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攻め、そして守る。情熱を注ぎたいのは強い特許の取得

今回話してくれたのは、法務・知財統括(Legal & IP expert)のYutoさん。
特許実務のエキスパートとして、コネクテッドロボティクス(以下CR)を主に知財の側面から支えてくれています。「特許の仕事が一番楽しい!」と言う彼が特許の世界に夢中になっていった経緯や、多くの知財の現場を見てきたからこそ目指したいと考えている特許実務のあり方などについて語ってもらいました。

特許実務の様子や、知財戦略において重要なことなどについても話を聞きましたので、知財の仕事にご興味をお持ちの方のご参考になるかと思います。ベンチャーの特許についてお知りになりたい方、特許と無関係ではいられないエンジニアの方など、皆様のお役に立ちましたら幸いです。

“攻めの特許実務”と“守りの特許実務”で会社に貢献

—— 現在CRでどういった仕事に携わっていますか?
主に知財を担当しています。発明された技術を特許化するために出願する“攻め”のほか、他社の特許を侵害しないようにする、場合によっては他社の特許を無効化するといった“守り”の特許実務も行います。 

IP BASE AWARDの授賞式にて

—— CRで出願される割合が高いのはハードウェア関連ですか?それともソフトウェア関連ですか?
CRはロボットというハードウェアを作っている会社ではありますが、ハードウェアそのものの特許(意匠)というのはむしろ少数派ですね。ハードウェアを制御するソフトウェアの特許というのが多いです。ハードでもソフトでも取っているものの、明確にはカテゴライズできないところで取っているケースが多いとでもいえばよいでしょうか。

—— 特許実務に携わるには出願する分野の知見がないと難しいのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。事実、僕はロボットについてほとんど何も知りませんでした。ご存知ない方には意外かもしれませんが、特許の仕事をやる人のおよそ9割は理系出身者ですし、理系の基礎知識みたいなものはある程度必要かとは思います。しかし、理系出身であってもあらゆる分野に精通しているわけではもちろんありませんので、その場その場で調べて対応するんです。特定の分野に通じていないと無理といったことは全くありません。特許データベースなどでそれこそ何百件、何千件と見て、覚えて、知識を蓄積していきます。そのうちに「あ、これどこかで見たことがある」とか「やっぱりこの会社はこういう特許を出してくるよね」といった風に感覚が掴めてきます。さらに書類を通しで読んでみて特許が権利化されるまでの経過も把握できるようになると、頭の中で特許性を主張するためのロジックを組み立てられるようになるという感じです。

特許の量産ではなく、クオリティ重視の権利化を目指したかった


—— 特許実務ひと筋と聞いています。そもそも特許に興味を持つようになったきっかけは何だったのでしょうか?
大学と大学院では精密機械工学を専攻していて、マイクロメートル単位での切削加工や、マイクロ流体チップなどを扱っていました。そんな中、確か学部3年生のときだったと思うのですが、図書館に学術論文雑誌のようなものが山のように置かれているのに気づき、試しに読んでみたら楽しくて、それ以来毎週読むようになったんです。多種多様な技術についてインプットすること自体を楽しめるようになりました。
また、大学やその後進んだ大学院でも知財に関する講義があり、特許のビジネス面を垣間見ることもできました。そんなこんなで特許って面白い世界だなと興味を持ち、大学院修了後は大手企業の知財部門で働くことになりました。 

—— CRで知財の業務に携わるようになるまでの経緯を教えてください
最初に就職した大手企業の知財部門では、特許調査および特許出願をメインに行っていました。特許調査というのは、発明者のアイデアに特許性があるかどうかを見極めることです。既に同じような技術が世に存在していないかどうかを確認します。

特許出願は、単に特許庁に書類を提出すれば済むわけではなく、どういったポイントが特許として認められ得るかを考え、なおかつ広めの権利範囲(特許権が及ぶ範囲)を狙い、権利範囲を定義する文章(クレーム)を推敲した上で出願します。大手だっただけに、それを年間300件くらいのペースでやっていました。ただ、そういった企業には往々にしてあることなのですが、同社でも発明者の人たちには「年間◯◯件の発明届を出しなさい」といったノルマが課されていました。無理をしてでも出さなくてはいけないため、結果として質が低くなります。そしてそのことは知財部門の上長もよくわかっていて、そうした質の低い発明にいちいちお金を投じてはいられないということで、入社直後の私に課せられた仕事は、特許性を見出すというよりは、逆に特許性がない証拠を見つけて発明者に突き返すことでした。一見、たいしたことがないように思える発明の中にキラリと光るものを見つけて権利化するといった仕事をしたいと思っていた私は、そんな実情にモヤモヤしていました。

その後転職した2社目では、「これぞ」と思っていた仕事ができるようになり、企業知財の仕事に没頭することができたと思います。しかし、その後に転職した3社目では思ったような仕事はできず、割りと長く勤めたところでもう1回、思い通りの特許の仕事をするために新天地を目指そうと決めました。そして依頼したエージェントから紹介されたのが、CRともう1社だったのです。

一緒に働きたかったのは「もっと良くしていきたい」というマインドの持ち主


—— CRを選んだ理由は何でしたか?
情熱の傾け方が違ったことです。もう1社のほうはベンチャーキャピタルとして投資先企業の知財支援を行っていた会社だったのですが、20〜30社くらいを掛け持つためテンポよく効率的にやることが求められていました。ですが、それは僕が望んでいたスタイルではありません。僕は1件1件こだわりながら、確実に進めていきたかったのです。また、投資先企業は様々ですから扱う分野も幅広くなりますが、僕は限られた領域を深く掘り下げてやっていきたかった。

