見出し画像

「怖い」という感情に対する処方箋

怖い。

と漠然に感じる時がある。水槽の中で快適に泳いでいたのに、いきなり砂の上に打ち上げられるような。じわじわとゆっくり水分が減りながら露頭に迷うような感覚。

最近だと、4月に入ってきた新卒の自己紹介を聞いた時に感じた。

学生時代のきらきらした経験を自信満々に語りつつ、初々しく緊張しながら話す姿が、とても儚くきれいに見えた。

周りの社員は、自分の昔の姿を重ねながら、これから増える仲間への期待を胸に、熱心に一人ひとりの自己紹介を聞いていた。

その脇で私は、怖いという気持ちに駆られていた。10数個も歳が違うけど、話は合うのだろうか。すぐに追い抜かれたらどうしよう。優秀そうで、自分とは違う。怖い。

そんな気持ちを抱き、途中から自己紹介を聞くのをやめてしまった。

また、同棲をしよう、と彼女と決めた時にも少し感じた。だれかと2人で暮らすのは初めてだ。

物件を探す。話し合って決める。だいたい、この条件がいいと思えてきた。

いざ、不動産屋に行く。初めはワクワクしていたが、不動産屋と話が進むうちに、本当に支払えるのだろうか。2人暮らしはうまく行くのだろうか。貯金はできるのだろうか。喧嘩をしたら仲直りできるのだろうか。そんな漠然とした、怖さを感じた。

それ以外にも、怖さを感じる出来事が増えた。ここまで怖いと思うことが多いと、なぜ怖いと感じるのだろうかと、不思議に思う。

怖いって感じるタイミングはどんな場面だろう。

身の危険を感じたときだろうか。急な階段を下るとき。歩道を歩いているときに自転車が横切るとき。上司に怒られたとき。緊急事態を告げるアラートが携帯からいきなり鳴ったとき。

得体の知れないものと対峙したときだろうか。夜の海を見たとき、自分がどこにいるか分からず、引きずり込まれそうになる感覚。布団から少しだけ足を出していると、足を誰かに触られるんじゃないかと思う。

共通して、何が「怖い」に結びつくのだろうかと、一通り考えてみた結果、「わからない」ということが「怖い」に結びつくのではないか、という仮説に至った。

夜の海を怖いと思うのは、真っ暗で何も見えないから。上司に怒られて怖いと思うのは、なぜ上司がそこまで感情的になっているのか分からないから。

得体もしれない。理解ができない。経験がない。

自分の想像の範疇を超えているものを前にすると、漠然と不安な気持ちになる。これから何が起きるのか想像ができないからこそ、怖いと感じるのかもしれない。

新卒もそうだ。二人暮らしもそうだ。私にとっては、想像がつかない。だから、怖いと感じていたのではないかと思う。

では、どうすれば、怖いという気持ちに打ち克つことができるのだろうか。

一通り考えて一つの仮説に行き着く。それは、分かることこそが、「怖い」の処方箋なのではないかということ。

わからないから、怖い。

逆に「分かる」を増やしていけば、「怖い」は減るのかも知れない。

先の見えない暗闇の道に1人佇むのは怖いけれど、ライトさえあれば見える範囲が広がる。見えることができれば、未知のことにも備えることができる。意外と、大したことないって思うかもしれない。

では、自分にとってのライトはなんだろう。

新入社員を怖いと思うのであれば、きっと話してみればいいのかも知れない。人と話すことで、その人のことが分かる。自分と同じ部分を理解し、違いを感じること。それがわかれば、きっと怖くない。

新しいことを始めることが怖ければ、過去の経験から似たような経験を探せばいいのかもしれない。
全部が全部同じじゃないかもしれないけれど、似ていることはきっとある。その中で、過去の経験と照らし合わせることで、「分かる」を増やしていく。

一緒に暮らすことが怖ければ、何が怖いのかを正直に話してみるのもいいかもしれない。ひょっとしたら、相手も同じく怖いと思っているかもしれない。そうであれば、仲間がいるようで少し心強く感じる。

本当に分からない時は、もしかしたらこうかもしれないと、予想を立ててみることがいいのかもしれない。

いろんな解釈がある中で、できるだけ客観的に、「分かる」を突き詰めていくこと。そんな試行錯誤の繰り返しが、怖さを減らしていく。

少しだけ明かりが照らしていれば、見える範囲も変わってくる。暗闇の中で手探りで慌ててる時こそ、冷静にろうそくを灯して見える範囲を増やしていく。

そんなことを繰り返し、見える範囲が広がっていく。分からないことはまだまだたくさんあるが、少しずつ分かる範囲を増やしながら歩いていきたい。

そんなことを考えながら、明日新入社員に話してみようかなと心に決めてみる。

この記事が参加している募集

スキしてみて

最近の学び

よろしければサポートお願いします!