「 推し箔押し表現 『 攻め箔 』 」
コスモテックの前田です。
今回はコスモテックの note でお馴染みの S_D さまより 『 攻め箔( せめはく ) 』 という加工技術を用いた ご自身の名刺製作のご依頼をいただき、加工のお手伝いをさせていただきました。 S_D さまとコスモテックの関わりについては過去に note の記事でご紹介させていただきました。
まずは、下記の記事をご覧ください。
◉ 『 攻め箔 』 という言葉との出会い
まず、私がはじめて 『 攻め箔 』 という言葉と出会ったのは シールコレクターであり、オリジナルシールの制作者でもある AGAWA さまからご依頼いただいた 48×48mm 箔押しシール 4352パターン の製作過程でした。
メールでのやりとりの中で AGAWA さまが 『 攻め箔 』 という言葉を何かの拍子に使われた時、 「 ん!? 『 攻め箔 』 って何? 」 となりました。 箔押し屋である私も はじめて目にする言葉でした。 AGAWA さまは丁寧に 『 攻め箔 』 の実例を踏まえて説明してくださいました。
『 攻め箔 』 という言葉は自作シールを製作されている方々の中でよく聞かれる箔表現の名称でした( この素晴らしいネーミングは誰が命名されたのかは わからず )
『 攻め箔 』( あえてこの名称で呼ばせてください ) は、コスモテックでは今から10年以上前、同様の箔表現を 「 箔で埋め盛り・箔の埋め盛り 」( 上の写真 )と呼んでおり、ここ数年は 「 箔の絡ませ押し 」 と名づけて箔押し加工しておりました。
シール界隈では すでに認知度の高い 『 攻め箔 』 ですが、紙モノづくり界隈では まだまだこの箔表現が使用されるシーンは少ないのが実状です。
シール界隈から生まれたこの言葉( 表現 ) 『 攻め箔 』 を紙モノの制作に携わる方へ知っていただくことで表現の幅が広がる予感がしております。 特に 「 箔押し加工に こだわりのある同人活動されている皆さまへ突き刺さってほしい! 届いてほしい! 」 と願って今回 S_D さまのお名刺を 『 攻め箔 』 の実例として note でご紹介させていただくことにしました。
◉ 『 攻め箔 』 を用いたお名刺、爆誕!
S_D さまからご依頼いただいたお名刺の 紙 × 箔 は コスモテックにお任せで10種類製作しました。 1種の名刺の中に、2色の箔押しとエンボス加工を加えるという豪華仕様です。
下の写真が完成版です( 写真は S_D さまによるもの )
「 10種類の名刺の箔押し部分をよーくご覧ください! 」
「 箔押し加工した部分に繊細なテクスチャー( 模様 )を表現している部分が 『 攻め箔 』 の部分です! 」
今回のお名刺は 紙 × 攻め箔 × 攻め箔 、そして エンボス加工で盛り上げて仕上げたお名刺なのです。 それでは10種類の中から4種類のお名刺をピックアップして 紙 × 箔 について 『 攻め箔 』 の説明をしながら ご紹介させていただきます。
・ KANMAKI 製の新しい箔を使用
こちらの2種類の名刺は、OKニューブックスタイル( 色 ソーダフロート ) と エコジャパンR( 色 リンドウ )と どちらも淡い色合いの紙をセレクトしています。
そして、この2種類の紙に合わせた箔が KANMAKI ( 関西巻取箔工業株式会社 ) 製の新しい箔 「 CANDY PEARL 」 シリーズの箔です! それぞれ1色ずつ ミント( 写真上 ) ・ ピーチ( 写真下 )という箔色を使用して加工しました。淡く かわいらしい色合いは通常のメタリック箔と比べると、金属的なギラッとした光沢感とは違い、パールのような ふんわりやわらかい煌めきが特徴です。
『 攻め箔 』 のテクスチャー部分( 後述 - デザインデータ上、白抜き部分 )は加工の圧力をしっかりかけて白抜き部分が抜けないように箔で埋めているため、少し盛り上がった状態になっております。 また、最終工程となるエンボス加工によって全体がぐぐっと盛り上がることで、微細な盛り上がり+強烈な盛り上がりのエンボスの二乗効果で、まるでお菓子のデコレーションのようにかわいらしい印象です。
一つの名刺のデザインの中に 「 CANDY PEARL 」 箔 と メタリック箔を組み合わせることで全体の印象が引き締まり、2種類の箔の異なる質感の対比を甘辛ミックスの良いバランス感で見せることができました。
・ 特徴ある紙 ハイボーンA を使用
2種類の名刺は ハイボーンA マガタマ という紙を使用し製作しました。
紙の表面に細やかなエンボス模様が入っており、地色がシルバー( 写真上 )とゴールド( 写真下 )の2色展開です。
エンボス模様の入っている紙にさらに 『 攻め箔 』 のテクスチャーが合わさり、名刺全面がテクスチャー三昧となるため、一体どのような見え方になるのかドキドキして製作に臨ませていただきました。 いざ箔押ししてみると、紙地 ・ 『 攻め箔 』 それぞれのテクスチャーが良い塩梅で馴染み、どのテクスチャーも しっかりと視認することができるのに うるさい感じにはならず、仕上がり全体の調和をうまく取ることができました。
シルバーの名刺は紙色である銀の地色と同系色の箔 消銀24号を使用しました。可能な限りしっかりと盛り上げたエンボス加工の効果もあり、名刺全体のイメージは彫刻のように荘厳な雰囲気が漂っています。
そしてゴールドの名刺は紙色である金の地色とシルバー系のホログラム箔の組み合わせにより まるで太古の石板のようにも見え 『 攻め箔 』 のテクスチャーが石板に刻まれた絵柄のようにも感じる仕上がりとなりました。
◉ データづくりには経験とテクニックが必要
『 攻め箔 』 は前述したように、細かな白抜きのテクスチャー部分に加工の圧力が ぎゅっとしっかりかかるように押し、白抜き部分を抜かずに埋めることでテクスチャー部分を少し盛り上げ、模様を描く表現方法です。一般的には NG 要素という認識の 箔のバリ、箔の絡み、箔の埋まりを活かすことで表現されています。
『 攻め箔 』 を成功させるためのデータづくりでは テクスチャーのサイズや白抜きの幅が大切なポイントになります。箔押し面積に合わせたテクスチャーのサイズにしないと、あるいはサイズが大きすぎてしまうと 模様がぼんやりしてしまったり、白抜きの幅が広すぎてしまうと箔が埋まりきらなくなって かすれて見えてしまったりと、うまく 『 攻め箔 』 を表現できなくなります。
実際に押してみないと どのくらいの白抜き幅であればきれいに箔が埋まるのか… などが予測しづらいため、データづくりはデザイナーさんの経験やテクニックのほか、校正( テスト )押しと余裕のある納期が必要になります。
デザイン / 図案の どの箇所にどんな 『 攻め箔 』 を配置するかなどが仕上がり全体イメージにおける箔表現の見せ方の楽しみの一つになってくるのではないかと思います。試行錯誤を楽しめるタイプの方には非常におすすめの加工技術といえるのではないでしょうか。
・ コスモテック 青木より
うれしいことに 1,000 like 超え! S_D さまのお言葉も励みになります!
【 箔押し加工 】
有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362
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