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【バイト奮闘記⑤】閑話とはこの事

一般人とはこういう人の事なんだろうな。

土曜日、授業が終わって1時間後に私はB店に向かう。
因みに、授業ではニュースの見出しを集めてきて、自分でテーマを決めた雑誌の見出しとして並べてみよう、というようなことをしたのだが、これが絶賛されたのである。とても嬉しい。
内容としてはこんな感じ。

特集①
特集②
連載(仮想、妄想可。実在人物に書いてもらうとしたらというのもOK)
企画
定番企画(仮想、妄想可。実在人物に書いてもらうとしたらというのもOK)

私のテーマは【高校生から大学生、新社会人ぐらいまで物事を考えたい、未来を見すえたい人をターゲットにした雑誌】である。

課題が出された時が衆議院選前で、これの講評をするのも衆議院選前だと思ったから「少しでも政治に興味持って貰えたら……」と思い特集を組んだ。もっと多くの人がこういう特集を組むかと思ったが、意外とみんな文化系サブカル系に偏っていたため政治系はほとんど私だけであった。

エキノコックスは、コロナよりヤバいのでは?と言われ始めている。
私も猫を飼い始め、猫を吸うのが趣味になったのだが、もしエキノコックスが流行ればそう簡単には出来なくなってくる。
現在猫好き動物好きは急増しているように思う。だからこそ、北海道のキツネだけの話では無いのだということを動物愛護の観点からも書くことで少し重くなくなるのでは、当事者意識が出るのでは、と考えて作った。

連載は完全に私の趣味である。
しかし、テーマにあった人物であろう。
大前さんはジェンダー文学の新星だと言われる人物である。『ぬいぐるみとしゃべる人は優しい』では恋愛にモヤモヤとした何かを感じる主人公を描き、『おもろい以外いらんねん』ではお笑い芸人ってなんだろう、見た目いじりってどうなんだろう、と考える作品を描いている。
その文章は、難しくない、なんなら文学としては視点の乱れが激しいのに、面白くて読みたくなり、苦しくて引き裂かれるような気持ちになる。何故か痛いのだ。新しい世代の社会の見方を描いているんだ。

そして、Aマッソ加納。
彼女に私は女性としての期待をしてしまっている。お笑い界は男性社会だ。女性芸人は見た目いじり、ブサイク、モテない、面白さよりもそこだけで見られる。女が女を嘲笑うのが基本となっている。そうじゃなければテレビに出られない。そうじゃないと笑われない。そんな世界が今もまだあるだろう。
そこを変えてくれそうなのが、Aマッソなんだ。
ただネタが面白い。企画力も喋りの能力、ツッコミの能力もある。きっと男性だったらもっと早く売れていただろう。
女芸人としてではなく、ただの芸人として、を期待してしまっている。そして、加納さんは自分でもそう思っているんだろうな。頑張って欲しい。

ようは、ただ私が読みたい連載である。
タイトルもその人っぽいものを付けてみた。センスは知らない。
ただ、先生には「いいタイトルですねぇ」と褒められた。

企画は『あなたの恐怖はなんですか』というシリーズもの。毎回いろんなゲストをよんでその人にとっての恐怖を聞くというもの。恩田陸さんを選んだのは『私の家には誰もいない』が好きすぎるから。

【日本の深淵】は「女は金に困ったら風俗行けばいいから楽だよな」と「風俗とか人間としてまともじゃない支援必要ない」のとんでもない差別について少し語れたらいいなと思い作ってみた。
この企画は毎回その分野に詳しい人にインタビューをして、話を聞くということにして、『ハコヅメ』の作者であり元婦警さんである泰三子さんを出してみた。ただ、ハコヅメをオススメしたかっただけだった。

ハコヅメ内でこんな回があるのだ。

違法風俗店で女の子たちに接客の手ほどきをする担当の女性を逮捕した。
彼女は若く、性的なテクニックを教える仕事をしている。
「別にみんなお金無くて居場所がなくて自分から来てやってるんだからいいじゃん」
そういう彼女に対し、女性警官がこういう。
「将来的には生きていく力を奪っている事だと思う。派遣させていた女の子たちは他にも生きていく方法がある中で最初に体を売ることを学んでしまった。その危険性を知らない子供に大人の勝手でさせていい仕事じゃない」
13巻 108話 概要

この言葉は真実だ。
風俗をしていることを断罪しているんじゃない。そういう世界があるのもわかっていて、居場所が欲しくて、お金が無くて苦しんでいる女性が多いことも知っている。だからこそ、その人たちの未来を奪うような行為が許せないのだ。

先生「この企画いいね、【日本の深淵】シリーズでみんなに課題出て各人が思う【日本の深淵】を書いて欲しい。ハコヅメ知らなかった、いいねぇ、知識広いね。すごいありがとう 」

