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光学「Opto3​:​Neibiss」全曲解説

島根のレーベルのLocal Visionsからのリリースで知られる三人のプロデューサーが集ったユニット、光学がリリースしたEP「Opto3​:​Neibiss」にコメントを寄せました。EPは各種配信サイトで聴ける・ダウンロードできます。

ネット上でのアメリカのヒップホップへのコメントを見ていると、プロデューサーに対する「killed this beat」やラッパーに対する「murdered the track」のような称賛の形を見ることがある。SNSでは火事のように燃え盛るGIFを添えるのも定番だ。ヒップホップの世界では、素晴らしい音楽についてそのように物騒な表現をすることは珍しくない。

三人組プロデューサーユニットの光学が、二人組ヒップホップユニットのNeibissを迎えて制作した本作「光学3」のテーマは、ずばり「危険」だという。光学はヒップホップをメインに制作するユニットではないが、本作ではヒップホップに寄った曲もある。しかし、寄っていない曲もある。ジャージークラブやハウス、2ステップやヴェイパーウェイヴ・・・といった、多彩な要素が詰まっている。複数の要素が一つの曲に入っていることも多く、質感こそメロウなものが中心だが、その予測不能な展開は「killed this beat」と喝采を送りたくなるものだ。一方、Neibissの二人も負けてはいない。これまでの作品でもクロスオーバーなセンスを覗かせていた二人だが、光学が作るユニークなビートの数々にも自然体で乗りこなしている。その様はまさに「murdered the track」だ。また、本作では数曲でSNJOとTsudio Studioも客演気味にヴォーカルを入れており、曲に良い刺激を加えている。

ヒップホップに留まらない曲の構成と、それをヒップホップに引き込もうとするラップ。二組の個性のスリリングな邂逅が楽しめる本作は、ボヤボヤしながら聴くことが難しい危険な仕上がりだ。興奮しすぎに要注意。


1. Do What (prod. by Tsudio Studio)
2. After Midnight (prod. by HiRO.JP)
3. StillNight
4. parallel
5. hakumei
​6. Jumper (prod. by SNJO)


全曲解説します。


1. Do What

シンガーの大野紗代をフィーチャーし、Tsudio Studioも歌を入れた曲。

ブギーっぽいシンセをメインにしたウワモノに、ジャージークラブや2ステップなど様々なリズムが入ってくる楽しい曲です。途中でサックスソロやギターなども入ってくる非ヒップホップ的な曲ですが、Neibissの二人は巧みに乗りこなしています。


2. After Midnight

トークボックスを大きくフィーチャーした、G好きの方にもおすすめしたい曲。

艶っぽいシンセとベースが効いたビートもGファンク的です。後半に飛び出す例の高音シンセにも悶絶必至。ストリングスにシティポップの匂いも。


3. StillNight

Neibissは登場しない短めのインスト曲。

808のカウベルが印象的な煌びやかなビートを軸に、シンセやギターのソロが入るフュージョン的な曲です。随所で入るコーラスも良い味を出しています。


4. paralell

途中でスロウド+リヴァーブ的な展開になるユニークな曲。

この曲にもNeibissは登場しませんが、前半はSNJOが熱く歌い倒します。2ステップ系のドラムとクールなシンセが効いたビートがスロウダウンする様にはヴェイパーウェイヴっぽい趣もあり。


5. hakumei

ブギー風味のシンセを使いつつもどこかシリアスなインスト。

随所で挟み込まれるノイズやSE的な音使い、落ち着いたトーンのピアノが不気味な雰囲気を醸し出しています。ノイズが押し寄せる終盤が圧巻。


6. Jumper

ビートだけではなくSNJOの歌もフィーチャー。

哀愁系のイントロから一転してジャージークラブ風のダンサブルなビートに変わり、またビートが戻るユニークな構成の曲です。しかしそれだけで終わらず、そのままトランシーなシンセが入ってきてまた異なる魅力が出てきます。ratiffの歌寄りのアプローチにも驚かされます。


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