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ありがと、デーツ@富士登山


あと数ヶ月で、わたしもついに還暦を迎えます。

60。六十。6×10。
一向に中身は進化もアップデートもしていないのに数字ばかりが大きくなっていく、
そんな自分の今に呆れを通り越し、いささか驚きさえ感じます。

相変わらずのままで過ぎてしまっていいのだろうか。
何か節目になるようなことをして区切りにし、
次の自分を一から模索していけないだろうか。
そんなことをぼんやり考えていたところ、
富士山に一緒に行かないか、と高校の先輩から声が掛かりました。

登山の経験も、装備も何もないなか、
なぜか「行きます!」と口をついて出たのは、
先だってからのそんな焦りのようなものがあったからかもしれません。

行くと決まってからは、楽しみが1/3、
残りは不安と緊張がずっと頭にこびりついて離れない毎日でした。
腰にも太ももにも違和感があり、出発前になってもなかなか治らなかったり。
また、もともと夏から秋にかけ、胃腸の働きが落ちる傾向にある私。
病院に行けば、
お腹は空くのに、絶食しなさいと言われたり。
こんな時、しみじみと加齢を実感します。

また、登ったことのない私には想像もつかない
高山病や低体温症などの、高地特有のリスクも。

そんな不安だらけの自分を助く味方を連れて行きたくて、
リュックの重さは増える一方でした。

登山には欠かせない行動食というものがあり、
度々とる休憩のたびに、塩分やブドウ糖、クエン酸やビタミンミネラル類を効率的に補給する為の食べものを持っていくことになっています。
なるべく荷物にならず、心強いもの…
思いついたのが、自家製の梅干し、
そして、デーツ(なつめやし)でした。


イスラム教の国々では、ラマダン明けによく食べられるそうで、
胃が弱った時の私にとってはまさに、
“絶食明け”のデーツ。

横浜元町の、
cashew treeというナッツ専門店で見かけ、
妊婦だった遠い昔に感じていた
この一粒の頼もしさを
はっ、と思い出して
再びよく食べるようになりました。

当時はドライフルーツのデーツ。
ドライの方がお馴染みですが、
こちらはセミドライのデーツです。

干し柿のような濃い甘さのドライに比べると、
こちらは安納芋に似ていて、
よりねっとりとした、食べ応えのある味わい。
強い甘味ながらショ糖が含まれておらず、
鉄分、カルシウム、カリウム、リン、マグネシウムなどのミネラルや食物繊維が豊富で、GI値は低い!
中高年の、しかも富士登山を控えた自分には、嬉しすぎる存在なのでした。

1日の始まりにふた粒ほど食べると、
ブドウ糖のおかげでしょうか、
まず頭がシャキーン✨とする気がします。

梅干しとデーツ、他色々をしのばせて、
前夜はついに豚汁しか食べられないまま、
集合場所へ赴き、バスで5合目へ。
降りた途端に、肺が狭くなった感じがしました。
これが空気が薄いということか、と。

そこからは少しずつ少しずつ、
息の上がらない程度の、実に緩やかな歩みで
一歩一歩登っていきます。

ろうそくを吹き消すように、フーッと吹いてたくさん吸う深呼吸と、水分補給を絶やさずにと教わり、2泊3日のスローペースのおかげもあって、
心配していた高山病にもならず。

小さな一歩を重ねた末に
元気に登頂することができました。

初登山で、初富士山。
これ以上ないお天気にも恵まれて、
わたしは幸せ者です。

どちらかといえば、海の方が身近な私。
これまでは、辛い思いをして山に登る人の気持ちをあまり窺い知る事ができなかったけれど、
少しだけわかったような気がしました。

眼前の絶景はもちろんですが、
一歩一歩は小さくても、
休み休みでも、
たくさん抜かされても、
歩くのをやめなければいつかは行きたいところに達することが出来るんだ、と
自分の越し方行く末と重ね合わせては
山にたくさんの宝物をもらえたようです。

登る前の不安が安堵に移り変わり、
笑顔で帰宅できて、心配をかけていた周りにもお礼を言ってから、荷物をぼちぼち片付けました。

持って行った行動食は、ほぼ完食。
いろんな飴やお菓子もあったけれど、
デーツの効き目はやはり出色でした。

下山して平地にもどったら、忘れていた猛暑がそこにはあり、
ここでもまた、デーツは活躍してくれること請け合いだなと改めて思い、
お勧めしたいなと思います。

そのままかじっても。
また、食材として使うのも良いと感じます。
備忘録からいくつか。

デーツを2つに割り、種を取って
くるみやピーカンナッツと、チーズを挟むのが好きです。
ワインのお供にも。

また、ひたひたの水と小鍋に入れて数分煮て、柔らかくなったものを濾してピュレにしておくと、ぐんと使いやすくなります。

生ハムやチーズのトッピングに、デーツバターに。
スペアリブやカレーの風味づけにも。

出来上がった甘いピュレで、
砂糖なし、デーツだけのプリンを作ることもできます。
カラメルソースのようにパキーンとは固まりませんが、
罪悪感のないおやつ🍮

"自分にご褒美"とか、
いちいち言い訳しなくていい嬉しさが、たまりません😆

デーツのプリン レシピ

1.プリンカップにバターを薄く塗っておく。オーブンは140度に温める。
ボウルに入れた卵2個と卵黄1個分を泡立て器でほぐし、デーツのピュレ60gを溶き混ぜてなめらかにする。

2.小鍋にデーツのピュレ50gに水大さじ1を入れて中火にかけ、色が濃く色づいたら火を止め、熱湯を大さじ1入れてトロリとなったらプリンカップの底に少しずつ注ぐ。(カラメルのようには固まりません)

3.牛乳1カップを小鍋に入れて好みのバニラを少々混ぜ、火にかけて沸騰直前に火から下ろす。
1.に少しずつ加えて、細かい目の濾し器やざるで2度こして、2.のカップに静かに注ぐ。
注いだらアルミホイルをかぶせて蓋をする。

4.バットなどの平らな容器にふきんをしき、その上にカップを並べ、オーブンの天板にのせる。
プリンの高さの半分くらいの湯をそのバットに注ぎ、温度を140度に下げて50〜60分真ん中がふるふる揺れるくらいまで、
蒸し焼きにする。
粗熱が取れたらよく冷やす。

※オーブンを使わずに、土鍋や鋳物の鍋の余熱で仕上げる方法も。
プリンの高さの7分目になるくらいの湯を沸かし、ふきんをしいてプリンカップを並べ、
蓋をして10分ほどごく弱火で加熱して火を止め、そのまま冷めるまで置くと
なめらかに固まります。

型から外すとデーツのソースがトロッとのっていて、
ほんわかした甘さに仕上がります。

次は和菓子にしてみようかな。



いつもと違う素材、  
使い始めると楽しいものです。
マリネ液に溶き入れたら酸味が丸くなりました。

焼いたイワシの丸干しと、茹でたかぼちゃ、ごぼう、切っただけの人参、キュウリなどの角切り野菜をデーツのピュレ入りピクルス酢に漬け込んで。

イワシは心に効く様々な効能も持っているので、
気候から不安定になりがちなこの時期、
イワシとデーツで、
心身ともに、元気溌剌になりましょう。

ありがと、デーツ。

毎朝の一粒にふわっと背中を押してもらって、
危険なレベルの猛暑をのらりくらり、かわしていきたいと思っています。


#note  #料理 #デーツ #なつめやし #夏バテ #富士山 #登山 #行動食


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