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上京と、一人暮らしと、現実と

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上京と、一人暮らしと、現実と-第3話「人のオススメは、聞くに堪えない」

上京と、一人暮らしと、現実と-第3話「人のオススメは、聞くに堪えない」

第3話 中窪祥枝の場合 中窪祥絵は、生まれてから学生時代、次いで新卒で入った会社に至るまでを秋田で過ごしていた。だからと言って別に寒さに強いわけでもない。スキーだけは都会の人間より出来ると思っているが、冬はどちらかというと嫌いだった。毎年の恒例行事である雪かきも、嫌な気分にさせるポリタンクの灯油の匂いも、雪に反射して目を細めながら歩く朝も、何もかもが自分を閉じ込めているようで嫌いだった。

 大学

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上京と、一人暮らしと、現実と-第2話「吉祥寺はあなたの住みたい街ですか」

上京と、一人暮らしと、現実と-第2話「吉祥寺はあなたの住みたい街ですか」

第2話 田村翔平の場合 田村翔平は、昨年の8月に国家公務員の合格通知を受け、春から本庁舎での勤務を想定している。学生時代は福島の大学に実家から通っていた。大学時代はバンド活動とカフェのアルバイトに勤しみ、後半からは公務員試験の勉強で日を明かした。念願叶い、第一志望の省庁職員、生まれて初めての一人暮らしとなった。曇り空の下、そんな彼が出した条件は以下の通り。

・吉祥寺
・家賃7万円以下
・駅から近

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上京と、一人暮らしと、現実と-第1話「探せば必ずあるもんだ」

上京と、一人暮らしと、現実と-第1話「探せば必ずあるもんだ」

 4月、進学や就職のために地方から若者が東京に集う。

 中には初めて実家を出て、一人暮らしを始めることで、期待と不安が折り混じる。

 今日は、そんな上京によって、一人暮らしをすることになる若者に、東京の家探しについて、理想と現実を事例を挙げて伝えていこう。

第1話 一ノ瀬裕子の場合 一ノ瀬裕子は、メディア系の専門学校を出て、春から「六本木」にあるIT系の会社に勤めることとなった。給料は手取り

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