祖代々やっている人しかやらないんじゃないのかな」


「なるほど・・、確かに農業人口は減る一方で、新たに始めようって人は少ないかも・・」

ということで、やっぱり農業の厳しい状況についての話も聞くことになった。

ただし興味深かったのは、農業について質問したら、結構具体的な答えが返ってきたこと。最初のイタリア人女性は、農業に携わる身近で具体的な例を色々と挙げてくれたし、ネガティブな意見のイタリア人男性も、質問に対して即座に具体的に回答してくれた。それだけ、ある程度は身近な話題の様子。果たして日本で聞いてみても、こんなに具体的な回答が即座に返ってくるのかな?と思った。

なぜイタリアの農業に興味を持ったか?

さて、そもそも、なんで僕はこの話に興味を持ったのか?それは、イタリアの将来の姿がとても気になったから。

というのも、イタリアは食事をはじめ、文化・歴史・人など素晴らしい国だと思っている。

けれども経済があまり強くないために、仕事で優秀な人や腕のいい料理人たちは、イタリアから移住してドイツとか経済の好調な国へ出ていってしまう人が多い。EU市民は原則としてEU内の好きな国で働けるから、優秀な人ほどイタリアから国外へ脱出していなくなってしまう面がある。

またイタリアでは、経済的な問題も影響して、ヨーロッパ諸国の中で出生率が最低レベル。日本と同じくらい低い水準にとどまる。

その一方で、イタリアは地中海に面していて、さらに海岸線がとても長い。そのため、近隣のアフリカ北部や中東から海を渡って難民や移民が押し寄せ、海岸線から上陸してくる不法移民が多いことが大きな問題になっている。また他にも、イタリアよりも経済の立ち遅れているバルカン半島から、出稼ぎとして大量の人たちが入ってくる。

更に、近年では中国人が増えて経済を握りつつあるというニュースも目にする。実際、元同僚のイタリア人も、前職はイタリアの中国系企業で働いていた。

つまり、イタリアでいま何が起こっているのかというと、どんどんイタリア人が減る流れがあることに加え、逆にアフリカや中東や中国など海外から来た外国人たちがイタリアに押し寄せる動きもある。

この2つの事象を併せて見てみると。イタリアでは「国民の中身が急速に入れ替わりつつある」ということ。

となると、果たしてイアリアは数十年後にも今の国としての在り方を維持できるのか?って本気で心配になってくる。だから、せめてこの広大な農業の土地くらいは、イタリアの伝統や文化を愛する人たちが継いでいってほしいなあ、と思った。

僕の大好きなイタリアが、数十年後にもその本質を保っていられることを願っている。

by 世界の人に聞いてみた


追伸)トスカーナに住むようこさんが、イタリアの食や農業の伝統・文化を守りながら生きている現地の人たちについて、質の高い記事を投稿されているので、ご紹介を ↓

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