2023年上半期国内アルバム・EPまとめ
2023年上半期に聴いた国内のアルバムやEPをいくつか紹介します。6月末ですが、いわゆる「上半期ベスト」の類ではありません。
また、以前書いた2023年上半期国内シングルまとめ記事で取り上げた曲と、今回取り上げた(Bandcamp限定リリース以外の)作品の収録曲、上半期にレビューを書いた国内作品の収録曲でプレイリストも作りました。あわせて是非。
aimi, EMI MARIA & Modesy Beats「How's The Weather?」
R&BシンガーのaimiとEMI MARIA、ビートメイカーのModesty Beatsによるシングル。シングルとしてリリースされましたが、3曲入りなのでEPとしても聴けます。aimiについては以前にもレビューを書きました。
落ち着いたウワモノにハードすぎないドラムを合わせたビートで、ラップっぽいニュアンスも交えた二人のソウルフルが絡む作品です。全体的に穏やかで優しいムードに包まれています。
2000年代R&B風のタイトなドラムが効いたノスタルジックな「How's The Weather?」がお気に入り。
Ballhead「StrictlyButterSoulBeatSmith」
福井のビートメイカー。以前インタビューをしました。
J Dilla系譜のチルいビートのようで、ゴツゴツとしたドラムなどパワフルな側面も目立つユニークなヒップホップ作品です。大胆な声ネタの使い方やハードなシンセも強烈。
オートチューンの歌声がピースフルなムードに溶け込んだ「DWA」がベストトラック。
Big Animal Theory「Haven」
UK在住のビートメイカー。以前にもレビューを書きました。
エレクトロニカやトリップホップ、UKドリルなど多彩な要素を吸収したダークで美しいインスト作品です。質感がどこか艶やかで、客演にラッパーやシンガーを迎えていない曲でも人間的な魅力があります。
C.O.S.A.が力強くラップする「Drowing in Emotions」は二人の持ち味が噛み合った名曲。
dhrma「HELLO, HELLO」
兵庫のビートメイカー。以前にもレビューを書き、インタビューもしました。
ピアノやストリングスといったオーガニックな質感の音をループした、インストヒップホップ作品です。しかしストレートなヒップホップではなく、少しエレクトロニカのような匂いもします。
緊張感のあるストリングスが効いた「Dave Deer」がハイライト。
Hiroyuki Kondo「short story」
東京のビートメイカー。
全曲が1分台の短い曲がスルスルと繋がっていく、コンパクトなインストヒップホップ作品です。ギターやピアノといったオーガニックな音作りが光る温もりのある好作。
優しいピアノループに高質なドラムを合わせた「lark」がお気に入り。
Japanolofi Records「WABI to SABI」
日本のローファイヒップホップレーベルによるコンピレーション。
基本は落ち着いたトーンの美しいローファイヒップホップ作品ですが、曲によってはエレクトロニカやクラウドラップとも隣接するようなものもあります。ローファイヒップホップシーンの多様な魅力が感じられます。
Zaneiによる「Warmer」などはPete Rockあたりが好きな方にもおすすめ。
KUYA MIGUEL & ¥OUNG ARM¥「¥OUNG MIGUEL」
香川のラッパーと福島のラッパーによるタッグ作。¥OUNG ARM¥については以前にもレビューを書きました。
福島のプロデューサー、KaworuMFが全曲をプロデュースした実質トリオ作品です。現行ミシガン系を思わせるバンギンや哀愁メロウなどのサウンドで、クールな西海岸スタイルのKUYA MIGUELとユーモラスな味もある¥OUNG ARM¥が絡む好作に仕上がっています。
例の高音シンセも飛び出すメロウな「High Way」がベストトラック。
LIFELESS & ATSUKI「REAPER SEASON」
関東のラッパーとビートメイカーのタッグ作。ATSUKIについては以前プレスリリースを書きました。
歪んだギターなどもダイナミックに導入した、アイデア多彩でヘヴィなフォンク作品です。冷たい緊張感を漂わせるラップとのコンビネーションも強力。例の高音シンセを使ったりとGの要素もしっかりとあります。
太いドラムに荒々しい発声とハードなギターが絡む「CUTTHROAT」がハイライト。
NICKELMAN「Pleasure Trip」
大阪のビートメイカー。以前インタビューをしました。
ソウルフルで暖かいネタを用いて、ノスタルジックでトロピカルなムードたっぷりに仕上げたインストヒップホップ作品です。メロウで穏やかな路線でも音が太く、ソフトな印象には振り切らないバランスが絶妙。
朝の陽ざしが差し込むようなシンセを使った「Sunshine & Sea」がお気に入り。
OGGYWEST「무섭다 (ムソプタ)」
東京のラップデュオ。以前にも関連作を何枚か紹介しています。
トラップやUKドリル、R&Bやロックなど様々な要素を煮詰めたようなエッジーな作品です。ビートもトピックもダークなものが目立ちますが、メロウネスやユーモアもあるので暗すぎない印象。
メロウ路線の「MESSED UP」では例の高音シンセも聞こえてきます。
Plain Jay「Frozen」
宮城のラッパー。以前にもレビューを書きました。
YoungBoy Never Broke Again系の、ピアノを多用したエモーショナルなトラップが中心の作品です。ラップスタイルもエモーショナルな歌い上げタイプですが、ストレートではないオフビート気味のアプローチがユニーク。
ラストを飾る「Give up」では現行メンフィス的なスタイルにも挑んでいます。
re:plus & Osamu Fukuzawa「Afterimage」
関東のビートメイカー二人によるタッグ作。re:plusについては以前レビューを書き、インタビューもしました。
鍵盤のメロディを活かしつつ、展開のアイデアやミュージシャンの客演も盛り込んだ美しいインスト作品です。ループ感もあり軸はヒップホップですが、ジャズやエレクトロニカなどの要素も感じられます。
「never」の途中シンセだけになってピアノが入ってくる展開は息を吞む素晴らしさ。
Smika「Agate」
東京のビートメイカー。
Madlibなどの系譜にあるLAビートとローファイヒップホップの中間のような、美しくも埃っぽい質感のインストヒップホップ作品です。強くなくても必ず「要る」ドラムの鳴らし方が見事。
ノイジーな音と静かなピアノが効いた「plateau」がベストトラック。
SNJO「care」
京都のプロデューサー兼シンガー。以前所属プロデューサーチームの光学の作品にコメントを寄稿しました。
ハウスやニューディスコなどを消化した、エレクトロニックミュージック作品です。インストもありますが歌モノも多く収録。R&B的なメロウネスも感じられる好作に仕上がっています。
甘酸っぱいシンセと歌声で引っ張っていく「Wander」がハイライト。
海野雅威「I Am, Because You Are」
NYで活動するピアニスト。
ジャンル横断型ではない、伝統の先にあるものを感じさせるジャズ作品です。とはいえループ感のある演奏なども聴けるので、ヒップホップリスナーがループディガー目線で楽しむこともできると思います。
太いドラムでファンキーなピアノが聴ける「Put That Shit In De Pocket」がお気に入り。
レビューを書けるほど聴き込みが足りていないだけで、ほかにも紹介したい作品はあります。それらについては今後また機会を見て紹介していきます。
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