101回目の逮捕と出所 入浴編

質問をする。

どうでもいい質問を。

自分の思考で動かないと駄目だから。

自分の思考で行動しないと駄目だから。

だから俺はくだらない質問をしまくる。

じゃないと、また人に騙される。

そこで、看守のおじさんは、留置場の牢屋に入っていた俺を、洗面所まで連れて行く。

洗面所まできて、番号が書いてあるコップと新しい安そうなハブラシを用意され、これを使って歯磨きしなさいと言ってくる。

俺は、質問する。

この水道の蛇口は捻っていいタイプですね?

このハブラシは、ラブホテルのハブラシではないですよね?

このコップは、使い捨てですか? もしくわダイソーで購入した奴ですか?

そんなどうでもいいような質問をする。

しかし、自分の思考を止めたらそこで終わりだ。

少しでも、無理に質問をして思考力を保たないと、どんどんこいつらの好き勝手になってしまう。

看守のおじさんは言う。

黙って歯を磨きなさい。

言葉すくなに言う。

俺は、そこで渋々言われたと通りに歯を磨き、コップの水で口を濯いで、歯磨きが終わる。

歯磨きのあとは、風呂。

風呂に入るため、促されて、脱衣所まで連れて行かれる。

10分で終わらせなさい。

と言われ、制限時間をつけられる。

俺は、服を高速で脱ぎ、風呂のドアを開けた。

正直大浴場のような、大きな風呂に、汚い男たちがたくさんいたりして、浴槽が汚くて・・・・・

なんてところを想像していたが。

実際は違った。

小さな一つの銀色の浴槽。

しかもめっちゃ綺麗で、備え付けのシャンプーと石鹸。

俺は、なんと贅沢な日なんだろうと、留置場の浴槽の中で、暖かな丁度いい湯加減のお風呂につかり、至福のひと時をすごした。

しかし、そこで気づいた。

これは、組織の罠だ。

俺は、やはり騙されている。

警察官も、元職場の組織もぐるだ。

俺をこうして、縛りコントロールし、飴と鞭をあたえ、俺を組織のいいなりにさせ、道具として今後扱うつもりなんだ。

俺は、なんとかこの組織のしっぽをしっかりつかもうと考え、なんとか何か些細な情報はないかと、浴槽を調べた。

調べた結果、風呂の浴槽のメーカーがサンウェーブであるとわかった。

そうか……サンウェーブか……

それを知ったところで、今となっては組織とは何も関係ないし、どうでもいいのだが、当時の俺は、その情報を知ったことにとても満足していた。

まるで、名探偵コナンが、知的ないやらしい声で……

「そうか……サンウェーブ……わかったぞ。謎は全て解けた!」

なんてイメージで、自分自身がなにか謎ときの刑事にでもなったつもりのような気がしていた。

その後、10分間の至福のひと時をすませ、今度は、屋外の中庭で休憩タイム。

久々の外の空気を味わえる瞬間。

看守のおじさんが二人。

外では、あるが中庭なので、敷地が建物で囲われているため、脱走や脱獄などの類は無理。

看守のおじさんが二人俺の目の前をたっており、俺は看守の後ろ。

この様子が、ニコニコ生放送で、配信されていると俺は妄想していて。

留置場生配信というタイトルで、俺の中庭休憩タイムが全国で配信されていると思い、それを意識したりして。

だれが、こんな配信見るんだよって、リスナーが言うと思ったりしたが、大手生主のティロフィナーレ加川が、

「いや、留置所配信は面白いよ。こっちの勝手な想像やイメージを膨らませてみると本当に面白い!」

そう言っている妄想をしてしまい、俺自身が、勝手な想像やイメージを脳内で持ってしまう。

中庭で、なにもしゃべらない中年男性三人。

目の前の警察官二人の後ろに俺。

俺は、脳内でその警察官と俺の立ち位置を考慮し、

「これが、闇のトライアングルだぁー!」

と真顔を叫んだり、している妄想して笑いをこらえる。

さらに、後ろからカンチョ-してみたら、投獄期間が長引いてしまうのかなっていうのを妄想したりなどで……

しかし、その場の人間は終始無言。

なにも言わない。

いいかい君たち。この中年男三人が、このなにも言わない、何もしないこの空間を、勝手に我々リスナーが想像を膨らませて、シュールな笑いを感じるのが、この配信の正しい視聴方法なんだよ。君たちわかるか?

とティロフィナーレ加川が説明している妄想をしたりで。

そんなことを考えていると、突然入口のドアが勝手に開き、めっちゃ驚いたリアクションをとってその場は終わる。

その様子も、ライブ中継を見ている視聴者は大爆笑。

なんてシュールなんだと。

そんなこんなで再び取り調べの時間。

今回の事件の経緯。

詳しく取り調べられる。

俺は、取調室のいすに座り。

取調室の机の上においてある、紙を見た。

供述調書?

そのタイトルの紙を読み上げた瞬間。

となりの部屋から、学生時代の友達の笑い声がした。

そっか。

俺。

捕まったんだ。

警察に。

友達が笑ってる。

みんな笑ってる。

これは、馬鹿にする笑いとかではなく。

なにか歓迎する系の笑いである。

病気で苦しんで、社会人として、戦い、喜怒哀楽などの感情が今、取り戻せそうとなっている。

供述調書とタイトルを読んだだけで、友達は、大笑いして

「なべ、つかまっちゃったんだ。ワトソン警察に捕まった」

そう笑う妄想をして。

そこで、なぜか。

本当になぜか。

感謝の気持ちが出てきた。

苦しんだ今まで。

社会人として壁にぶつかった時があった。

実家で療養した時があった。

でも、友達達は、忙しいなか俺をきにかけてくれて、俺が良くなるように考えてくれて……

そういう妄想が通過した瞬間。

うっすらと目頭を涙で濡らした。

ありがとう。

友達。

ありがとうみんな。

俺は、一粒涙を流し、取り調べに答えた。

警察官は、若そうな仕事の出来そうな、巡査員。

そう見えた。

この警察官も、心は、きっと割り切っていて、人の心や気持ちはあまり考えないだろう。

でも、俺の涙を見て、相手からするとこの人はきっと、いい人なんだ。

そう思っているんじゃないかって、俺は勝手ながら妄想した。

様々な質問に答え。

今後どうなるか。

どうするか。

それを警察官が説明したが。

俺は、あまり頭が働かなくて。

結局、取り調べが終わり。

その日のうちに、白いハイヤーに複数の男が乗り込み、連れられ。

留置場をあとにした。

統失の妄想エッセイを書いています!もし、よろしければ、絡んでくれたら嬉しいです(ヮ´ト∀ン)