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#単車

不良少年の死

多人数の
喧嘩の時は
躊躇なく
短鞭を振るう
不良少年
Z750FXを
手足の様に扱い
公道はまさに
彼だけの
ステージだった
ロックンロールに合わせ
ステップを踏めば
朝が迎えに
来てくれる
その筈だった
些細な事故で
不良少年は死んだ
その體は
もう二度と
単車を瞬かせず
季節外れの
雪によく似た
灰へと変わった

エンジンが揺れるから

CB1100Rの
エンジンが揺れるから
貴方にくちづけを
ガソリンの素敵な香りが
僕を惑わせるから
貴方にさよならを
キャブレーターが狂った風を
吸い込んで加速するから
貴方とお別れを
素晴らしい筈の日々に
手を振って消えて逝こう

ヒステリック・ワールドエンド

無敵と呼ばれたあの頃は
薬のやり過ぎで加減が利かず
やり過ぎちまっただけさ
単車で巧く走れない俺にはもう
何の価値もありはしないよ
世界の終わりと呼ばれた
不良が語った言葉は余りにも
虚しくて叫んでいる様にも聞こえた
幾つもの悲しみを抱えて
彼らは何処へ向かうのか
僕にはきっと分からない
幾つもの闇を抱えて
見えない明日へ向かうだろう
確かに輝いていた日々を殺しながら

シナモンを効かせた
ミルクティーを出す
夜にだけ開くカフェで
何時ものレモンパイと
ミートパイを買おう
古びた店に置かれてる
トランジスタアンプから
流れるqのロックンロールに
身を任せて踊り疲れたなら
ZX-9Rユメタマを飛ばして
夜の街を駆け抜けようか
直ぐに消えちまうあの
蛍の光よりも速く

秋風とパンクス

トライアンフT140に跨り
秋の街を走るパンクス
革のダブルライダースに
安全靴を履いて走れば
秋風さえ置き去りに出来るのさ
誰かに嫌われても
自分が好きな事を
好きなままで居るのは
素敵な事じゃないか
僕はそう思うんだ
本当に心からそう思う
直ぐに季節は冬を迎えて
生まれ故郷に雪が降る
刹那で溢れ零れそうな雪が

フロイライン

錆び付いた夜に
フロイラインを越える
Z2のCRキャブレーターが
空を吸い込んで
延々と加速するのさ
美しい事は
曝け出してはいけない
それは心の奥に
しまって置くべきなんだ
自分の為だけにさ

さらば愛しき友よ

あんたはきっと
変わらないと思ってた
どんな時も
最高だったから
あんたはずっと
単車に乗ると信じてた
誰よりも
巧く速かったから
さらば愛しき友よ
お別れの口笛を吹いて
それでさよならだ
大切な瞬間を胸に抱き
俺は独り孤独を歩む
あんたと二度と
分かり合えなくなっても

外天の空

灼熱の風を
遮りながら
夜の公道を
単車で飛ばす
外天達
轟音をかき鳴らす
儚い蛍の群れは
延々と続く
レンタル屋で借りた
ビデオテープが
擦り切れるまで

左利きの医師は鉄の羊の夢を見ない

白衣を着込んだ
左利きの医師は
鉄の羊の夢を見ない
そんな話をしていた
あいつは死んだ
とても凍れる冬の夜に
外は月が朧気に
唯々輝いていたんだ
俺達は何となくだけど
気が合ったんだ
好きな単車や
ロックンロールの話で
偶に盛り上がった
深くは知らなかったけど
それで良かったんだ
だけどあいつは死んだ
とても凍れる冬の夜に
無残な骸を晒して

モノクロの街を

モノクロの街を
歩く不良少年は
まだ恋を知らない
絡んで来たヤンキーを
地面へ殴り倒して
Z750FXに跨り
ミルクホールへ向かう
無敵の不良少年は
まだ支配を知らない
誰にも縛られずに
生きて行けると信じて
限界まで単車を飛ばす
美しい季節の中で

消え逝く者

ずっと変わらずに
居られると思った
どうしてだろう
その願いは
叶いやしないのに
何時までも単車に
乗って居られると
信じていたんだ
どうしてだろう
あの日はもう
戻りやしない
私達は皆ただ
消え逝く者
それ以上でも
それ以下でもない
そんな気がした
初夏の季節に

エッグタルト

夜にだけ
開くカフェで
エッグタルトを
買って貴方を
迎えに行こう
クーリーレプリカに
乗ったなら
人も街も月さえも
置いてけぼりに
出来るのだからさ
キーモン紅茶を
冷やしといてよ
エッグタルトには
よく合うからさ

冬のサンダル

初雪が降る街を
サンダルで歩くヤンキー
絡んで来た相手を
秒で地面へ殴り倒す
単車に乗って
夜の街を流せば
無敵だと信じて
疑わなかった日々
ライトの群れの中で
息を吐くように
彼は闇を抱き締める
不良少年の心で

クーリーレプリカ

自分の思想を声高く
街中で叫ぶ政治家
そんな事どうでも良いぜ
俺はクーリーレプリカを飛ばす
貴方の事は嫌いじゃないけど
お決まりの言葉で誤魔化す女
そんな事どうでも良いのさ
俺はクーリーレプリカを飛ばす
それはとても美しく
俺だけを震わせてくれるから
轟音の波に揺られて
ルート246を流すのさ