他方、ものづくりをしているCRの知財業務は、基本的には自社製品に関わる内容に限られます。しかもロボットを製作している。できればシステムのような目に見えないものではなく、目に見えるたとえばハードウェアを扱うような会社がいい、かつ、自分の目で開発成果を確認してしっかり発明が抽出できるような比較的小規模な会社が望ましいと考えていた僕にはうってつけでした。そして実際に面接を受けてみて、CRに行こうと決心しました。

—— 面接でのどういったことが決め手となったのでしょうか?
ちゃんとしたマインドの持ち主たちが集まっている会社だと感じられたことです。僕は、応募する会社の特許に事前に目を通して、もしもその特許のクレームが他社から簡単に回避されてしまうような勿体無いものだと思ったら、どう改善すべきかの資料を作成して持参するようにしています。
CRの一次面接の日も、面接官だったTaikiさん(取締役 COO)にそうした資料を見せたところ、面白がってくれました。そして、「この当時のうちの会社はダメだったんだよね。だからそういうダメなところを踏まえた上でもっと良くしていきたいと思っている」と。ここがダメ、ここもダメと赤入れしまくったダメ特許の資料を見せると大抵の面接官は腹を立てるのですが、CRではそうじゃなかった。会社のダメな所を受け入れた上で、それを良くしていきたいというマインドを持っている人たちと働ける場所だと感じて、何事もなければここに入社しようとその一次面接が終わった時点で思っていました。

ユーザー目線と現地現物主義から生まれるアイデアの数々


—— CRに入社してみて感じたことがあれば聞かせてください
入社して2年ほどになりますが、こちらが論理的にインプットすれば、上司はちゃんと論理的に返してくれるので、とても楽だと感じています。僕の意見をしっかり聞いた上で判断してもらえるので、仕事を進める上でのストレスがあまりなく、ありがたいですね。

—— CRは社員1人当たりの特許出願数が多いと聞いていますが、その理由は何だと思いますか?
クリエイティブなエンジニアが多いと思うので、そこが理由ではないでしょうか。何をどうすればユーザーが楽になるかを考え抜いて、どんどんアイデアを出していく人がたくさんいます。
また、現地現物主義を大切にしているエンジニアが多いとも感じます。知財の人間にとっても開発現場をよく知ることはとても大切で、僕もエンジニアのところに足繁く通うので、現場現物を大事にするエンジニアとは気が合うというか、相乗効果が生まれるような気もしています。
エンジニア本人は発明とは思っていなくても実は発明になり得るものを見つけていく、場合によってはボツになった製品からでも質の良い特許を作るというのも僕の仕事であり、そういうのが得意なほうだと自負しています。ですので、1人当たり特許出願数が多い理由の半分は僕の頑張りかもしれませんよ(笑) 

—— 仕事をしていて達成感を得られるのはどういった場面ですか?
達成感は、まだ得たことがありません。というのは、特許が登録されたらゴールというわけではないからです。取った特許のおかげで会社の利益が増えて初めて目標達成ですが、今はまだそこまで至っていません。
会社の主力製品であるDelibotについては、着実に登録できていると思ってます。自画自賛かもしれませんが「発明大賞」でも受賞対象に選ばれたものがあります。

発明対象の表彰式で「発明者」のエンジニアたちと

あとは、新しいプロダクトを改発していくプロセスで、他社特許を踏まないよう避ける方向を示したり、自社の中のベストは何かを見つけてより広く取る方法を検証し続けています。出願しても、登録になるまでに時差がありますし、それが本当に必須な技術なのかはわからない。でも意味のある技術はしっかり押さえていきたいと思っています。
本当は「この特許があると業界が怖がる」っていうものが取れるといいですね。そんな達成感を得られる日を目指して、他社が近づけなくなるような強い特許を取得していきたいと思っています。

—— お休みの日はどんな風に過ごしていますか?
サッカー観戦が大好きなので、テレビで観ます。サッカーはものすごく高速で動く将棋だと思っているのですが、信じられないほどの実力を持つ選手は時にその将棋のルールすら超越するようなプレーを見せてくれる。そこが醍醐味です。弱いチームでもいい試合をしたり、センスのいい勝ち方をするのを見るのが好きなんです。ですが、そういった奇跡を観られる試合というのはごく限られていて、満足できない場合が大半なので、そういうときには自分でゲームをプレイして、ゲームの中で華麗な試合を展開します(笑)

CRをおすすめしたいのは、守破離の考え方で自分流を作れる人


—— どんな人がCRに向いていると思いますか?
自分流を作れる人ではないでしょうか。「守破離」というのがありますが、守破離のプロセスを経て、既存のオペレーション通り動くだけではなく、「確かにそのほうがずっと効率的だね」と周囲も納得するような自分流のやり方を確立していける人。逆に、「上の人からこう言われたからこうしておけばいいや」みたいな人にはあまり向かないのかなと思いますね。

論理立てて考えて積み上げていくプロセスは、会社だけでなく自分自身の中にも残っていくので、本人の成長にもつながります。そんな風に確固たるやり方を確立していけるような人がジョインしてくれたらと思っています。


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