先生に褒められ、陽気な私はバイトに行く。
2000字使って、バイトに関係がない話を書く私を許されたい。

さて、さてという。

初めての連勤である。
今日もまたMさんとRくんと私で回す。
昨日こねて形を作っておいておいたハンバーグをまずは焼こうかとフライパンを熱する。

「Rくんも焼いてみる?」

Mさんは私たちを成長させようとしている。Rくんは「焼いたことないですね、やります」と焼き始める。

低音でじっくり……
じっくり過ぎる……

私がその横のフライパンで2回分焼いて3回目に取り掛かろうとした時に、まだ1個目を焼いていた。
慣れないから焦げをビビっているのだろう。

そんなに喋ることが出来ていなかった。
近くに住んでいるらしい。
工業高校に通っているらしい。
服装からしてもどちらかと言ったらチャラい。
私とは違う世界の子のように思えた。
喋りかけられるの嫌いかなと少し距離感を考えている。

お客さんが誰も来ない。

土曜日の夜。

開いていることを知られていないのだろう。誰も来ない。

9時過ぎて、Mさんが「賄い食べておいで」と渡してくれる。さっき焼いたハンバーグとご飯、そして、お惣菜で出していたものからリンゴとレンコンのサラダ、ほうれん草の和え物。あと、牛すじ煮込み的な何か。

私とRくんは一緒に今日は使われる予定のない2階の座敷で食べていた。テーブルを一緒にしていいのかわからず、別のテーブルに座ってしまう。

「他にバイトしてるんですか?」

Rくんが話しかけてくれる。
ああ、意外と話してくれる子なんだ!

私は答えてから「いつも何してるの?」と聞いた。

「んんー……何もしてない……本当になんか時間が過ぎてます。ゲームもしないし、漫画とかアニメとかも見ないし……」

わぁお、一般ピープルというやつですな?!
趣味も特になく、ただ時間を過ごしているらしい。

私の身の回りにはあまりいない人種だ。
大体の人はゲームをしている。お金も全部ゲームに注ぐ。
もしくは、創作活動だ。絵を描いたり、文章を書いたり。

確かに私もボーッと時間を過ごすことは多い。
何もせずに生きてしまったって罪悪感を覚える。

でも、その罪悪感すらないようだ。
そういうものらしい。
こういう人と関わることは私にとっては気づきが多い。
本を読むこともないだろう人に興味を抱かせる方法はあるだろうか?
こういう人の生活を書く時、わたしは書きすぎてしまうだろう。
多分もっと何も考えてない。
考えなくていいんだろう。

なんかそれがいいなぁって思ったんだ。

「人見知りなんですよ」

人見知りなのに、コミュニケーションを取ろうとしてくれるのが嬉しかった。それまでも何度も話しかけていたかいがあった。
基本的に彼とはだいたい一緒にシフトが入っているため、仲良くなれないときつい。

だからいい子そうでよかった。

だがRくん、実に変わった子だった。
家には陸亀、豚、蛇、トカゲ、猫3匹がいるそうだ……まだ居そうだった。

「ハリネズミ飼いたいんだよね」と言うと
「ハリネズミもいますよ!あれ、死んだんだっけ、いる?死んだかも……」と言うのだ。
嘘だろ……そんな事あるかよ……

家にいる動物に関心のない人がいるのか。
そんな存在感のありそうな動物たちでも?
めっちゃおもろいやん……。

きっとバイトでなければ関わらなかった人だ。年下でオタクじゃない人。
別に私もオタクってわけじゃないけど、色々と興味が多いから、大衆ってこういう人なんだと思う。
たまんねえなぁ。

ところで、私は155cmという別に小さくもないし!別になっ!って身長なのです。
気づいた、この身長、低いのでは……。
お店で掲示しているパネルが高いところにあるのだけど、それに届かない。
届かないんだ。
努力しても、無理な高さ。逆に誰が取れんの、おかしくない?別に低くないもん、なんて思いながら、別の作業をしているRくんに「ごめん……届かないから取ってくれませんか……お願いします……」とお願いしたのです。
そして別のタイミングで、高い場所にタッパーを置かなければならなかったのだが、それも置けない。

小さくないもん!

標準身長だもん!

その声は掠れゆく。
悲しくなんかないです。いいんです。

ところで、この日はお客様は誰も来ませんでした。経営が心配になる。
何故だ。
終わるのも前日の0時越えと比べものにならないぐらい早かった。

日曜日は営業をしないため、余ったお惣菜は持ち帰らせてもらえるのだ。
Rくんは先に帰ったので、私が全て頂く形になり、大量のお惣菜。
幸せとはこのこと。
野菜って色が綺麗だ。こんなに鮮やかなんだ。

家に帰り昨日は怒っていた母はとても喜んだ。
めっちゃ美味しいって言ってくれたのでなんとなく私が嬉しくなる。
それから3日間、メイン、副菜として出され続けたのだ……。

次回!閑話休題、辛い向いてないしんどいわっ!

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