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SS『26日まであと5分』
仕事はまだ終わらない。今日で何連勤だろうか、なんて疑問はできるだけ持たないようにする。有線ではクリスマスソングしか流れてないのに、クリスマスである実感が無くなって何年経っただろう。
年末の忙しさに何故クリスマスという行事が盛り上がるせいで、こんなにもやりたくないことをやらされる。
閉店作業を終えて、寒いだけの街に戻る。都会はきっとイルミネーションでクリスマスを感じるのだろうけれど、僕が生きる場所ではそんな装飾はお祭り好きが管理人なのであろうマンションに少しあるだけだ。
体を包む痛みを無視して生きるのが当たり前だ。
サンタさんがプレゼントを持ってきてくれるのは二十四日の朝だったか、二十五日だったか。子供のときからどっちだったか分からなくなる。
でも、考えてみればイエスを祝う日である二十五日ではなく、二十四日の朝にプレゼントが届いたらイベントはもう終了したようなものじゃないか。せっかく頑張って三日で復活したというのに、イエスも浮かばれない。
だから多分、二十五日の朝にプレゼントが枕元に届くのだろう。昨日も労働に勤しんだというのに僕の枕元には何も無かった。
やってられないな。いい子じゃなかったとでも言うのだろうか。
風が僕を痛める。
もう年末ですか。そうですか。僕が得るものは僅かなお賃金だけですか。
どうしようも無い闇たちを切り裂くように歩く。
一刻も早く布団に包まれたい。優しい世界はそこにしかない。
家の中は冷たかった。
マフラーを解いて、ベッドに倒れる。
働き倒したサンタさんはどこに行ったのだろう。何しているのだろう。もう一年間働かなくていいのか。羨ましい。
ベランダから音がした。
カーテンを開けると、そこにはサンタさんがいる。かの有名なあのサンタクロースが。
「その袋の中に何が入っているんですか?」
届けるものがないはずなのにサンタさんが持っている白い袋は膨らんでいた。
「君もここに来るかい? 僕らの仲間になるかい? 瀬戸優希くん」
僕は袋の中を覗く。暖かい場所がある。吸い込まれるように落ちる。
それ以来は僕はサンタになる。それだけの話。
きっと、世界は疲れた人間が幸せを運ぶ。子供たちの笑顔は、楽になりたかった労働者たちが作っている。それだけでいいじゃないか。
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